Cloud クラウドのレビュー・感想・評価
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全部、黒沢清のせいにしよう
友人2人と観終わった後、通夜が始まった。正確に言えば、映画館をそそくさと後にして、コンビニで缶ビールを買い、広場で何を観させられたかを話し始めた。もちろんその話し合いが、何かひとつの解決をもたらしたわけではない。映画で起こったことを話せば話すほど、物語が綻んでくる。一貫性が崩壊する。枝葉のように別の出来事が浮かんでくる。全くもってすっきりしない。
友達や恋人、家族など誰かと一緒に観に行った人は最悪の映画体験だと思う。
菅田将輝や古川琴音、岡山天音、窪田正孝など役者陣は遜色ない。シネコンで上映されるわけだから、変なアート映画ではなく楽しめる(はず)。ヴェネチア国際映画祭に正式出品されたり、アカデミー賞の日本代表にもなっているのだから評価も高い。さらにあの黒沢清(?)である。誰かとみるには最高の好条件である。
なのに、なんで…?私の隣にいたカップルよ。映画に誘ったパートナーを責めないでほしい。パートナーは何も悪くない。悪いのは全部、黒沢清だ。どうか吉井と秋子の顛末にはならないでくれよ…
そう思いたいし、現に思ってもいるのだが、ふと気づく。このように最悪な映画体験を全て黒沢清のせいにしようとする他責化と暴力は、本作で吉井を殺そうとした彼らと全く同じであると。それなら本作は私たちとは別世界に生きる狂人の物語では決してない。どこまでいっても私たちの話である。
今回、私は友人に本を貸していて、その本が返されるタイミングでもあった。タイトルは『眼がスクリーンになるときゼロから読むドゥルーズ『シネマ』』。その時、岡山天音演じる三宅のようなテンションで、「これはドゥルーズ」と思った。資本主義と分裂症。それが重要概念に違いない。
転売ヤーの実態は現代の資本主義経済の様相。彼らの破綻しているかにみえるキャラクターは分裂症。そして分裂症を患っている私達が結合される/できるバディ制度/世界。その世界と私たち、可能性を描いたと思うと、私は本作が最高に思えてくる。何よりその世界がバウマンが提唱した「リキッド・モダニティ」から、「クラウド・ポスト・ポスト・モダニティ」ー仮の名付けであるがーだと思うと感動さえ覚える。その先を描いてくれた!と。
本稿ではこれ以上、ドゥルーズには立ち入らない。代わりになぜ本作が最悪の映画体験になってしまうのか、そしてその要因をまず「娯楽で観に行ったのに労働を強いられる点」だとして考えていきたい。だって映画体験を最悪のままで終わらせたくはないでしょ。
以下、ネタバレを含みます。
私たちは本作を鑑賞する上で、「労働」をしなければならない。より正確に言えば強度な労働を強いられる場面が多い。
冒頭では、吉井が町工場の夫妻に健康器具の転売を持ちかけている。そして平井は破格の買値を提示して、9万円を台に置く。次のショットは何かと言えば、平井が車に健康器具の入った段ボールを積んでいるショットである。この二つのショットの連なりをみて、私たちは夫妻がその買値を受け入れて、取引が成立し、平井が買った商品を運んでいることが分かる。
だがそれが分かるのは私たちが二つのショットを想像力でつなぐ労働を行っているからだ。本来であれば、夫妻が受け入れるかどうかの葛藤のショットやお札を手に持つショット、平井に取引成立を伝えるショットがあってもいいはずである。けれど本作ではそれらの中間がカットされている。だから、私たちの想像力で代わりに補わなければならない。
