「メッセージが強烈でした」モアナと伝説の海2 あしゅさんの映画レビュー(感想・評価)
メッセージが強烈でした
【まとめ】
モアナ1では無謀な少女の冒険譚だったものが2では葛藤を抱えながらも自分自身を見失わず伝説となるための英雄譚へと物語の変化が伺えます。
『モアナ2』は、一部では「内容が薄い」と批判されていますが、それは物語の焦点が「1つのテーマを繰り返し強調する」構成になっているためかもしれません。しかし、何度も繰り返すことでメッセージが強く刻まれ、観るたびに新たな発見がある「スルメ映画」です!!
【この作品のテーマについて】
この作品のテーマを一言で表すなら、「道を作る」ことだと言えるでしょう。ここでいう「道」とは、物理的な航路だけでなく、人々の歴史や選択によって切り開かれる未来のことも意味しています。
そしてメッセージは、「道はひとつじゃない。新しい道を作るには、恐怖に打ち勝ち、殻を破る必要がある」 というものに集約されるでしょう。
『モアナ2』では、このテーマを強く伝えるために、2つの重要な歌が登場し、さらに個々のキャラクターが恐怖に打ち勝つ場面が数多く描かれています。これにより、メッセージがより鮮明になり、観客の心に深く刻まれる構成となっています。
特に、「Get Lost」 と 「チーフ―!!」 の歌がこのテーマを象徴しています。
「Get Lost」は、モアナ自身の指針ともなる歌で、彼女が新しい道を見つけるための重要な場面で歌われます。個人的にも、この曲が大好きです。
【恐怖に打ち勝った人々】
『モアナと伝説の海2』では、多くのキャラクターがそれぞれの恐怖に向き合い、それを克服することで新たな「道」を切り開いていきます。このテーマは、映画全体を通して一貫して描かれており、登場人物たちの成長とともに強く印象づけられています。ここでは、彼らがどのように恐怖を乗り越えたのかを整理して見ていきます。
モアナの父:過去のトラウマを乗り越えた首長
モアナの父は、かつて親友を海で失った悲劇によって、サンゴ礁の外へ出ることを恐れ、モアナに対しても旅に出ることを禁じていました。しかし、モアナが前作で航海を成功させたことで、彼の価値観も変化します。
本作では、彼自身が恐怖を克服し、島の発展に積極的に関わるようになりました。そして、モアナの旅立ちを受け入れ、彼女を信じて送り出す決断を下します。この変化は、単なる個人的な克服ではなく、島全体の未来を切り開く大きな一歩となったのです。
シメア:別れの恐怖を超えた愛らしい妹
モアナの妹・シメアもまた、恐怖に打ち勝った人物のひとりです。幼い彼女にとって、姉であるモアナが旅立つことは、二度と会えなくなるかもしれないという不安を伴うものでした。しかし、彼女はその恐怖に負けることなく、貝殻を渡してモアナを見送ります。
この貝殻のシーンは象徴的であり、モアナが最後に海へ飛び込む決断をする際にも重要な意味を持ちます。シメアの勇気は、モアナの旅の「道」を示す大切な役割を果たしたのです。
モアナ:旅立ちとリーダーの在り方への葛藤
主人公であるモアナも、いくつもの恐怖を乗り越えます。
旅立ちへの恐怖
前作では家出同然に旅立ったモアナですが、本作ではより大人になり、大切な人たちと二度と会えなくなるかもしれないという現実的な恐怖と向き合うことになります。この葛藤は、劇中歌 Beyond によって表現されており、彼女の成長を感じさせます。
リーダー像への葛藤
旅の中でモアナは、自分が理想とするリーダー像――タウタイ・ヴァサのような強いカリスマを持つ存在――と現実の自分との差に悩みます。旅の序盤では、仲間たちを引っ張ろうと努力するものの、うまくいかず遭難してしまいます。
成長の瞬間
そんな彼女を奮い立たせたのは、マウイの「チーフ―!!」という言葉でした。この経験を通じてモアナは、リーダーとは必ずしも強く指示を出す存在ではなく、仲間の力を引き出す役割でもあると気づきます。彼女がこの気づきを得たことで、チーム全体の結束が強まり、モトゥフェトゥへと辿り着くことができたのです。
仲間たち:それぞれの殻を破る瞬間
モアナとともに旅をした仲間たちも、各々の恐怖に打ち勝ち成長を遂げました。
ロト(船大工)
ロトは慎重な性格の持ち主で、常に試作や準備を入念に行う人物でした。しかし、旅の中で彼女は「完璧な準備ができていなくても、今あるもので挑戦する勇気」を学びます。モトゥフェトゥを目指す際には、ぶっつけ本番でマストを倒して船を改良し、新たな航路を切り開きました。
モニ(伝説オタクの絵描き)
彼は旅の途中で死にかける経験をし、死の恐怖と向き合います。しかし、それを乗り越え、「君のおかげで僕は伝説の一部になれる」とモアナに伝えるシーンは、彼が恐怖に打ち勝ち、新たな自分の道を見出した瞬間でした。また、当初は憧れのマウイに引かれていましたが、旅を通じて彼との関係を築くことにも成功します。
ケレ(農家のおじいちゃん)
旅の序盤では、文句ばかり言っていたケレ。彼は「泳げない」ことを理由に海に入ることを拒んでいましたが、マウイを助けるために勇気を振り絞って海へ飛び込みます。これもまた、恐怖を克服し、自分の限界を超えた瞬間でした。
マウイ:己の恐怖を乗り越えた英雄
意外なことに、マウイ自身も恐怖を克服する場面があります。実は彼は泳げないのですが(これは前作の歌詞にも表れています)、モアナを助けるために何の躊躇もなく海へ飛び込みました。
この行動は、彼の成長を象徴するものです。かつてのマウイなら、自分の能力の範囲でしか行動しなかったかもしれません。しかし、今作では誰かを救うために自らの恐怖を乗り越え、新たな一歩を踏み出したのです。
まとめ:恐怖を乗り越えることで道が生まれる
本作では、登場人物たちがそれぞれの「恐怖」に直面し、それを克服することで新たな道を作っていく姿が描かれています。彼らの勇気ある決断が、航路を開拓するだけでなく、彼ら自身の成長へとつながっているのです。
「道はひとつじゃない。新しい道を創るには、恐怖に打ち勝ち、自分の殻を破ることが必要」というメッセージが、本作を通して強く伝わってきます。
【モアナは半神になった??】
モアナがご先祖の導きで生き返ったときに腕にタトゥーができました。マウイもタトゥーがあり、半神になったのではないかと思います。しかし、マウイとモアナでは半神の由来が違うので少しニュアンスが違うものだと考えられます。
マウイが半神になったのは彼のことを神が憐れみ与えられたものです。一方モアナは自分の行動の結果ご先祖から神の力を与えられています。マウイは半神となった後英雄となりますが、モアナは孤立した島々の人を繋げた英雄となった結果、半神となり伝説・神となるのでしょう。
【おわりに】
モアナの旅を通じて描かれる「道を作ること」、そして「恐怖を乗り越えて成長すること」というテーマは、観る人の心に深く響くものになっています。次に観るときは、ぜひキャラクターたちの成長や変化に注目してみてください!