「タイトルなし(ネタバレ)」不思議の国のシドニ りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし(ネタバレ)
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デビュー作の小説が日本で新たに翻訳・出版されることになったシドニ(イザベル・ユペール)。
はじめて日本を訪れる。
編集者の溝口健三(伊原剛志)が常に付き添ってくれる。
日本に着いたシドニは、いつからか不思議な出来事に出くわすが、それは亡夫アントワーヌの幽霊(アウグスト・ディール)が行っていたのだった・・・
といった物語。
京都や奈良、香川県の直島と風光明媚な場所が描かれ、観光映画の趣もある。
冒頭の「外国人から観た日本の習慣」はステレオタイプで、「この先、どうなっちゃうのかしらん」と一抹の不安も抱いたが、意外とテンポよく、おもしろく観られました。
幽霊の出没は、ひと昔前の日本的死生観のような気もするが、コロナ禍で撮ったと思われる観光客がほとんどいない風景には、うまく溶け込んでいました。
安易に「再生」という言葉は使いたくないのだけれど、「再生」という言葉が相応しい映画。
主役ふたりの後ろ姿を捉えた画や繰り返されるタクシーの中でのバストショットは小津映画へのオマージュか。
というより、一見、間延びしたようにみえてその実テンポがいいのも小津的。
悪くない。
終盤登場する静止画とオフからの音声処理のラブシーンは、『二十四時間の情事(ヒロシマ・モナムール)』へのオマージュか。
溝口健三の父が広島在という伏線もあったし。
鑑賞前は、ユペール&ホン・サンス『クレアのカメラ』、ビノシュ&河瀨直美『VISION』みたいな映画かしらん、と思ったもので、意外と好印象の映画でした。
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