私たちはどんな映画に関わらずこの労働を強いられてはいる。1カットで撮られていない限り、登場人物が会話をしていたり、動作が一連になるように想像力で繋がないといけないからだ。ただし鑑賞者の労働の強度が高ければ、素朴な娯楽としては受け入れられないし、だからこそ分かりやすい描写やカットの配置がされている。
けれど本作は容赦がない。大胆な省略・圧縮・欠如があるから、労働の負荷が高い。常に想像を駆り立てなければならない。だから労働を放棄していると物語からすぐにこぼれ落ちるし、寝てなんかいたら問答無用で訳が分からなくなる。そんな重労働を強いられるから、デートで本作をみたら最悪なのである。もちろん映画で高度な労働を強いることの良し悪しをここでは評価しない。けれど本作はそのような映画ではある。
そう考えるとキャラクターの荒唐無稽さと物語の崩壊具合も理解はできる。
一番意味がよく分からないのはアシスタントである。彼は吉井が群馬の片田舎に引っ越したときに、在庫整理などのために雇われた青年である。東京でうだつが上がらなかったのも納得な、賢そうでも器用でもなさそうな彼。けれど実は殺し屋集団(?)の一員で素晴らしい殺しの持ち主なんて意味が分からないじゃないですか。もちろんそんな伏線が本作に準備されているわけもなくカットされている。さらにその前に、吉井に無断でパソコンを使用したことを理由に解雇されており、私怨があるのだから吉井をアシストするなんて絶対にあり得ない。
けれど本作では繋がっている。私たちも繋ぐように想像しなければならない。するとその繋ぎが、全くあり得ないことでもないと分かってくる。
だって、私たちは「JK刀」に熱狂できる。「JK刀」って何?女子高校生と刀が繋がれる正当性なんて全くない。人物が戦うに当たって制服なんて機能性に欠けている。まあ、そんなリアルさなんてものはどうでもよくて、単なる萌え可愛いで私たちは受け入れることができる。まさしく「JK」と「刀」という記号の戯れ。この戯れが実生活や資本主義体制の実体経済さえ覆い尽くしてしまったのが現代であり、それは動物化するポストモダンと地続きの世界でもある。
吉井の生活だってそうだ。彼は手に職をもって工場で働いている。しかし彼は工場の労働で得られる賃金より、本物か偽物か分からないものを転売していたほうが短時間で圧倒的に稼げる。しかも彼は商品の写真を撮って、ネットでアップロードだけすればいい。労働の度合いは全くもって低い。彼の実労働と貯金残高は乖離して、実際の生活と生計の立て方も全く違う。
それなら、私たちが分裂してしまうのも仕方がないのではないだろうか。吉井が工場にいるときと家にいるときではキャラクターが違う。秋子といるときも違う。けれどその違いを受け入れて、一人の吉井として繋げることはできる。
そして私たちが吉井の分裂している様に眼差しを向けるように、他人が本当はどんな人なのかなんて究極のところは全く分からないのだ。それはアシスタントのように極端ではないかもしれない。けれど吉井を殺そうとする彼らのバラバラさと彼ら個人としてのバラバラさのようには全くあり得る。そして彼らのように分裂した〈私〉は分裂したまま他人と繋がってしまっている。
では私たちは他人を殺すといった暴力や吉井と先輩のように転売といった犯罪に近い行為でしか繋がれないのか。否、それが吉井とアシスタントのバディ関係であろう。
