劇場公開日 2024年12月6日

「モアナはお飾りのプリンセスから脱却し、主人公に成れたのか?」モアナと伝説の海2 やまちょうさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0モアナはお飾りのプリンセスから脱却し、主人公に成れたのか?

2024年12月8日
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鑑賞方法:映画館

モアナ1は劇場公開時に拝見しました。前作はポリネシアの伝承や神話がベースになっており、現地のヒアリングも十分になされて制作されていたそうです・・・あくまで伝聞ですが。
海が大らかで優しい奴だったり、女神が心を抜かれて怒り狂ってたり、半神半人の太っちょが悪戯しながら暴れまわったり(笑)、アニミズムに根差した設定がまるで日本の個性的な八百万の神々みたいでとても親近感がありました。

モアナ2はそこから3年後、主人公モアナは19歳になってます。自身にはいつの間にやら可愛い妹もでき、島民は皆仲良く平和に暮らしている様が描かれてます。モアナは島民すべてから愛される存在で既にカリスマ化してます。マウイはどうもまた雲隠れしちゃったらしいですね。

そんな中、モアナが今目指しているのが外海の遠くまで旅にでて領土拡・・・じゃない、他の部族、島民を探して仲良しになるのが目的(?)とおもわれます。島民も領民獲・・・じゃない他部族との交流が悲願(?)だった様で以前からこれを目指しつつも失敗した過去(帰らぬ人に)があったようです。

前作では作物が育たなくなったり、魚がとれなくなったりと実害が発生し・・・島民の命運を背負ってというのが旅立ちの主な目的。

今回は、自身が目指すものと島民の悲願が合致して案外すんなりと渡航許可がでるのがとても不思議でした。「旅の失敗=帰らぬ人」・・・なのに娘にその大役をあっさり任せてしまう領主(モアナの両親)にはびっくり!既に一人娘じゃなくなったから・・というデズニーらしからぬゲスな想像はしちゃだめですね(笑)。

ただ今回の冒険のテーマが「人々が協力して、大きな力を発揮する」の様でして、モアナ船長の独断と偏・・・じゃないセンスの良い人選により旅の仲間が決まりました。ただこの3人+αが運も含めた生存能力は結果的にあったものの互いに協力できたかっつうと・・・かなり微妙なシナリオです。

絵描きの体格の良い男子は、巨木を難なく担ぐ剛力を匂わせつつ、船上ではウドの大木に成り下がり、死にそうになり、力技では活躍の場を敢えて与えない様なシナリオでちょっと可哀想でした。モアナと恋仲になる雰囲気は微塵もなさそうだし、彼も全くそんなの求めてないのは何か悪い力が働いているのだろうか?(笑)

そしてジジイに不得意分野で無理させてなにが楽しいのか。老体に鞭打ち酷使させるでなくもっと知識や知恵を使う機会を与えてやるのが老人に対してのリスペクトというものじゃないでしょうか。仮にコメディだったら相当な下衆な感覚で日本人には合わないです。

設計士の女子は今回の旅にはそもそも不適合で能力の高さが発揮されてなくてこれではただの変人の印象。また最後の船の改造は力学的にピーキーで論理的でないのは一般常識で分かりそうなもんです。

つまり旅の仲間の協力についてはモアナに対しての明確な助力になったとは思えず、結果大した物語も産まず、マウイは賑やかしキャラに格下げされ、モアナだけがチート化して神に近づく回でした。

不完全だったり弱点や欠点があるところが同じ人間として親近感が湧くし、それが実は主人公キャラには必須です。
前作は不完全な準主役キャラのマウイがこの役を担い、モアナと並立させることで良い感じでバランスをとってきました。

しかしマウイが脇役化し、仲間が助演できず、何だったら悪役も目立った活躍?をしない中で、モアナを単独主人公とする際にすべての能力値を上げすぎてチート化しちゃったのが本作。これではハラハラドキドキ感は半減しちゃうんですよね。いったい何を目指してるんだデズニー(笑)。

「憧れのプリンセス像」から、「肉体的、精神的成長が期待される主人公」に脱却するのは簡単そうで難しいですね。

とりあえず続きそうなので次回作に期待します!

やまちょう