Cloud クラウドのレビュー・感想・評価
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全部、黒沢清のせいにしよう
友人2人と観終わった後、通夜が始まった。正確に言えば、映画館をそそくさと後にして、コンビニで缶ビールを買い、広場で何を観させられたかを話し始めた。もちろんその話し合いが、何かひとつの解決をもたらしたわけではない。映画で起こったことを話せば話すほど、物語が綻んでくる。一貫性が崩壊する。枝葉のように別の出来事が浮かんでくる。全くもってすっきりしない。
友達や恋人、家族など誰かと一緒に観に行った人は最悪の映画体験だと思う。
菅田将輝や古川琴音、岡山天音、窪田正孝など役者陣は遜色ない。シネコンで上映されるわけだから、変なアート映画ではなく楽しめる(はず)。ヴェネチア国際映画祭に正式出品されたり、アカデミー賞の日本代表にもなっているのだから評価も高い。さらにあの黒沢清(?)である。誰かとみるには最高の好条件である。
なのに、なんで…?私の隣にいたカップルよ。映画に誘ったパートナーを責めないでほしい。パートナーは何も悪くない。悪いのは全部、黒沢清だ。どうか吉井と秋子の顛末にはならないでくれよ…
そう思いたいし、現に思ってもいるのだが、ふと気づく。このように最悪な映画体験を全て黒沢清のせいにしようとする他責化と暴力は、本作で吉井を殺そうとした彼らと全く同じであると。それなら本作は私たちとは別世界に生きる狂人の物語では決してない。どこまでいっても私たちの話である。
今回、私は友人に本を貸していて、その本が返されるタイミングでもあった。タイトルは『眼がスクリーンになるときゼロから読むドゥルーズ『シネマ』』。その時、岡山天音演じる三宅のようなテンションで、「これはドゥルーズ」と思った。資本主義と分裂症。それが重要概念に違いない。
転売ヤーの実態は現代の資本主義経済の様相。彼らの破綻しているかにみえるキャラクターは分裂症。そして分裂症を患っている私達が結合される/できるバディ制度/世界。その世界と私たち、可能性を描いたと思うと、私は本作が最高に思えてくる。何よりその世界がバウマンが提唱した「リキッド・モダニティ」から、「クラウド・ポスト・ポスト・モダニティ」ー仮の名付けであるがーだと思うと感動さえ覚える。その先を描いてくれた!と。
本稿ではこれ以上、ドゥルーズには立ち入らない。代わりになぜ本作が最悪の映画体験になってしまうのか、そしてその要因をまず「娯楽で観に行ったのに労働を強いられる点」だとして考えていきたい。だって映画体験を最悪のままで終わらせたくはないでしょ。
以下、ネタバレを含みます。
私たちは本作を鑑賞する上で、「労働」をしなければならない。より正確に言えば強度な労働を強いられる場面が多い。
冒頭では、吉井が町工場の夫妻に健康器具の転売を持ちかけている。そして平井は破格の買値を提示して、9万円を台に置く。次のショットは何かと言えば、平井が車に健康器具の入った段ボールを積んでいるショットである。この二つのショットの連なりをみて、私たちは夫妻がその買値を受け入れて、取引が成立し、平井が買った商品を運んでいることが分かる。
だがそれが分かるのは私たちが二つのショットを想像力でつなぐ労働を行っているからだ。本来であれば、夫妻が受け入れるかどうかの葛藤のショットやお札を手に持つショット、平井に取引成立を伝えるショットがあってもいいはずである。けれど本作ではそれらの中間がカットされている。だから、私たちの想像力で代わりに補わなければならない。