アシスタントが吉井を助ける正当な根拠は欠けている。その正当さを虚偽に語っているわけでもない。けれど、その可能性は全く否定できないし、現に彼らは銃撃戦という危機を乗り越えて、生き延びている。私も明確な根拠はもってはいない。けれどそれでいいと想像できる。私たちは常に損得勘定を計算して他人と繋がっているわけではない。「アシスタントだから」という言表だけで他人を助けることはできる。
私たちは荒唐無稽に繋がれる。リキッド・モダニティがさらにインターネットで蒸発し、雲のように地上を漂うしかない社会のなかで、それでも繋がれる。本作はその雲を不穏で終わらせているが、私は思いがけない他人との繋がりを肯定的な可能性として捉えたい。
私の隣にいたカップルよ。なぜ付き合っているの?本当に相手のことを分かっているの?本当は金づるとか浮気関係とか殺し屋パートナーかなんて知る由もない。けれど本作をみた私は彼らの繋がりを想像はできる。そして「好きだから」だけで全くよいと思えるし、最高な関係だとも思う。
できればネットに漂う本稿を読んで、最悪な鑑賞経験を覆してほしいと思う。けれどそれは「ありえなそう」だし、そもそも最悪なことを二人で経験できたのは一生の思い出だろうからすでに最高なのだ。最後に、繰り返しになるがどうかパートナーに銃口だけは向けないでほしい。そして黒沢清のせいで、最高だったと思ってくれたら嬉しい。それが赤の他人である私の願いだ。
怖い😱怖い怖い😱こわ〜い映画です。でも、誰にでもありえるかもしれない日常の中の恐怖の話。
大好きな菅田くん主演の映画🎬
もちろん、前のめりで映画館へ。
2時間たっぷり菅田将暉さま💕
はい、もうそれだけで星5確定👍
としたくなるところを、グッと我慢して映画として評価いたしました。
誰にでも簡単に副業をはじめられる昨今において、とってもあるあるなお話。妖怪幽霊いらっしゃいのいわゆるホラー映画とは違う、生身の人間が巻き起こす想像しうる身近な恐怖であるため、観ている私たちは逃げ場がなくなり少し苦しくなります。
工場の社長滝本を荒川良々さんが、まさかの豹変ぶりで快演。えっ、冒頭あんなにいい人やったやん…。いい人の豹変ほど怖いものはありません😱世の中一番怒らせてはいけない人は、このタイプの人かもしれません。
転売業に誘う先輩村岡を窪田正孝さんが好演。まさにいるいるこんなアカン先輩そのもので、関わりたくない人ナンバーワンです。
菅田くん扮する主人公吉井の謎多き恋人秋子を演じるのは、最近あらゆるドラマや映画に引っ張りだこの古川琴音さん。いい人も悪い人もニュートラルに演じられる今一番注目の女優さんですね。ラストにやらかしてくれます😱
ネットカフェで生活する男三宅を演じたのは、確かな演技力と不思議な魅力で同業者からも支持され、これまた大人気の岡山天音さん。観ているものが一番普通に感情移入できたのは、もしかしたらこの三宅なのかもしれません。
そして、最後に吉井が雇う青年佐野を演じた奥平大兼さん。彼も最近とても人気の俳優さんです。一番理解不能なもしかしたら一番怖い😱人だったかもしれません。
この映画を観たあなた
どの登場人物に一番恐怖を感じましたか?
「楽して儲けたい」
「人より少し優位に立ちたい」
ちょっと待って!
その考え、少し怖い未来が待っているかもしれませんよ!!
星が4なかったのは、
後半どんぱちの銃撃戦がやや多かった気がしたからです。確かな演技力の役者さんが、こんなに揃っていたのに、なんだか勿体無い気がいたしました。でも、好きな役者さんたちの演技がたっぷり観られたので、心の中では星5つです🤩
黒沢清監督は我々とは違う視点で世界を見ることができるのではないか。
