「呆れ果てて何も言えないが、ナマケモノよりもモブキャラの顔の方が怖かったような気がする」キラー・ナマケモノ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
呆れ果てて何も言えないが、ナマケモノよりもモブキャラの顔の方が怖かったような気がする
2024.4.30 字幕 T・JOY京都
2023年のアメリカ映画(93分、G)
女子寮のマスコットキャラが実はヤバかった系のアニマルパニック系ホラーコメディ
監督はマシュー・グッドヒュー
脚本はブラッドリー・フォウラー
原題は『Slotherhouse』で「屠殺場」と言う意味
「Sloth」はナマケモノで、ある種のダブルミーニングになっている
物語は、パナマにある川沿いにて、密猟者(Milosh Klipic&Milan Todorovic)が野生のナマケモノを捕獲するシーンが紡がれて始まる
そのナマケモノは海を渡り、アメリカのとある街のペットショップのラインナップに入ることになった
そのとある街の女子寮では、ソサエティ「シグマ・ラムダ・シータ」の次期会長選が控えていて、有力候補のクイーン・ブリアナ(シドニー・クレイブン)は、手下たちに選挙対策をさせていた
昨年役員だったダコタ(アナマリア・セルダ)は使い物にならず、絶望的なファッションのモーガン(キャディ・ラニガン)、無口なビジュアル担当アリッサ(ティアナ・ウプチェヴァ)たちが対策に追われていた
選対の中枢は本部長のガビー(ミリツァ・ヴルジッチ)が担い、参謀のクロエ(グレイス・パターソン)が脇を固めていた
そんな彼女を羨ましく思うエミリー(リサ・アンバラナール)は、母親がソサエティの会長を務めていたこともあり、その華やかな世界に入りたいと思っていた
だが、ブリアナの取り巻きの圧力は相当で、インスタのフォロワー数でも圧倒的な大差をつけられていた
エミリーには親友のマディソン(オリビア・ルーリエ)がいて、柔術をこよなく愛するゼニー(ビアンカ・ベックルズ=ローズ)とも仲が良かった
3年生になり、新しい部屋に移動したエミリーは、窓下の学生たちを見下ろしながら、何とかしてブリアナの牙城を崩せないかと思いを巡らしていた
ある日、ショッピングモールにて、ペットショップの犬を捕まえたエミリーは、その場にいた怪しい男・オリバー(Stefan Kapicic)から「ナマケモノを飼わないか」と打診を受ける
寮ではペットを飼うことを禁止されていたが、過半数の支持があれば「マスコット」を置くことができる
ブリアナの急速な支持拡大に焦りを見せたエミリーは、禁断の手を使って、彼女に対抗するためにナマケモノを飼うことに決めたのである
と、映画では、女子寮のパワーバランスの状況が延々と描かれ、ナマケモノ「アルファ」が寮を訪れるまでに時間がかかる印象
アルファは人間並の知力を備えていて、スマホをイジってSNSに投稿したり、PCでウェブニュースをググったり、ついでに車まで運転してしまう
このあたりのぶっ飛び加減を許容できるならOKで、とにかく「真剣にふざけている映画」となっていた
アルファはどう見ても人形に見える造形で、頑張って動かしているんだろうなあ感が滲み出ている
キャラの行動にそこまでのアホっぽさはないものの、無駄なコミカルシーンが多く、怖さはまったく感じないつくりになっていた
かと言って、そのコメディシーンが面白いかどうかは微妙で、苦笑もしくは失笑という感じのノリになっているように思えた
主人公サイドの友人たちは生き残り、ライバル陣営はブリアナ以外は全滅という可哀想な顛末になっているが、1年後に「何もなかったかのように和解している」のは意味がわからない
死闘を生き抜いた盟友という感じなのだろうけど、随分と軽い世界だなあと思ってしまった
いずれにせよ、アニマルパニック系のおふざけ映画なので、真面目に突っ込んだら負けの映画になっている
このライトでポップで悪趣味なノリを楽しめるかどうかにかかっているが、映倫区分Gが示す通り、ホラー描写はほとんどない
殺戮シーンも「見えないところ」だし、その辺に転がっている死体を見つけては飛び上がってびっくりするぐらいしかないので、期待値は低めに設定しても潜ってくるのではないだろうか
個人的には呆れ果てていたが、眠くならなかったのは評価できるのかもしれません