余命一年の僕が、余命半年の君と出会った話。 : インタビュー
永瀬廉&出口夏希、“誰かのために”が原動力 語り合った、かけがえのない20代の過ごし方
Netflix映画「余命一年の僕が、余命半年の君と出会った話。」で初共演を果たした永瀬廉(「King & Prince」)と出口夏希。命に限りあるふたりが、相手を思いやりながら日々を輝かせていく姿をみずみずしく演じ、観る者の心を震わせる。まぶしいほどの恋物語に身を投じ、「今を全力で生きたいと思った」と声を揃えた永瀬と出口。撮影を振り返りながら、名シーンの裏側や自身の原動力までを笑顔いっぱいに語り合った。(取材・文/成田おり枝、写真/間庭裕基)
●秋人のやさしさ、春奈のひたむきさ……役柄に「ぴったりでした」と惚れ惚れ
原作は、森田碧氏によるベストセラー小説「余命一年と宣告された僕が、余命半年の君と出会った話」(ポプラ社刊)。Netflix作品初参加となった永瀬が、突然余命を宣告され、いろいろなことを諦めながら淡々と日々を過ごす中で、運命の恋に出会うことで再び人生に希望を見出していく主人公・早坂秋人役。出口が、ヒロインの桜井春奈役を演じた。永瀬と出口が、キャラクターの健気で一途な生き様を体現。悲しいだけではなく、温かな余韻の残る映画として完成した。
――それぞれに余命を宣告されていることがわかるタイトルも、目を引きます。タイトルや脚本を読んだ感想を教えてください。
永瀬:タイトルには余命が書かれているけれど、「どちらかに奇跡が起きるのかな」「どうやって生きていくのかな」といろいろな想像が膨らんで、結末がすごく気になる作品だなと思いました。脚本を読ませていただくと、悲しいだけではなく、秋人と春奈の姿から高校生ならではのピュアさやまっすぐさが感じられて。文字からも美しい映像が浮かんでくるようで、ものすごく惹かれるものがありました。ふたりがとにかく、まぶしかった……! 僕が秋人を演じることができるなら、ぜひやらせていただきたいなと思いました。
出口:タイトルからも「どういうお話なんだろう」と気になって、原作をまず読ませていただきました。そうしたらものすごくステキなお話で……。また私は三木(孝浩)監督の映画が大好きで、三木監督とご一緒できることもとてもうれしかったです。不安はひとつもなく、「早く撮影に参加したい!」とそわそわするほどでした。
――自らの病を隠し続け、春奈のために生きようとする秋人のやさしさ。余命を宣告されながらも、秋人の前で天真爛漫な笑顔を見せる春奈。永瀬さんと出口さん、ご自身の持つ魅力が注がれたからこそ、鮮やかなキャラクターが映し出されたように感じます。お互いの目からご覧になって「演じる役にぴったりだ」と思うことはありますか?
永瀬:“でぐ”(出口)は、三木監督から「『本当にこの子は死んじゃうのだろうか』というくらいバイタリティのある子として演じてほしい」と言われていたそうなんですが、“でぐ”自身もすごく活発なタイプだなと思います。写真を撮る時には、絶対にギャルピースしますから!
出口:してない、してない! 永瀬さんのほうがギャルです(笑)!
永瀬:こうやってすぐに突っ込んでくれるんですよ(笑)。明るいところも、春奈にぴったりですよね。それでいて春奈のはかなさも見えてくるので、僕は常に「春奈だな」と思いながら“でぐ”を見ていました。彼女が演じる春奈を受けて、僕も秋人として生きることができたなと思っています。
出口:永瀬さんは、声がとてもステキですよね。
永瀬:ありがとうございます!
出口:秋人くんって、やさしさの塊のような人だと思うんですが、永瀬さんの柔らかな声からも秋人くんのやさしさが伝わってきました。特に秋人くんと春奈が電話越しに会話をするシーンは、それをとても実感して。映画を観ている方も、「秋人くんはこういう声だ」とすごく納得されると思います。あと永瀬さんは、スタッフさん誰にでもやさしく接して、皆さんと仲良く過ごしていたのが印象的です。周りが見えていて、「大人の方だな」と感じました。
永瀬:25歳だからね。もうギャルではいられないよ(笑)。
●ハンカチ必須の“おんぶシーン”、撮影の裏側とは?
――主演として作品に入る時には、座長として心がけていることがあるのでしょうか。
永瀬:それは意識しないようにしています。「座長だ」と意識してしまうと肩の荷が重くなってしまうような気もして。座長としてやるのは、差し入れをきちんとすることくらいです(笑)。僕は一緒にお仕事をしてくれる方と「いかに楽しむか」ということに重きを置いて、そういった姿でみんなを引っ張っていけたらいいなと思っています。スタッフ、キャストのみんな、仲がいい方が絶対にいい作品ができるはず。いつもそんなふうに考えています。
出口:私はクランクインした1日目から、永瀬さんは「頼りになる」と感じて「引っ張っていってもらおう」という気持ちでいました。自然と笑顔になれるような、とても楽しい撮影現場でした。
――お互いの温もりを感じて涙するシーンも、印象に残っています。おふたりが思い出に残る涙のシーンがありましたら、教えてください。
出口:秋人くんと春奈のシーンも大好きですが、秋人くんが取り持ってくれたことで、春奈と友だちである綾香が再会できたシーンには、ものすごくグッときました。あのシーンを演じたこともあって、綾ちゃん役の横田真悠ちゃんとはとても仲よくなって。抱きしめながら「愛おしい」という感情が湧いてきました。
永瀬:あのシーン、すごくいいよなぁ。映像にこそ映っていませんが、ふたりが抱き合っている時に、僕は病室のそばで「よっしゃあ!」とガッツポーズしていました。秋人の気持ちになると、もう他人事ではない。「春奈のために」と行動を起こしていく秋人にとっても、とても大事なシーンだったなと思います。
――海で、秋人が春奈を背負うシーンも感動的でした。
永瀬:あのシーンは、奇跡的な瞬間だったなと思います。あの瞬間だけ、夕焼けと雲、太陽のバランスが最高にきれいで。
出口:夕焼けも、すべて本物です。みんなで力を合わせて、時間と戦いながら撮ることができたシーンですね。
永瀬:そうだよね! 海沿いに辿り着くまで、実は秋人が春奈をおぶって砂浜を走るシーンを何カットか撮っているんです。でもひとつも使われていなかった(笑)! 車椅子を降りて少し歩き出したら、すぐに夕焼けを見る場所に着いていたよね。
出口:たしかに!