菅田将暉さんが演じる主人公が転売で大金を手にし、都会のアパートから湖の畔の新居へ引っ越してから物語世界は、まるで野心に燃える貧しい青年の恋と転落を描いた1950年代の人間ドラマのような、「ダーティハリー」などの70年代のバイオレンス・アクションのようなテイストを帯びます。
すると、緑の多い美しい風景の中で、古川琴音さん演じる恋人との甘い新生活がスタートすると思いきや、当時のアメリカ映画を見ている者は、湖で何かが起きるのではないか、恋人との関係性が豹変するのではないかと邪推してしまうでしょう。
さらに集団の狂気がピークに達する後半のクライマックスも、主人公の勤務先だった会社社長を演じた荒川良々さんがカウボーイか盗賊団の首領に見えてきて、まるで乾いた西部劇のような様相を呈するのです。
黒沢清監督が70歳を前にして、本作は「どうしてもやりたいことを割と素直に実現できた、その最たるものかもしれない」と述べており、映画史への造詣の深さも堪能することができる、破壊と混沌の映画となっています。
黒沢清監督作品にしては“黒さ”が足りない
中堅・若手のメジャー俳優を多数揃えた豪華な座組ではある。それぞれが役に入り込んで熱演しているが、菅田将暉や窪田正孝らスターたちにはどことなく“陽”のオーラが残っているというか、かつて黒沢組常連だった役所広司や西島秀俊が漂わせる底知れぬ闇がじわじわと背景をもどす黒く侵蝕していくような、要所要所でフレームを支配するダークさが足りない気がするのだ。
2020年の「MOTHER マザー」でデビューした奥平大兼は今や超売れっ子で(2023年の映画出演作は4本、2024年は本作含め3本)、主人公の吉井に雇われる佐野の得体のしれない存在感がいい。黒沢監督作との相性が良いように思うので、今後も起用されることを期待する。
スタイリッシュさとは対極にある終盤の撃ち合いのシークエンスは、素人が銃器を持ったらこんな感じだろうなというのが伝わってきて、あの野暮ったさや、彼らがあっさり撃ち殺される無常感が個人的にはよかった。あのアクション演出にはもちろん賛否あるとは思うが。
捨てる者と、それを拾う者……。
転売屋もラクじゃない――。
いや、そもそも転売屋なんてやるもんじゃない――と、みんなにそう思わせるような始まり。
でも、映画を観ているうちに……いやいや、自分だって紙一重じゃないか? どんなにうまく行ってる安全な暮らしをしていても、今の時代は何が起きるかわからないんだぞ。自分がどこでどう転落していくかわからないんだから。
……今観ている主人公の吉井の姿は、未来の自分かもしれないのだ。
世の中での「成功者」だなんて全然言えない状態の自分だからこそ、映画を見ていてそんな思いさえ抱いてしまう。
それに、転売屋も知恵だ。
零細企業の工場主が気づかない売り方を知っている。工場主が売れないと思っていても、実は売り方(要は世間の騙し方)を知ってさえいれば、製品は売れるのだ。売り方を知らない者が損をして、赤字状態の経営危機から抜け出す打開策を見つけられないまま、破滅していくのだ。
まさに薄ら寒い弱肉強食の社会が描かれていくのかと思うと、実はそうでもない。
売り方のうまい主人公の吉井自身も、実は転売を成立させるために手間暇かけて働き、時間外労働なんてのも惜しまずに、よく働き、汗を流す。なんでそんなに働くのかというくらいに働く。あなたって働くのが好きなの? それとも転売が趣味なの? まさか生き甲斐なの?
でも、ああ……やっぱりお金なんだよね?
