「低評価になるのは否めないが、意味不明な映画に意味を見出したい人にとっては面白いのかもしれません」No.10 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
低評価になるのは否めないが、意味不明な映画に意味を見出したい人にとっては面白いのかもしれません
2024.4.17 字幕 アップリンク京都
2021年のオランダ&ベルギー合作の映画(101分、G)
ある舞台俳優が謎の男からの囁きによって、自分の出自と向き合うことになるミステリー映画
監督&脚本はアレックス・ファン・バーメンダルム
原題は『Nr.10』、「No.10」のこと
監督の長編10作目という意味「らしい」
物語の舞台は、ドイツのとある町
舞台俳優のギュンター(トム・デュイスペレール)は、演出家カール(ハンス・ケスティング)の舞台に参加しつつ、彼の妻イサベル(アニエック・ファイファー)と不倫関係にあった
彼にはリジー(フリーダ・バーンハード)という成人の娘がいるが、彼女は父の誕生日のサプライズのために、舞台の裏手から侵入し、父をずっと撮影していた
舞台には、妻レナーテ(Harriet Stroet)の看病でセリフが覚えられないマリウス(ピエール・ボクマ)、マリウスと夫婦役を演じるエルサ(Liz Snoyink)、彼らを見守る友人役のパウル(Alexander ElMecky)がいて、小道具係のビコ(Jan Bijvoet)、カールの助手マリー=ルイーズ(Kim Karssen)で作り上げている
マリウス、エルサ、パウロ、ギュンターはいつも車を乗り合わせて稽古場に向かい、イサベルは息子フレタの原付バイクを借りて移動していた
だが、バイク移動はギュンターとの密会のためであり、ある日、そのことにマリウスが気づいてしまう
マリウスはカールにその関係を暴露し、その裏を取ったカールは、ギュンターに露骨な嫌がらせを始める
主役はマリウスに交代し、プロンプター(セリフを表示する機械)を床に仕込んで公演を行うのだが、本番当日、ギュンターはそこに忍び込み、劇の最中にマリウスの足に釘を刺して、全てを台無しにしてしまうのである
と、前半はほぼこんな感じの不倫ドロドロ劇が展開されるのだが、後半は「完全なるジャンルチェンジ」が起こってしまう
前半の途中でギュンターに謎の言葉をかける男(のちにブレスラウアーと判明、演:Stjin Van Ospal)は、ヴァシンスキー司教(ダーク・ベーリング)の命令で動いている男で、ヴァシンスキーとの連絡係として、イノセンス(マンデラ・ウィーウィー)という司教総代理がいる
彼らは、ある計画のためにギュンターを監視していて、その目的は「船」に彼を呼び込むためだった
これ以上書くと完全ネタバレになってしまうので避けるが、思ってもみない方向に映画が動くというのは間違いない
この展開を面白いと思える人もいれば、あまりにも唐突に話が変わっているので、何を見せられていたのかわからずに呆然とする人もいると思う
映画のテーマを端的に挙げるなら「人類にとって必要なもの」という感じになっていて、ギュンター以外の「同乗者(物)」は「放出」されてしまう
このあたりにメッセージ性が隠されているのだが、言及するとアレなので、興味のある人は何の知識も入れずに観た方が、その意味が理解できるのではないだろうか
いずれにせよ、レビューを書くのが大変な映画で、ネタバレにふれずに書くのは無理だと思う
映画は、何が起こったかよりは、何を残したのかに着目すると、テーマというのがわかりやすく、無関係に思える前半も「後半に残すもの」との明確な違いを描いていることがわかる
前半に登場するのが、いわゆる人間の醜い部分であり、どのキャラクターも自己中心的に動いている
その成れの果てがギュンターの前半の行為に集約されているので、あれが「トリガー」になるというのは、彼自身が不要なものを全て捨てることになったから、とも言えるのだろう
とても歯切れの悪い文章になっているが、観た人は何となく書いている意味がわかると思うので、自分の中だけで消化して楽しんでいただければ良いかな、と思った