朽ちないサクラのレビュー・感想・評価
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「孤狼の血」がヘビー級なら本作はライト級。題材の扱いの軽さは気になる
映画ファンには「孤狼の血」シリーズの原作者としておなじみの作家・柚月裕子による警察ミステリ小説の映画化。「孤狼の血」では男の色気と暴力性をムンムンと発散し暴力団と対峙するベテラン刑事の主人公を役所広司が演じ、白石和彌監督が骨太な演出で危険極まりないダークな男の世界をヘビーに描いてみせた。
一方、柚月が2015年2月に発表した「朽ちないサクラ」は、県警の広報職員として働く森口泉が、親友の新聞記者・千佳が変死した事件の謎を独自に調べて背後にある闇に迫っていくストーリー。捜査権を持たない若い女性職員が、ベテランの男性刑事たちが幅をきかす昭和的な男社会の警察組織に属しながら謎解きの主人公になる点がユニークで、中高年男性のミステリファンだけでなく女性を含む若年層の読者も開拓する狙いがあったと推測される。
映画版でも、杉咲花が演じる泉は親友の死に責任と後悔を抱きつつ、元公安刑事の広報広聴課長・富樫(安田顕)や捜査一課長・梶山(豊原功補)の協力を得ながら、千佳の死、ストーカー殺人事件、そしてカルト宗教団体がかつて起こした毒ガステロ事件をつなぐ大きな闇に隠された真相に迫っていく。泉を手伝う若手刑事・磯川(萩原利久)が恋慕をほんのり漂わせたり、題にも含まれる桜の花を明るい印象で背景に収める画作りをしたりと、本作が長編2作目となる30代後半の原廣利監督による演出も(題材が暗く重いわりには)比較的ライトに感じられる。企画した製作陣もおそらく、警察ミステリ物の固定ファンだけでなく若年観客層の動員も期待して若手監督と若手人気女優を起用したのだろうと察せられる。
ただし、被害届受理をめぐる県警の不手際が問題視された桶川ストーカー殺人事件や、オウム真理教が起こした地下鉄サリン事件など、実際に起きた事件をモデルに架空の事件を複数こしらえて、まるで一つ一つをパズルのピースみたいに都合よくストーリーに組み込む姿勢が、個人的には引っかかる。現実の出来事に着想を得てフィクションを作ること自体に文句をつける気はないが、実際に犠牲者が出て、遺族たちや関係者らもさまざまな思いを胸に生き続けているはずの事件を、謎解きストーリーの“素材”のごとく軽々に扱うのはどうなんだろうと。扱うなら真摯に取り組むべき深く重い要素が多々あるはずなのに、表層的な部分だけさらっとつまんで物語に組み込んだような、配慮不足ゆえの“軽さ”が気になってしまうのだ。
杉咲花、安田顕、豊原功補という主要な3人の確かな演技に救われた部分は大いにある。そのうち2人が対峙する大詰めのシークエンスではそれぞれの目力に引き込まれるが、その場に不在のもう1人が真相を知ったらどんな反応をするのかも見てみたかった。
フェイク
杉咲花が演じてるからなんとなく誠実そうな人柄に見えるけど、絶妙に思...
映像的には、結構頑張っていて、センスも感じられる
監督が「帰ってきた あぶない刑事」の原廣利。
映像的には、結構頑張っていて、センスも感じられる。
ただ、このストーリーは、小説向きで映画に合わない。多分かなり忠実に映像化したのでは?