銀行通帳に貯まった残高を観て、ホッとするような、心の中でヤッタぞと言ってるような顔をすることで、吉井も底辺から抜け出したい青年のひとりなんだなと……同時に僕のような人間も紙一重なんだなと、やはり思ってしまう。
転売という世間に嫌われがちな行為以外は、彼は真面目に働いている。
昼間は工場で働き、副業でチマチマと小銭を稼ぐための転売程度にしておけば良かったのに、徐々に踏み外してしまう。
その理由は、やはり女の存在だった……。
贅沢な暮らしに憧れる彼女への見栄――そしてそんな女を幸せにしてやりたいという、男が誰しも持ってしまう落とし穴に吉井は自ら嵌まっていくのだ(笑)。
女がもうちょっとマトモな性格だったら、吉井も幸せになれたんだろうけど、自分本位で、交際する相手を幸せにしたいと思うような女ではなく、ただ流されるままに生きていて、なかなか本音を出さないという女だから、吉井が「彼女はこういう女なんだろう」と思い込むことで、微妙な誤解というかズレを保ったまま付き合いはかろうじて続いていく……。
しかし吉井は「彼女を幸せにしたいから」という欲と見栄によって、今の生活より2段階上のステージに移行してしまう。
佐野君という助手も雇い、湖のほとりにある白い一軒家へ引っ越して、よせばいいのに手広く転売屋を始めちゃうのだ。
でも、それで貯金をかなり使ってしまったせいか、ちょっと危ない商品の転売にも手を出してしまうようになる。これが吉井をピンチに追い込む。
ネットで「悪者」を探し回る正義マンたちに吉井は見つかって、ターゲットにされてしまうのだ。
便利だけど、ネットは誹謗中傷などの問題も起こす……。
彼ら「悪を正したがる正義マン」に見つかってしまうと、どうなるか――ここから物語は、ネットの恐ろしさへと移り変わっていく。
でも、逆にここで面白いのは吉井の鈍感ぶりだ。
意識して気をつけていないと、ネットでの自分の悪評に気づかないという長所なのか短所なのかわからない微妙なズレが、やはりまたここでも現われる。
よくネットで誹謗中傷された人が、追いつめられて自害を選択するという悲惨なケースもあるが――そういうのって、自分の悪評を覗かなければ、気にしなければいいと言われる。そうすれば、すべては対岸の火事になってしまうからと、吉井を通じてネットと現実の差を見せつけられてしまい……そうだよな、見ちゃうからダメなんだよなと、あらためて気づかされてしまう。
でも、やっぱり僕は見ちゃうけどね……(苦笑)。
さて。吉井の「他人からどう見られているかを気にしない」という鈍感さは、吉井の心が傷つくといったピンチからは救うが、一方で別のピンチも招いてしまう。
ネット上の見えないところで蠢き出すのが、正義マン以上に怖い連中だ。
過去の転売で吉井に恨みを持つ者、吉井のことが好きすぎてストーカー的に追ってしまう男、ただ社会的に許せない奴を、実際に自分の手で懲らしめたい実力行使主義の男……いわば底辺で、どこにも自分の行き場所がなくて、もはや破滅的で、もう後に戻れなくなっている「さまよえる死体」のような連中だ。
彼らは、もう社会では半ば死んでると言っていい状態で、本人たちも「いつ死んでもいい」と考えてる刹那主義者とも言える。
ネットは闇バイトもそうだけど、常識が飛んでしまった連中とも繋がっているという怖さがある。その怖さが、平然と表に出てくる。
これが描かれだすと、急に映画が加速しだす。
まず佐野君が吉井がネットで叩かれだしているのに気づき、雇い主に注意したほうがいいと警告するも、吉井は我関せずと言った感じで気にする様子もない。ただ、今の転売がうまく行くかだけに興味を注ぎ、それは一種、取り憑かれてしまってるかのようだ……。
さて、ここから先の展開を具体的に書くとネタバレになってしまうから、やめておいたほうがいいのだけど。
でも……自分が本当に書きたい感想は、後半のここにこそ多くあるので、これ以降は曖昧で抽象的な書き方になってしまうことをお許しいただきたい。
……現実とは、こんなものかもしれないな……。
後半に突入するにつれ、僕はそう思った。
この世の中、何が起きるかわからない。
気をつけていても、不幸はやってくるし、自分が他人にどう思われているかなんてのもわからない。
吉井は、きっと他人にどう思われてるかなんて気にしないように生きるのが正解だと思っていたのだろうし、他人に深く関わらなければ、それで波風は立たず安全なんだろうと思っていたはず。僕も性格的にそういうところがあるからわかる。他人が怖いし、わずらわしい。出来れば深く関わり合いたくない。だけども、そういうわけにも行かない……だから、その矛盾で苦しむ。
そうやって自分の意識を殺して、殺して、無感情、無表情となっていくうちに、完成したのが吉井だとしたら、その生き方をまっとう出来ていることに嫉妬した連中が、それを否定するために集まってくるみたいな、なんだか聖書の一文に書かれてありそうな神話に似た物語性を感じた。
つまり、人類の歴史的に全然変わらない人間の愚かな行いを見せられているような気がしていたのだ。
だからクライマックスは危機感あふれる場面を愉しみながらも、どこか人の愚かさ、切なさを感じざるを得ない……。
人は何かに取り憑かれて、逃れられない何かと闘いながら生きてるんじゃないかって。
ラスト……吉井は人生で、何を信じていたんだろう?