永瀬:でも、そういう積み重ねも大事だったなと思って。秋人はそうやって春奈をおぶって、一緒にあそこまで辿り着いたんだなと感じながら観てもらえたら、すごくうれしいです。
出口:あの場面で春奈は「私も恋してみたかったな」と言うんですが、本当だったらこれから恋やオシャレを楽しんでいく年頃ですよね。そう考えるととてもせつないけれど、観終わった後には「春奈は幸せだったんだろうな」と感じることができる映画になったなと感じています。私自身、限られた時間を生きている春奈を演じたことによって、より周囲の人や時間を大事にしたいなと思いました。
永瀬:本当にそうだね。僕たちが過ごしている日常って決して当たり前のものではないし、いつ何が起こるかは誰にもわからない。だからこそ日々を大切に、自分のことを大切に思ってくれる人にきちんと感謝を伝えながら生きていきたいなと思いました。そうすることで、後悔しない人生を送れるような気がしています。
●永瀬廉、ファンに感謝! 「明日へと向かうパワーをもらっています」
――秋人は、春奈と出会うことで生きる希望を見出していきます。おふたりにとって「誰かのために」と思うことで、より力を発揮できた経験はありますか?
永瀬:小学校5年生の時に、マラソン大会があって。男子と女子に分かれて走ったんですが、男子が100人くらいいる中で、練習では可もなく、不可もなく、真ん中くらいの順位でした。でもいざ本番の日になって男子だけで走り出した時、グラウンドで女子たちがめっちゃ応援してくれたんですね。「頑張れー!」って。「みんなのためにも頑張らないと」と思ったら、3位になりました! 女の子の声援の力で、3位になったんです。これ、すごくない!?
――そう考えると、今のお仕事でもファンの方の声は力になりますか。
永瀬:まさにそうです! ライブなどでファンの方から歓声を浴びることで、次の仕事や明日へと向かうパワーをもらっています。小学校5年生の頃から、アイドルみたいな感覚があったのかな(笑)。
――出口さんは、いかがでしょうか。
出口:このお仕事を始めて、そう感じることが増えています。ドラマや映画などの撮影をしていると、「うまくできないな」とくじけそうになることもあって。でも周りのスタッフさんやキャストさんがやさしくしてくれて、皆さんが作品に向かっている姿を見ると、「このままじゃダメだ。私も頑張ろう」という思いが湧いてきます。「作品を楽しみにしている」と応援してくれる家族やファンの方の存在も、とても大きいですね。自分だけだったら、私はすぐに諦めていたと思います。秋人くんも同じで、自分ひとりだったとしたら、後ろ向きになってしまっていましたよね。
永瀬:そうなんだよね。人ってやっぱり自分のことよりも「誰かのために」と思うと動くことができたり、一番力を出せたりするんだなと感じるね。
――ファンの方の声を受け取ったり、作品の反響を耳にしたりすることができるのも、おふたりのお仕事の魅力だと言えそうです。秋人と春奈は17歳というかけがえのない瞬間を、一生懸命に生きようとします。おふたりは20代をどのように過ごしたいですか。
永瀬:1年って、本当にあっという間だなと驚きます。今年を考えてみても、もう半分以上が過ぎていますから。だからこそ、ひとつひとつ全力で、悔いのない仕事の向き合い方をしたいです。自分のやりたいことをしっかりと考えて、仕事とプライベートのバランスを取ることも大事だなと思っています。また僕の仕事でいうと歌ったり踊ったりすることもあるので、こんなに身体が動くのは20代だけかなと感じることもあって。年齢を重ねるごとにきっと足腰にも影響が出てくるけれど、30代にはその年齢だからこそできることもあるはず。今しかできないことを積極的に見つけて、チャレンジしていきたいなと思っています。
出口:私は自分らしさを忘れずに、思うままに楽しく20代を過ごしていきたいです。いろいろなことに立ち向かわなくてはいけないお仕事で、「自分はこのままでいいんだろうか」と考えることもありましたが、やっぱり自分らしくいるのが一番だなと感じています。
――たしかに作品や役柄を通して、いろいろな挑戦をすることになるお仕事ですね。「舞妓さんちのまかないさん」のお芝居もとてもステキでした。
出口:ありがとうございます! あの役柄は、話し方も含めて自分とは真逆のようで。自分とはまったく違う人になれるのも、とても面白いことだなと思っています。そういった意味では、春奈は自分に近い存在かもしれません。無邪気に「あはは!」と笑う表情も、等身大の姿を見せることができたのかなと感じています。
「余命一年の僕が、余命半年の君と出会った話。」はNetflixで独占配信中。