私たちはどんな映画に関わらずこの労働を強いられてはいる。1カットで撮られていない限り、登場人物が会話をしていたり、動作が一連になるように想像力で繋がないといけないからだ。ただし鑑賞者の労働の強度が高ければ、素朴な娯楽としては受け入れられないし、だからこそ分かりやすい描写やカットの配置がされている。
けれど本作は容赦がない。大胆な省略・圧縮・欠如があるから、労働の負荷が高い。常に想像を駆り立てなければならない。だから労働を放棄していると物語からすぐにこぼれ落ちるし、寝てなんかいたら問答無用で訳が分からなくなる。そんな重労働を強いられるから、デートで本作をみたら最悪なのである。もちろん映画で高度な労働を強いることの良し悪しをここでは評価しない。けれど本作はそのような映画ではある。
そう考えるとキャラクターの荒唐無稽さと物語の崩壊具合も理解はできる。
一番意味がよく分からないのはアシスタントである。彼は吉井が群馬の片田舎に引っ越したときに、在庫整理などのために雇われた青年である。東京でうだつが上がらなかったのも納得な、賢そうでも器用でもなさそうな彼。けれど実は殺し屋集団(?)の一員で素晴らしい殺しの持ち主なんて意味が分からないじゃないですか。もちろんそんな伏線が本作に準備されているわけもなくカットされている。さらにその前に、吉井に無断でパソコンを使用したことを理由に解雇されており、私怨があるのだから吉井をアシストするなんて絶対にあり得ない。
けれど本作では繋がっている。私たちも繋ぐように想像しなければならない。するとその繋ぎが、全くあり得ないことでもないと分かってくる。
だって、私たちは「JK刀」に熱狂できる。「JK刀」って何?女子高校生と刀が繋がれる正当性なんて全くない。人物が戦うに当たって制服なんて機能性に欠けている。まあ、そんなリアルさなんてものはどうでもよくて、単なる萌え可愛いで私たちは受け入れることができる。まさしく「JK」と「刀」という記号の戯れ。この戯れが実生活や資本主義体制の実体経済さえ覆い尽くしてしまったのが現代であり、それは動物化するポストモダンと地続きの世界でもある。
吉井の生活だってそうだ。彼は手に職をもって工場で働いている。しかし彼は工場の労働で得られる賃金より、本物か偽物か分からないものを転売していたほうが短時間で圧倒的に稼げる。しかも彼は商品の写真を撮って、ネットでアップロードだけすればいい。労働の度合いは全くもって低い。彼の実労働と貯金残高は乖離して、実際の生活と生計の立て方も全く違う。
それなら、私たちが分裂してしまうのも仕方がないのではないだろうか。吉井が工場にいるときと家にいるときではキャラクターが違う。秋子といるときも違う。けれどその違いを受け入れて、一人の吉井として繋げることはできる。
そして私たちが吉井の分裂している様に眼差しを向けるように、他人が本当はどんな人なのかなんて究極のところは全く分からないのだ。それはアシスタントのように極端ではないかもしれない。けれど吉井を殺そうとする彼らのバラバラさと彼ら個人としてのバラバラさのようには全くあり得る。そして彼らのように分裂した〈私〉は分裂したまま他人と繋がってしまっている。
では私たちは他人を殺すといった暴力や吉井と先輩のように転売といった犯罪に近い行為でしか繋がれないのか。否、それが吉井とアシスタントのバディ関係であろう。
アシスタントが吉井を助ける正当な根拠は欠けている。その正当さを虚偽に語っているわけでもない。けれど、その可能性は全く否定できないし、現に彼らは銃撃戦という危機を乗り越えて、生き延びている。私も明確な根拠はもってはいない。けれどそれでいいと想像できる。私たちは常に損得勘定を計算して他人と繋がっているわけではない。「アシスタントだから」という言表だけで他人を助けることはできる。
