劇場公開日 2024年9月27日

  • 予告編を見る

「“勧善懲悪映画”今は昔」Cloud クラウド シューテツさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5“勧善懲悪映画”今は昔

2025年2月10日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

黒沢清監督作品の鑑賞は『スパイの妻』以来の久々でしたし、全く予備知識なしで見たのでジャンルすら分からず、前半でまたホラー映画なのかと思いきや後半でサスペン・アクション映画だとやっと理解しましたが、今風の設定なのが面白かったです。
最近の日本映画の娯楽作品自体あまり見ていなかったので、昭和・平成ではない間違いなく令和時代の設定が非常に面白く新鮮に感じられました。
もっと分かりやすく言えば、昔の様なヤクザ・チンピラ・半グレ・不良の様な設定は今や時代遅れであり、全くの善人でもなく、根っからの悪人でもなく、ひょっとすると自分の周りにも普通にいそうな人が、何かのスイッチが入ると直ぐに狂ってしまえる様な設定が今風でしたね。

本作の主人公のキャラ設定も、本業は何処かの衣類関連の工場で働き、普通に仕事はこなせるし勤務態度もいたって真面目であり、上司にも目をかけられ能力的には平均以上という雰囲気を出しながら、性格的にこれ以上のことは望みもしないし、したくもないという自己評価をする程に冷静であり、しかし金銭的な欲望もあり、自分の性分に合った復職として転売屋をやり、そこでかなり如何わしい仕事もそれ程の罪悪感も後ろめたさも感じていない設定というのが、如何にも今の時代感を表していて面白かったです。
だから観客はこの主人公に全く共感もしないし感情移入もしない、それは他の登場人物も全て同じで、善悪のない(カタルシスのない)アクション映画を見せられている感覚が非常に今風に思えました。
それこそが“世相を反映する”と呼ぶに相応しいのでしょう。
だから、一般評価が賛否両論なのでしょうね。
こういう映画は黒沢清監督マニア向け作品というよりも、“黒沢清ファンダム作品”と呼んだ方が似合っている様な気がします。

コメントする
シューテツ