「非寛容方式」ありふれた教室 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
非寛容方式
校長が何度も、言う。
この学校は《非寛容方式だから・・・》と、
だからどうすると言うのだ?
この言葉はメルケル首相の移民政策への当て付けなのか?
と、勘繰ってしまう。
その学校では、盗難が頻発して、見過ごせない所まで追い詰められている。
まず、カーラ・ノヴァク先生のクラスに、学年主任教師が乗り込んできて、
男子生徒の財布を机に出させる。
インド人のアリが大金を持っていて疑われる。
容疑は晴れるのだけれど、生徒たちに、学校への信頼が失われる。
これがこの映画の発端。
盗難は職員室でも頻発していて、カーラはこの生徒まで疑われる事態を
打開しようと、自分のPCに録画機能をつけたまま部屋を後にする。
数えておいた紙幣を入れた財布を、椅子の背にかけた上着のポケットに
忍ばせて。
すると事務職員のクーンの白いブラウスが写っていた。
上着に手を伸ばしている。
カーラが、問い詰めるとクーンは狂ったように否定する。
元々、生徒の出入りしない職員室から金品が盗まれるなら、
犯人が教職員と事務員以外は考えられない。
生徒を疑う前に教員室に防犯カメラを設置すべきでは無いのか?
そうすれば、少なくとも盗難の予防になる。
しかし映画ではカーラの盗撮が人権を侵害したとか、
生徒も父兄も大騒ぎして
学校の組織が揺らぐ程、秩序が崩れ落ちる。
それまでカーラ先生が培ってきた統一のとれた学級の勉学の秩序が崩れ、
先生を好きだった生徒たちは、怠惰で反抗的になり、学級崩壊の一歩手前。
クーンさんは、カーラ先生が一番期待していた優秀な生徒
オスカーの母親だった。
それにしても90%以上犯人だとの証拠があるのに、母と息子ともども
「盗んで無い、先生は嘘つき!!」と開き直れると、驚いた。
後半の緊迫感は半端なく、人が死ぬわけでも無いのに、サスペンス感は、
刑事物より、スリルがあったほどだ。
オスカーがラストで、暴れて庭に出され、ガラスを破って
カーラ先生のPCを奪い、追いかけっこになって、
「返しなさい!!」と迫る先生のパソコンを川に投げ捨てる。
それは証拠隠滅だから、オスカーが母親の盗みを実は認めているのは
紛れもない事実だ。
その後、オスカーは停学なのに授業に現れて、結果的に説得に応じず、
警察官に椅子ごと運ばれて、映画は幕になるのだが、
オスカーの姿は「誇り高き勇敢な騎士」のようで、
強者(つわもの)の誇り高き姿に見えてしまう。
嘘をついてでも守りたいプライドってなんだろう?
オスカーはカーラ先生が好きだ。
見応えのある攻防だった。
教育とは本当に難しい。