劇場公開日 2024年12月6日

「嵐を甘くみるな」モアナと伝説の海2 蛇足軒妖瀬布さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5嵐を甘くみるな

2024年12月9日
iPhoneアプリから投稿

本作の最大の魅力は、
その視覚的な圧倒的な描写だ。

特に海、火、空、雲の描写は、
まるで本物の海水、炎、暗雲のようであり、
その美しさと力強さに圧倒される。

質感に関しては、
これまでのアニメーションでも最高のレベルに達しており、

まさに実写と比較すると「シンギュラリティ超え」と形容しても過言ではないだろう。
アクアマンに嵐を甘くみるな・・・と言われているようだ。

自然の暴力的な力を、
アニメーションならではの自由な表現で見事に再現している。

そのような圧倒的なビジュアルの力を目の当たりにすると、
ストーリーや演出とのバランスがどうであるかが気になるところだ。

その予算的なバランスがうまく取られていることに気づかされる。

つまり、視覚的なインパクトを前面に押し出すために、
ストーリーの複雑さや深さがあえて抑えられている。

映画全体の構成は、エンターテインメントのレシピに従っているものの、特にメインプロットの部分を上記のパフォーマンスと音楽で代用、
按分されているように感じた。

エンターテインメント作品における典型的なレシピを簡単に挙げると、
以下の4つの要素が挙げられる。

1、おもしろいストーリー(メインプロット)
2、仲間、家族との対立、葛藤(サブプロット)
3、コミュニティや社会問題の反映(場合によってはサブプロット)
4、聖なる物語の要素(セカイ系的要素、神や時空、輪廻転生、フォース、ニュータイプ等)

本作では、これらの要素がシンプルに、かつ効果的に配置されている。
効果的であるがゆえに薄味と感じる人も少なくないだろう。

特に、シークエンスごとに圧倒的な自然の描写が先行し、
(個人的にはココナッツグッズが欲しいよー)

物語の核心となる部分は比較的シンプルだ。

こうしたビジュアルの豪華さに注力することで、
ストーリーは多少簡潔にまとめられ、
複雑なプロット展開は避けられている。

結果的に、映画は視覚的な満足感を優先し、
ストーリーの深さや複雑さを少し控えめにしている。

それでも、サブプロットにおいては、
登場人物たちの成長や仲間との絆が描かれ、
社会的なテーマにもわずかながら触れている。

しかし、他の部族との関係やマタンギと〇〇との関係に関しては、
詳細には踏み込めていない。

尺の制限というか予算の制限がある中で、
これ以上の掘り下げはしない、
あるいは次回作で、
という方針かもしれない、
あくまで内容からの類推の範囲だが。

まとめると本作『モアナと伝説の海2』は、
視覚的な革新と自然の力強さに圧倒される一方で、

ストーリー面での深さに若干の物足りなさを感じる部分があると言える。

それでも、エンターテインメント作品としては、非常に高い完成度を誇っており、次回作には〇〇の悪辣ぶりが発揮されれば期待が持てるかもしれない。

蛇足軒妖瀬布