幸せにしたいと思っていたはずの女は、結局は幻だったのだろうか。
今まで吉井は、彼女の何を見てきたのか?
もしかすると吉井の周りにあったもの、すべては現実のものではなく、虚構だったのかもしれない……。
そして、佐野君だけがホンモノだったのかも。
嘘っぽさに覆われた佐野君こそが現実で、自分が現実だと信じてきたものは虚構だったのか……。
だけど、吉井の帰る場所は、やはり転売だったのか。
あれほどの出来事に巻き込まれたのに、吉井は転売の売れ行きのほうを気にする。
周りの人物がどれだけ虚構だったとしても、転売だけは、自分の手で触れて、買って、商品を運搬して、製品写真を撮るためにカメラのシャッターを自分で押して、ネットで公開して、じっと株の値上がりを待つかのようにネットでの売れ行きを見守り続ける……その自らが直接手をかけた仕事の数々だけは、すべてホンモノの触感があり、自分がやったことのすべてだと実感を持てるものだから。
最後に佐野君は、吉井にこう言う。
「転売を続けてください。あとのことはオレがやりますから。そうすれば、のぞむものを手に入れられますよ……」
このとき、僕は佐野君が――神のような存在に思えてしまった。
神様が人間界に来て、興味を持った人間に何かを与えたいと思った。自分はもう何もかも手に入れてしまってるから、欲がまるでない。だから逆に与える側になりたい……。
そう言ってるかに聞こえてしまった。
そして、それを暗示させるかのように――事件現場から帰る2人の車から見える空は、どこか現実ではない不気味でサイケデリックな色を輝かせていた……。
いかに現代の日本社会でリアルに銃撃戦を描くか
ちょっと楽しい映画でした。私にとって。
世間的には、「現代社会に潜む“集団狂気”描くサスペンス・スリラー」なんて言われているけど、私には、いかに現代の日本社会でリアルに銃撃戦を描くか、ということを黒沢監督はやりたかったように思えた。それは半分ぐらい成功している。その辺りが見ていて楽しかった。
まあ90年代の「Vシネマ」をバージョンアップしたような映画でした。
理屈の部分もそれなりにできている(ネット社会の転売文化の怖さを描いている)。だが多分監督本人は、それほど深刻に考えてない。程々に観客がその恐怖感をリアルに感じられればそれでよかったのでは?と思う。ただこの理屈部分をしっかり描かないとこの銃撃戦やアクションシーンが成立しない。いわば、アクション映画の土台(建物の基礎工事のようなもの)でこれがしっかりできていないと肝心のアクションがつまらなくなる。
その辺が映画の面白さですね。アクションシーンだけの映画のつまらなさ。アクションシーンがいかによくできていても。
映画自体は、ペキンパーの「わらの犬」の影響や、フランス映画っぽい雰囲気もあり、この点も好みだった。
ラストは、まるで「わらの犬」を思わせる。このラストがいい。
最近の黒沢清の映画は、私好み。前作の「蛇の道」も。
昔の「カリスマ」なんかは、???だった。「リアル 完全なる首長竜の日」も?だった。
古いのではやはりアクションものというか刑事ものスリラーの「CURE」は良かったけど。
黒沢清のアクション映画の良さは、銃の扱い方。今回も、乾いた甲高い銃声で、撃ち方もそっけなくてリアルな感じがよかった。
出来としては 3.5
好みとしては 4.5
うーん。モヤモヤ感が残る
簡単にお金を稼げたことで青年の欲望が高まる。
その欲望の拍車が禍々しい人々を惹きつける。
そして後半に掛けて出てくる裏切られた人々。
その怒りは分かるがその行動はかなり飛躍したものとなる点はホラーを感じる。
けどその要素だけかと思えば、唐突な殺し屋が出てきて場を一掃するアクションがあるなど、この作品に含まれる要素がとても多く何に重きは置いてるか分からなくモヤモヤ感が残る作品だった。
なんだこれ?