私たちは荒唐無稽に繋がれる。リキッド・モダニティがさらにインターネットで蒸発し、雲のように地上を漂うしかない社会のなかで、それでも繋がれる。本作はその雲を不穏で終わらせているが、私は思いがけない他人との繋がりを肯定的な可能性として捉えたい。
私の隣にいたカップルよ。なぜ付き合っているの?本当に相手のことを分かっているの?本当は金づるとか浮気関係とか殺し屋パートナーかなんて知る由もない。けれど本作をみた私は彼らの繋がりを想像はできる。そして「好きだから」だけで全くよいと思えるし、最高な関係だとも思う。
できればネットに漂う本稿を読んで、最悪な鑑賞経験を覆してほしいと思う。けれどそれは「ありえなそう」だし、そもそも最悪なことを二人で経験できたのは一生の思い出だろうからすでに最高なのだ。最後に、繰り返しになるがどうかパートナーに銃口だけは向けないでほしい。そして黒沢清のせいで、最高だったと思ってくれたら嬉しい。それが赤の他人である私の願いだ。
怖い😱怖い怖い😱こわ〜い映画です。でも、誰にでもありえるかもしれない日常の中の恐怖の話。
大好きな菅田くん主演の映画🎬
もちろん、前のめりで映画館へ。
2時間たっぷり菅田将暉さま💕
はい、もうそれだけで星5確定👍
としたくなるところを、グッと我慢して映画として評価いたしました。
誰にでも簡単に副業をはじめられる昨今において、とってもあるあるなお話。妖怪幽霊いらっしゃいのいわゆるホラー映画とは違う、生身の人間が巻き起こす想像しうる身近な恐怖であるため、観ている私たちは逃げ場がなくなり少し苦しくなります。
工場の社長滝本を荒川良々さんが、まさかの豹変ぶりで快演。えっ、冒頭あんなにいい人やったやん…。いい人の豹変ほど怖いものはありません😱世の中一番怒らせてはいけない人は、このタイプの人かもしれません。
転売業に誘う先輩村岡を窪田正孝さんが好演。まさにいるいるこんなアカン先輩そのもので、関わりたくない人ナンバーワンです。
菅田くん扮する主人公吉井の謎多き恋人秋子を演じるのは、最近あらゆるドラマや映画に引っ張りだこの古川琴音さん。いい人も悪い人もニュートラルに演じられる今一番注目の女優さんですね。ラストにやらかしてくれます😱
ネットカフェで生活する男三宅を演じたのは、確かな演技力と不思議な魅力で同業者からも支持され、これまた大人気の岡山天音さん。観ているものが一番普通に感情移入できたのは、もしかしたらこの三宅なのかもしれません。
そして、最後に吉井が雇う青年佐野を演じた奥平大兼さん。彼も最近とても人気の俳優さんです。一番理解不能なもしかしたら一番怖い😱人だったかもしれません。
この映画を観たあなた
どの登場人物に一番恐怖を感じましたか?
「楽して儲けたい」
「人より少し優位に立ちたい」
ちょっと待って!
その考え、少し怖い未来が待っているかもしれませんよ!!
星が4なかったのは、
後半どんぱちの銃撃戦がやや多かった気がしたからです。確かな演技力の役者さんが、こんなに揃っていたのに、なんだか勿体無い気がいたしました。でも、好きな役者さんたちの演技がたっぷり観られたので、心の中では星5つです🤩
黒沢清監督は我々とは違う視点で世界を見ることができるのではないか。