見ていて、具体的な映像で見せられると腑に落ちないところが多い。
特にラスト。小説なら、あの謎解きでいいだろうけど、映画には合わない。
そのほか、素人の主人公(ただの事務員)とベテラン刑事たちの連携もありえない気がする。
安田顕と豊原功補がよかっただけに残念。
特に安田顕は、ちょっと凄みがあった。
映画化には、もっと映画的な展開にストーリーを新たに作り上げる必要があったのでは?と思った。
杉咲花の無駄使いだった。
良い映画だった
正義について考えさせられた
新聞記者の女性、貴女は「コナン」なみの名探偵です。
ベストセラー推理小説の映画化のようです。原作未読です。
映画は、極めて私好みのシリアスな推理物の様相。警察内部の軋轢も描写して中盤迄は見応えを感じます。
ただ、オウム真理教宜しくのカルト宗教を出してから、徐々に微妙に。雑さや強引さに興ざめしていきます。
オウム真理教がそうであるように、テロ集団として特定されているのであれば、存続している意味が分かりません。
そんなテロ集団の施設に踏み込むのに、捜査課だけで踏み込むわけがありません。機動隊が周囲を囲み「蟻の這い出る隙もない」態勢を組むでしょう。
そもそも、公安がストーカー対応を止める理由が分かりません。「泳がせるために逮捕して欲しくない」のであれば、殺人を見逃せば元も子ありません。
犯罪を起こさせてそこから組織壊滅に繋げたいのであれば、その後の捜査体制に矛盾を感じます。
富樫が、新聞記者を殺す理由も分かりません。何の根拠もない想像段階の話です。上司や同僚と連携している可能性もあるなかで、安易な殺人を犯すとは思いません。もし、殺すなら唯一真相を知っている辺見の方を優先するはず。
例えば、「公安に戻りたい富樫の勇み足」「富樫自体が梯子を外されて殺される」等ならまだ納得感がありますが・・・あれでは公安が無能としか言いようがありません。
(大川原化工機事件を見ていると、本当に無能で黒い組織なんでしょうけど)
エピローグで、主人公が警察官を志望を宣言するシーンは、興ざめどころか薄ら寒くすら感じるシーン。この物語のどこをどうとれば、このエピローグに繋がるのか分かりません。
中盤までの高評価がウソのようなダダ下がりで、私的評価は極めて厳しめです。
コイツは面白れーぞ
「朽ちないサクラってどんな映画だっけ?」
「えっと…わかんない」
この作品を観る前の会話だ。劇場公開されたときも、配信にきたときも、そして観る直前も、何度もあらすじを読んだ。
なんかバラバラで繋がりを感じない出来事の羅列は文字情報だけでは全く頭に入らなかった。あらすじが間違っているわけではない。
あらすじに書かれていることは冒頭20分くらいまでの出来事だ。
全く理解できなかった出来事の連続は、観てみると驚くほどすんなり理解できた。ちゃんと関連性を持って滑らかに展開していく様子は不思議でもあった。そして没入感がすごいのだ。
同じ柚月裕子原作の「孤狼の血」を観たときと同じような緊張感に圧倒される。コイツは面白れーぞと。
物語はもちろん面白いのだが、キャストの迫力が一番の理由かと思う。
特に主演の杉咲花はかなり良かった。事件の真相に迫っていく過程で顔つきが変わっていっているようにすら感じた。
新聞記者殺害事件の終わりと、主人公泉の求める終わりは若干違う。そこは同じであるべきだが違う。違ってしまう。
泉は警察官ではないので、事件の捜査と泉の捜査は違う。
この違った2つの捜査が、一本のようでずっと分かれていることが物語を面白くさせている。
キャストの迫力と物語、2つの相乗効果で極上エンターテイメントに仕上がった。
それでも、前に進むしかない
信じた者たちの道
ひとつの殺人事件が警察の暗部をあぶり出す。
警察署の事務職として勤務する女性の目を通して、正しさという概念のあり方を問う。
それぞれの信じた道を進む者たちのあくなき戦いを観てる者は何を感じ何を求めるのか?を問われてる様に心を揺さぶられる。
タイトルのサクラは、、、
杉咲花、ハズレなし。この娘はきっと50,60,70になってもずっと上手い女優さんなんだろうなあ。ずーと観続けたい役者さんである。
ストーリーも新興宗教が絡んでいて、公安とのつながりやタイトルのサクラが公安の事だったり興味深い。警察官でない彼女のような仕事があることは知らなかった。けいじを目指すようなので慣れるといいな。それよりも公安に消されなければいいけど。
以前働いていた職場の近くで、杉咲花が撮影に来てるらしいよ、と話題になったことがあった。この映画だったんだ〜。そして泉が千佳と話していたレストランさんかい、懐かしい。若ーいころ、よく行きました。お値段安めでお金のない若者でも気軽に行けた。大人になってから行ってないので、今度また行ってみようかな。
桜の樹の下にはなにが埋まっている
タイトルに隠された意味とは?
なんか怪しいな、と思ってたら、やっぱりそうだったのか、
という展開を見せる作品でした。
全編、重いというか暗いというか、独特の雰囲気に包まれていて
最初、それが苦痛でしたが、終わってみると、
なるほどと納得するものがありました。重く、暗い結末ですものね。
原作があって、シリーズものだそうで、先に読みたかったな。
タイトルの意味が、途中で明かされるのですが、それには
気づかず、最後になってわかりました。なるほどね。
キャスティングもいいし、私は好きな作品です。
公安の人は、こういう映画をみると、どう感じるのだろうね?
そんなやわな人はいないだろうけど。
かなり分かりづらい
誰の正義が正しいのか
途中まではおもしろかった。 しかし、実行犯がカルト教団ということで...