いや気付くだろって、
そうはならんやろって、
ツッコミどころ満載
所々コメディかと思って笑っちゃった
俳優さんの無駄遣い過ぎる
台詞が台詞言ってます感はあえてなの?
古川琴音と菅田将暉なんて最高のコンビのはずなのに
ドラマとかPVの方がいい演技してたわ
カット割なのかなんなのか…わからんけど
演技してます感がえぐい
ストーリー自体もまったく納得できなかった
古川琴音が露出多めの格好で
ボディクリーム塗るシーンもみたくなかったあ
演者さんみんな上手いのにもったいない
奥平くんが可愛いかったのでなんとか最後まで見た
ライオンの隠れ家を前日に見終わったところだったので
岡山天音くんの別人ぶりもさすがでした!!!
まじで最後まで意味わかんなかった〜〜〜
題材として珍しい作品
鬼滅の刃の展覧会に行きました
素晴らしい展覧会だったのですが
最後のグッズショップにて
中国人の人たちがものすごい勢いでものすごい量のグッズを片っ端から買い占めていました
転売だな、と思いました
見ていて気分が悪いし
これによって本当にほしい人が買えなくなる
いろんな人に恨まれて殺されそうになるのも納得かな、と
この映画を思い出しました
あ、映画としてはクオリティ低いと思いますが
この題材の映画は2つと無いんじゃないでしょうか
垂らされた地獄へのくもの糸
とある転売ヤーを主人公とした悲劇
いわゆる「あくどい」商売をし、恨みまで仕入れてしまった主人公は
命を狙われる事となる。
ただただ普通の幸せと成功を手にしたい男の末路はいかに。
主人公を含めた全ての登場人物が不気味で生々しい。
そして、心が曇りがかった者たちの生気の無い様はどこか他人事ではない。
息づかいによる演技・一切のBGMのないところが印象に残った。
さらに物語ラスト主人公が大切なものを失った慟哭ののち
次のカットに映る雲の切れ目から覗かせる夕空は
これから進まざるを得ないさらなる地獄を表現し、
光が射すことで雲行きの怪しさに磨きがかかる様に見惚れている自分がいる。
地獄に垂らされた一本の蜘蛛の糸が
巧妙に仕組まれたものだったとしても
“勧善懲悪映画”今は昔
黒沢清監督作品の鑑賞は『スパイの妻』以来の久々でしたし、全く予備知識なしで見たのでジャンルすら分からず、前半でまたホラー映画なのかと思いきや後半でサスペン・アクション映画だとやっと理解しましたが、今風の設定なのが面白かったです。
最近の日本映画の娯楽作品自体あまり見ていなかったので、昭和・平成ではない間違いなく令和時代の設定が非常に面白く新鮮に感じられました。
もっと分かりやすく言えば、昔の様なヤクザ・チンピラ・半グレ・不良の様な設定は今や時代遅れであり、全くの善人でもなく、根っからの悪人でもなく、ひょっとすると自分の周りにも普通にいそうな人が、何かのスイッチが入ると直ぐに狂ってしまえる様な設定が今風でしたね。
本作の主人公のキャラ設定も、本業は何処かの衣類関連の工場で働き、普通に仕事はこなせるし勤務態度もいたって真面目であり、上司にも目をかけられ能力的には平均以上という雰囲気を出しながら、性格的にこれ以上のことは望みもしないし、したくもないという自己評価をする程に冷静であり、しかし金銭的な欲望もあり、自分の性分に合った復職として転売屋をやり、そこでかなり如何わしい仕事もそれ程の罪悪感も後ろめたさも感じていない設定というのが、如何にも今の時代感を表していて面白かったです。