菅田将暉さんが演じる主人公が転売で大金を手にし、都会のアパートから湖の畔の新居へ引っ越してから物語世界は、まるで野心に燃える貧しい青年の恋と転落を描いた1950年代の人間ドラマのような、「ダーティハリー」などの70年代のバイオレンス・アクションのようなテイストを帯びます。 すると、緑の多い美しい風景の中で、古川琴音さん演じる恋人との甘い新生活がスタートすると思いきや、当時のアメリカ映画を見ている者は、湖で何かが起きるのではないか、恋人との関係性が豹変するのではないかと邪推してしまうでしょう。 さらに集団の狂気がピークに達する後半のクライマックスも、主人公の勤務先だった会社社長を演じた荒川良々さんがカウボーイか盗賊団の首領に見えてきて、まるで乾いた西部劇のような様相を呈するのです。 黒沢清監督が70歳を前にして、本作は「どうしてもやりたいことを割と素直に実現できた、その最たるものかもしれない」と述べており、映画史への造詣の深さも堪能することができる、破壊と混沌の映画となっています。
黒沢清監督作品にしては“黒さ”が足りない
中堅・若手のメジャー俳優を多数揃えた豪華な座組ではある。それぞれが役に入り込んで熱演しているが、菅田将暉や窪田正孝らスターたちにはどことなく“陽”のオーラが残っているというか、かつて黒沢組常連だった役所広司や西島秀俊が漂わせる底知れぬ闇がじわじわと背景をもどす黒く侵蝕していくような、要所要所でフレームを支配するダークさが足りない気がするのだ。 2020年の「MOTHER マザー」でデビューした奥平大兼は今や超売れっ子で(2023年の映画出演作は4本、2024年は本作含め3本)、主人公の吉井に雇われる佐野の得体のしれない存在感がいい。黒沢監督作との相性が良いように思うので、今後も起用されることを期待する。 スタイリッシュさとは対極にある終盤の撃ち合いのシークエンスは、素人が銃器を持ったらこんな感じだろうなというのが伝わってきて、あの野暮ったさや、彼らがあっさり撃ち殺される無常感が個人的にはよかった。あのアクション演出にはもちろん賛否あるとは思うが。
こわい、面白い
面白かった。
思っていたよりもわかりやすいストーリーだったし。
序盤から中盤にかけて、何気ないようだけど何かが引っかかるカットがいくつか見られ、その積み重ねが不安感を増大させていく。少しずつ、確実に。
前半、若干テンポが遅く感じたけれど、主人公が地方に拠点(湖の畔という設定がまたいいね)を移してから話がぐっと面白くなってきた。
荒川良々、窪田正孝、岡山天音……クセのつよい役者が集結。
この面子でフツーの映画なわけはない。
最初は「この役(工場の経営者)では荒川良々の存在がもったいないぁ」と思ったりしたけれど、なるほどやっぱりそうきたか。
サイコパス揃いの中でいちばんこわいのは、やっぱり佐野くんだなぁ。
こういう映画は黒沢清監督でしか撮れないんじゃないかと思います。
人間の闇の部分を描かせたらピカイチだ。
一歩間違えると滑稽になりかねないストーリーを、緊張と均衡を保ちながら丹念に作りあげている監督の手腕に感服しました。
そして菅田将暉。本当にいい役者だなぁ。
しかしこの映画、ありえないお話ではないですね。
また人間という生きものがいっそうこわくなってしまいました。
大好きな黒沢映画がまたひとつ増えた
これは賛否分かれる映画だなと思いましたが自分は圧倒的に賛。ここに来てまだ黒沢清がこんなに最高の映画を撮ってくれるのかと本当に嬉しかった。 細部にわたる人間の裏切り方の解像度の高さ、そこが一番のホラー。あれはもしかしたら身に覚えのある人にしかわからないのかもしれない、黒沢監督も同じ経験があるんだろうかと思ったら少しホッとした。 最高の映画です。
名優達の無駄遣いかも