黒い巨塔
導入部が少々入り組んでいるので、しっかりと把握・整理してから見た方がいいかもしれない。
愛知県で神職の男によるストーカー殺人事件が発生。
殺された女性は警察に被害届を出していたが先延ばしにされ、しかもその間に対応していた所轄の生活安全課は慰安旅行に行っていた事が発覚。
事件とスキャンダルで県警に抗議が殺到する中、広報課の泉は動揺。
スクープしたのは親友で地元新聞社の記者・千佳。泉はうっかり慰安旅行の件を千佳に話してしまっていた。
口止めはしたが記事になり、泉は千佳を疑う。千佳は否定。
その矢先、千佳が変死体となって発見される…。
親友の死、疑った事、それが原因で…? 罪悪感に駆られた泉は自身で事件を究明しようとするが…。
面白味と見応えの警察ミステリー!
最近出演作にハズレが無い杉咲花、円熟の渋みを魅せる安田顕、口は悪いがカッコいい豊原功補…。キャストのアンサンブル熱演。
監督は『帰ってきたあぶない刑事』でデビューした原廣利。同じ警察ものでも、あちらは娯楽アクション、こちらはシリアス。器用さとじっくりとしたミステリーとドラマを見せる。
だけどやはり、話が面白い! 『孤狼の血』の柚月裕子原作の賜物。
泉は同期で同所轄生活安全課の磯川と調べ始める。
事件当日の千佳の足取り。離れた場所への謎の行動。
人間関係。千佳が亡くなってすぐに磯川の元同僚女性・百瀬が解雇された後に自殺していた事が明らかに。
百瀬は磯川の上司・辺見や千佳の上司のデスク・兵藤と関係あった。辺見は突然退職。千佳はその事を突き止め…。
この事から、リークしたのは百瀬と兵藤と辺見である事が濃厚になり、千佳の疑いは晴れた。
では、何故千佳は殺された…?
もう一度千佳の足取りを洗い直す。当日の謎の行動。やがてそこで掴んだのは、かつて日本中を震撼させた大事件との関与…。
カルト宗教団体による地下鉄毒ガス事件。(モデルは言うまでもなくアレ)
泉の上司で元公安の富樫はこの事件に責任が。
事件が起こる前から情報を掴み教団をマーク。その時教団内でリンチ事件を目撃し、被害を受けていた信者を助ける。警察にマークされていた事を知った教団は計画を早めた。
たった一人の信者を助けた事で、大勢の犠牲が…。
さらに調べていくと、事件の発端の神職の男は元信者。
千佳殺しの最有力容疑者も浮上し、その男も元信者で、出戻り。かつて富樫が助けた信者であった。
その事を知っていた辺見、その事を突き止めた千佳、再び過去の事件と対峙する富樫、真実に近付いていく泉…。
そして遂に辿り着いた真相は…。
泉は広報課の職員で、刑事ではない。捜査権の無い者が事件を捜査するのは警察ミステリーの十八番。
ただただ親友の無念を晴らす為。
それが過去の大事件や巨大組織の闇と繋がっていく…。
これも警察ミステリーの十八番。事件の真相には、警察の暗部。
警察ミステリーで必ず描かれるが、決してフィクションではない。現実世界でも警察の不祥事は事欠かない。汚職、隠蔽、冤罪…。
本作の場合、公安。警察の陰の組織や日本のスパイのような存在に思われ、描かれる事が多い。
秘密や謎、よく知らぬ事も多い。
同じ警察組織でありながら、全く違う。警察は人々の為、公安は国の為。
例えそれに人の命が関わっていたとしても…。
もし、それに近付いてしまったら…? 糾弾しようとしたら…?
手段は選ばない。
たった一人の命か、百の命か。
命の重さや数を天秤に架けるなどそもそも間違っている。
それは分かっているが…。
断固として貫く正義も。千佳であり、泉。
が、綺麗事では国を守れない黒い正義。
今も身を置いている者。かつて身を置いていた者。
公安のスパイ=“S”。意外なその人物。指示を出していたまさかの人物…。
言葉巧みに誘導。穏やかだったその顔が恐ろしく見えてくる。演者の巧演。
何人たりとも立ち入る事は出来ない。この“黒い巨塔”に。
タイトルの“サクラ”とは公安を意味する。
だからタイトルは皮肉でもある。“朽ちないサクラ”は“朽ちた正義”。陰の組織は変わらない。
本当に変わらないのか、変えられないのか…?
人一人の信念は変わる。
広報課を辞め、刑事を目指す泉。
新たな事件や“黒い巨塔”に立ち向かっていく様を、是非シリーズ化を!
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