だから観客はこの主人公に全く共感もしないし感情移入もしない、それは他の登場人物も全て同じで、善悪のない(カタルシスのない)アクション映画を見せられている感覚が非常に今風に思えました。
それこそが“世相を反映する”と呼ぶに相応しいのでしょう。
だから、一般評価が賛否両論なのでしょうね。
こういう映画は黒沢清監督マニア向け作品というよりも、“黒沢清ファンダム作品”と呼んだ方が似合っている様な気がします。
映画ファンの「良かった!」をあてに映画は見てはダメ
❇️『お前誰やねん?』 ★彡何故?謎?引き込まれるなーほんま好き❤️
クラウド
🇯🇵
❇️『お前誰やねん?』
★彡何故?謎?引き込まれるなーほんま好き❤️
🔵かーるくあらすじ。
転売ヤーで一儲けした主人公がネットで恨みを買い身を崩していく。
◉81C点。
★彡???はありながらも前半はリアルで良かったし。後半はエンタメでしたが、それでも面白かった。
🟢感想。
1️⃣⭕️『恨みを買う流れは良くわかる』
2️⃣🔺『謎のアシスタントが謎?』
3️⃣🔺『多少のツッコミも超えて面白い!』
★彡
4️⃣⭕️『彼女のクオリティーが絶妙で好き』
🌀転売ヤーはYouTube観ていてもかなり危険と大損する事がある様です。センスと売れ筋を見る先見の目が大事なんだろうやね。
仕事は何やっても大変ですね。楽な仕事はなんやなと思う良い教訓映画でした。
🔵ややツッコミ所。
1️⃣『引越しするなら普通、事前に彼女に言うでしょ』★彡別れるならともかく。
2️⃣『後半はとんでもない展開に!ちょっと無理あると思うけど。みなさんはどう思います?』
★彡面白かったけどね。
カットの連なりが映画になる
昭和ハードボイルド
モサモサ銃撃戦NO1
主人公が真面目な転売ヤー
冒頭20分が面白すぎる
まず転売のチュートリアルから始まって、主人公の設定が一枚一枚めくれていく
バイトとかしてんかい
恋人いるんかい
転売業界に先輩いるんかい
転売ヤーって引越し業者にいうんかい
警察も知ってんのかい
みたいな
そしてある程度登場人物が出揃ってここからどうなるんだろうと思ったら銃撃戦になった
日本の演技派俳優がアッセンブルして銃撃戦するんかい
しかもモッサリした銃撃戦で緊迫感がまるでない
ベビワルだったら2分で片付いてる戦いを1時間くらいやってた
まあ一般人が拳銃持ったらこんなモサモサした銃撃戦になるか
僕は転売ヤーがしいたけと同じくらい嫌いなんだけど、ここまで酷い目に巻き込まれると可哀想に思えてきた
実力派俳優が薄っぺらい人の演技をしているのが好き
底のしょーもなさが見える悪役とか大好き
「神は見返りを求める」「さがす」に並ぶしょーもなさで最高!!!
出ている人は豪華。
ただただやばいやつたちが勢揃いしてました。
サイコパスだらけです。
一番最初にヤバさを感じたアシスタントに助けられますが、アシスタントもちゃんとサイコパスです。
ただの転売屋が最後には人殺しになってしまいます。
正当防衛にはなる形ですが、なんか結局最後までスッキリしない映画でした。
一体あのアシスタントがなんだったのかもわからないです。
地元の後輩の怯え方も異常だったのでアシスタントが相当やばいとはわかりました。
彼女もお金しか目当てじゃなかったのも、主人公が頼れる人はもうアシスタントしかいなくなってしまったような終わり方でした。
最後の方は撃ち合いばかりで荒野行動見ている気分でした。
んーーー。
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