何故に転売ヤーに対して怒っても何人もが殺意まで抱くのか理解できなかった。なぜ元上司が妻子を殺害して元部下を殺しに来るのかも。菅田将暉、古川琴音、奥平大兼、荒川良々、窪田正孝。素晴らしい役者さん達が勿体無い。岡山天音に至ってはほとんど覆面姿だし。
やっぱ、危ない橋渡るとろくなことないですね。
ちょっと何かが見えたり、ちょっと隠したり、ちょっと暗かったり、何かがそこにあるんじゃないかってゾワゾワしてしまうのは黒沢監督らしさ。そして、そいつは結局何者なんだ?って正体を晒さないのもその感覚にさせる。でもなんだか物足りない。ずっと引っかかってる、話のつじつまが合わない違和感みたいなものがそんな気分にさせる。そんな違和感も監督らしさのひとつなんだけど。でも、まったく隙だらけの銃撃戦とか見せられると、命がけにしちゃ緊迫感がなくないか?って萎える。 せいぜい、転売とか闇バイトとかの犯罪に手をそめてる連中はこの映画でも見てちょっと反省しとけ、と思うくらいか。
目に見える悪意
そもそもがおかしい話だとは思わないか? たかだか愚か者一人のために人生を棒に振る意味や意義がどこにあるというのか?バイトに雇ってもらえた程度で元雇い主の窮地に駆けつける義理がどこにある?頂き女子がターゲットを死ぬ寸前まで泳がせる必要がある?命より重要な商材など本当に存在する? 決定的に動機が欠如している。人々は幽霊のように、あるいはクラウド上を流れる情報のように画面を漂い、それらの交点上にときおり感情のふりをした暴力が明滅する。動機などはじめからない。誰もが空虚な人形に過ぎない。 動機が欠如しているのであればなぜ画面に運動が生じるのか?本作において人々を駆動させているのは、この世界に瀰漫する悪意だ。 『CURE』然り『回路』然り、映画の中を跳梁する悪は特定の個人や機関に還元されることなく、むしろ反対に非人称的次元へと際限なく拡散していく。黒沢清の映画世界において悪意はさながら汎神論のごとく世界全体を満たし、人々を破茶滅茶な方向に突き動かしている。 したがって「あのシーンで誰それは何を考えていたのか?」などと思案することにはほとんど意味がない。本作はそもそも人間(の内面)を描く気がない。あくまで人間という視覚的な共通コードを介して不可視の観念をカメラ=光学機械の前に引き摺り下ろすことが目的なのだから。 淡々と画面に蓄積していく動き(=結果)の中にいかんともしがたい不気味ささえ発見できたならば、それ以上何も望む必要はない。あなたが視覚を通じて感じ取ったそれは、純粋な悪意そのものなのだ。 物理世界に召喚された悪意はいよいよ膨れ上がり、可視的な超常現象として顕現する。吉井と助手を乗せた車から覗く暗雲はマグマのように燃え滾り、雷鳴を轟かせている。それはまさしく地獄の入り口と形容するに相応しい黙示録的光景だった。さすがにここはCGだったけど(笑) 観ていて気持ちいいシーンがいくつもあった。特に終盤の銃撃戦のくだりは『蛇の道』『蜘蛛の瞳』といったVシネ時代の黒沢清を彷彿とさせるような乾きと殺伐さが感じられた。廃工場の立体交差を彼ほど巧く使える監督はいないんじゃないだろうか。廃工場の内部から吉井の先輩が運転する黒い車が雪の降る屋外に飛び出す一連のショットはまさしく奇跡のような出来栄えだった。 黒沢清本人が「70手前で好きなことやれてマジで良かった♬」と豪語しているだけのことはある一作だったともいえるし、どうということはないいつもの黒沢清映画だったともいえる。 映画監督が同じ主題を死ぬまで再奏し続けることは素晴らしいことなのだ、小津安二郎もジョン・フォードもみんなそうだった、と蓮實重彦御大が語っていたので、その言を借りて私も本作に手放しの賞賛を送ることとする。
どこかがおかしくないですか?
