「【”教師の正義と生徒の正義。そして教師のアルゴリズムの間違い。”今作は、夫々の正義を貫こうとする態度が、学校内で様々な軋轢を生み出して行く様を描いたスコラスティックスリラーなのである。】」ありふれた教室 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”教師の正義と生徒の正義。そして教師のアルゴリズムの間違い。”今作は、夫々の正義を貫こうとする態度が、学校内で様々な軋轢を生み出して行く様を描いたスコラスティックスリラーなのである。】
ー 冒頭、カーラ・ノヴァク(レオニー・ベネシュ)が教鞭をとるドイツの中等教育機関ギムナジウムで、盗難事件が頻発する。
「非寛容」を謳う学校のゼロ・トレランス教育方針(どんな、方針だ!)により、教師たちはノヴァクのクラスの生徒を調べていく。
そんな学校の姿勢に対し、ノヴァクは反発し、自身の服の中に財布を入れたままパソコンの動画機能で、犯人を突き止めようとする。-
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・序盤から、教師たちは口調は丁寧だが盗難事件の犯人は生徒と決めつけ、犯人捜しをしていく。
・だが、そのやり方に疑問を持ったノヴァクは、パソコンの動画機能を使い自身の服から財布を盗む人物を撮ろうとするが、そこに映っていたドレスは同僚のクーンが着ている服であった。
ノヴァクは穏便に事を済ませようと、クーンに話しかけるが彼女は激昂する。ノヴァクはその動画を校長に見せるが、クーンは認めずに逆にノヴァクのやり方を非難する。
・その事実は、徐々に校内に漏れて行き、クーンの子である優等生であるオスカーは、クラスの友達から嫌がらせを受け、逆にその生徒を突き飛ばす。そして自宅待機になったクーン。
・クラス内の秩序も崩れ、ノヴァクは逆に精神的に追い込まれて行く。
■再後半のシーンは、何とも暗喩的である。オスカーは無理に学校に登校し、級友の好奇の眼がありながらも最後まで教室に残る。
そしてノヴァクが、且つてオスカーに”アルゴリズムの問題よ。”と言い”一面だけ揃えてあげたルービックキューブ”を、オスカーはノヴァクの前でいとも簡単に”全面を揃えて”机の上に置くのである。
このシーンは、ノヴァクのアルゴリズムよりもオスカーのアルゴリズムが優れている事を示している。
広義で言えば、教師のアルゴリズムよりも、生徒のアルゴリズムが優れている可能性があるという事を示唆しているのである。
ノヴァクは今作に登場する教師の中では、生徒想いの良き教師であるが、盗難事件の問題解決手順を間違えてしまったのである。
故に、校内に留まっていたオスカーが警官達に校外に運ばれる時に、彼は周囲を睥睨する王のように、警官達に椅子ごと持ちあげられ、学校を後にするのである。
<今作は、教師の正義のアルゴリズム<この場合、問題を解決するための手順と読み替えた方が良いであろう。>に基づき、盗難事件の問題解決をしようとしたノヴァクや教師達が、<問題解決の手順を間違えた事により>様々な軋轢や負の感情を生む怖さを描き出したスコラスティックスリラーなのである。>
<2024年6月30日 刈谷日劇にて鑑賞>
黄色のプリント生地の服を着たクーン(エーファ・レーバウ)は教師ではなく、パートの事務職員みたいでしたよ。しかも、オスカーの母親。親子で品性があまりよろしくない。下剋上ハラスメントの要素も感じました。モンスター親子に捕まった新米先生のアリジゴク。
この映画のジャンル。よくわかりません。不愉快映画。学校が舞台だし。わかりやすいホラー映画の方がずっと精神衛生的にいいですね。
落下の解剖学、関心領域、この映画と難しくて気持ち悪くて、NOBUさんのレビューも相変わらず難しいし、降参ですわ。あんまり共感してませんw