吉井は、工場で働きながらインターネット上で商品を高額転売する、いわゆる転売ヤー。
徐々に転売にハマっていく吉井は工場の仕事を辞め、山奥の湖畔に新たな家を買ってそこで恋人の秋子との生活を始める。
しかし、そんな吉井の周りには怪しい動きが生まれ始めた……
気づいたらどこの映画館も終映になっていたので、最終日に急いで鑑賞。
黒沢清が今回目をつけたのは転売。
なんか感想が難しいね。
これでもかというくらい印象的なシーンの連続なのに……
分からない、掴めない、パッとしない。
まさに雲のような、そんな映画。
大満足なような物足りないような。
全く共感できない、なんなら感情のない話なのに、吉井が見舞われる悲劇の顛末を目撃したくなるのは、自分も吉井という憎悪の対象に対して雲のように湧き上がった1人だからなのかもしれない。
転売ヤーっていうのがまた絶妙。
多分多くの人が転売ヤーの直接的な被害者ではないと思う。
それでも転売ヤーと聞くとその多くの人が不快感を示し、憎悪をあらわにするはずだ。
吉井狩りに集まった面々を見てみると、
・実際に転売されて恨みのある殿山
・単純に吉井が嫌いな先輩村岡
・ゲーム感覚で来た知り合いの殺人犯滝本
・人生に絶望した井上
・暇つぶし感覚の矢部
・社会に恨みのある三宅
といったかんじで関係も目的もバラバラ。
“クラウド”は「cloud」でも「crowd」でもあり、不特定多数の者も含む広義的なタイトル。
我々だって、いつ誰が狙う側や狙われる側になるかも分からない、そんなすぐ隣にあるような恐怖が転売を通して描かれていたように思う。
今、世間で問題となっている闇バイトもそれに近いかもしれない。
どんな犯罪も決して他人事とは言えないのだから。
主人公の吉井良介という人間が気になって仕方ない。
はじめはただの無慈悲な男。
しかし家に帰って彼女と話せば彼女思いの普通の青年。
しかし、転売が彼の全てになるにつれてそんな一面も崩壊していく。
バカ、鈍感、というかもう狂っている。
自宅に上がってきた滝本らに銃を向けられいくら問い詰められても自分の罪を認めない。というか自覚していない。
「僕が滝本さんになんかしました?滝本さんにはむしろ感謝してるんですよ!」
更に状況は激化し、集団が発砲しながら鬼ごっこが始まる。
秋子と再会するも秋子の心配や逃げるよう言うこともなく、まず商品の心配。
なんなら監禁から解放されて一通り殺し終わった後も、一番に商品の心配。
村岡に謝れと言われても一向に謝らない。
村岡にも言われていたが、全て自分の思う通りにいくと思っているのだろう。
なんせ「ラーテル」なんて自分で名乗っちゃうくらいだから。
闇バイトで捕まった少年たちに通じるところを少し感じた。
彼らは人を殺しておいて、何年で刑務所を出れるかと聞いているらしい。
家族もメディア取材に答えていたりと…なんかおかしくないか?
今回も安定の黒沢節全開で安心した。
カーテンとあのよく分からない透明なビニールの幕みたいなのが出てくるだけでワクワクする。
暗い場所から誰かがこちらを見ていたり、だんだん画面が暗くなったり、不穏な影や光が映るだけで興奮する。
そこに今回は本格的なガンアクションと来ればもう間違いない。
登場人物たちの感情を失った喋り方は黒沢映画になればみんなそうなってしまうから面白い。
お気に入りは「コイツ コロース」。
予告から気になってたけど、あれ岡山天音が言ってたんだ!
吉岡さんも『Chime』の感じそのままでとても良い。
鑑賞前にジャンプスケアがあると聞いて物凄くビビっていたけど一箇所だけで、あとは雰囲気でこちらを攻めてくる焦らしプレイ。
そういうところが好きなのよ〜黒沢くん♡
ベイビーわるきゅーれから2日連続で上質な邦画アクションを映画館で観れて大満足。
佐野くんが現場処理を電話で頼んでたけど、あれ絶対田坂宮内のふたりだよねwww
ちょっとクロスオーバー見てみたいかも。
Alexandrosのインスパイアソングもカッケー!!!
ネット時代の殺意という連帯感。
「難しくないんで、サクッと見れます。お時間ある時どうぞ」と言われたが黒沢清だからそうはいかんやろうと思った、その予想通りであった。 なんか後味わるく、これが終わりじゃなくて始まりだって、、闇世界どっぷり突入だよね。 菅田氏も極力演技抑え目にして頑張っているがもう少し渋い若者の方が良かったかも知れない。これはルックでキャスティングの問題なんでどうにもならない。 でもこんな可愛い子が裏稼業にハマっていくのが良いのだ!と考える事もできる。 名前も知らないただ憎しみだけで繋がった人達が怖い。そしてただ1人のプロ、アシスタント君の存在感も凄かった。あ、松重さんもなかなか美味しい役回りだった。あれだけでぐっと閉まる。 車のカット窓外合成は雲きれいだけど、どうにもパースがあってないのが気になった。
「転売、ダメ、ゼッタイ!」・・・の、はずが???
映画Cloud鑑賞 15分経過 転売はダメだよなぁ… 30分経過 やっぱり転売はダメだよなぁ… 1時間経過 ああもう転売なんてするから… ラスト30分 い、一体何を見せられているんだ…??? 中盤までは免許交付後に見せられる交通ルール守りましょう動画のごとく、よく出来た転売禁止啓発映画のような主人公転落ストーリーだったのに、ラストの30分で怒濤の展開に。 そして、一部オタク(腐)女子が喜びそうな佐野のキャラはなんなんだ。 「あの転売ヤーのどこが良かったの・・・?顔?顔が菅田将暉だから???」と全力で問いただしたい気分である。金を稼ぐ能力に長けていたとも言いがたいし、やっぱり顔か。 正直、脚本にもツッコミどころは多いし台詞回しがいかにも台詞っぽいなど粗はあるが、主人公の殺されかけて殺してなお転売した商品の売れ行きが気になる狂いっぷりに、ドラマ相棒「節約殺人」で、人殺しをして捕まってなお、去り際に節約のため電気を消すことを忘れない主婦を思い出した。 荒川良々のなんともいえない気持ち悪さがとても良かった(褒めてる)
前半と後半でガラッと変わる
ほとんど前情報無しで観ましたが予想外の展開に… 菅田将暉さんが主役ですが共演俳優陣のキャラ立ちが凄かったです。荒木良々さんも出てましたしね。 しかし菅田将暉さんって自分の世界をしっかり持ってる俳優さんですね。 前半は転売ヤーやアングラっぽい世界に生きる若者の姿が描かれて、反感や恨みを買ってしますのも現実的な展開。 ところが後半になるとアレっ?ベビ◯るですか?って感じの展開で佐野くんが凄いことに。 ストーリー展開が惜しかったな
光と影
純粋(?)に金欲に満ちている吉井が周囲に恨みの種を振り撒く。 いつの間にか始まる復讐と、限界を越えた人の執念が怖く恐ろしく描かれたサスペンスホラー作品。 光と影の描き方がとても上手い。 人物の感情や立場によって光と影がしっかりと分けられている。 ストーリーが進むにつれ色濃くなり飲み込むかのような影、影、影。 吉井に対して佐野が若過ぎるように見える…それがまた佐野という謎の少年の不気味さを醸し出している良い一要因なのかもしれない。
転売屋は罪?
商売をしているだけで、命を狙われる。怖い話です。 私なんかフリマで100円で買った品がヤフオクで28000円で売れた身としては、夜も眠れないほどです。差額で商売をしている物販の人にはあまりお薦めできないかも知れません。この監督の映画は好きです。出演者が豪華で楽しめました。
後半に失速した感じ
転売ヤーの話。 中盤まではどういう結末になるのか楽しみながら観れたけど、以降は話が行き当たりばったりのように感じ、キャラクターの行動も説得力に欠けるように思った。いろいろ説明不足のところもあるので、こちらで補完しながら鑑賞しないといけない。 それが味になればいいけど、本作だと作品への集中力をそいでいるように感じた。 オチも中途半端に感じて、もっとすっきり終わってほしかったと思う。
分かり易い不条理劇
『蛇の道』『Chime』と、今年に入って相次いで公開された黒沢清作品に本当にガッカリさせられ続けて来た僕にとっては久々に黒沢らしさが感じられる不条理ホラーでした。 あこぎな手を使って買い集めた品を高価で転売する、いわゆるテンバイヤーの男の下に恨みを募らせる人々・SNSで煽られた人々が集まりぶっ殺しの暴力が炸裂し始めます。その混乱と暴力こそ黒沢映画の持ち味でしょう。 でもね、本作で描かれるのは「分かり易い不条理」「解説できる理不尽」であると感じられました。『憐みの3章』の「訳の分からぬ不条理」「解説などできない理不尽」を観て混乱の陶酔を感じた後だと本作は物足りなく感じてしまいました。映画の観客は本当に我儘だなと思います。はい。
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