「ポゼッションを手本に」オーメン ザ・ファースト 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)
ポゼッションを手本に
シャマランが製作や演出に関わっているServant(サーヴァント ターナー家の子守)というAppleTV+オリジナル作品にNell Tiger Free(ネル・タイガー・フリー)という変わったなまえの女優がでていて、惹かれた。
10代から女優をやっていてゲーム・オブ・スローンズにも出ているそうだが、じぶんが見たのは初めてだった。
サーヴァントじたいはどうしたいのかよくわからないドラマで、そのレビューに『おそらくシャマランが「つぎはどうしよっかなあ」とか掌(たなごころ)で転がしながら、もてあそんでいるようなドラマ』と書いたが、Nell Tiger Freeの神秘的な魅力にひきつけられた。
そんなわけでNell Tiger Freeが主演する映画が来たら見たいと思っていた折に、オーメンの新作告知があり、主演がNell Tiger Freeだった。
オーメンはエクソシストに並ぶ古参のフランチャイズだが、本作The First Omenはブラッシュアップされていた。
話は1976年の初作The Omenの前日譚になっていて、さいごのほうでグレゴリーペック(の写真)も出てくる。
監督のArkasha Stevensonは女性で、本作が初長編だという。ストーリーはオーメンゆえなんてことはないが、Nell Tiger Freeが正に迫真の演技というやつで、すごい迫力だった。映画の雰囲気もよかった。
imdbにあるインタビューBurning Questions With Nell Tiger Freeで、Nellは内幕を語っている。
インタビューで興味深かったのは、悪魔に取り憑かれた演技をさせるにあたってArkasha Stevenson監督がNellにポゼッション(1981)のイザベル・アジャーニの演技を見せた──という件(くだり)。
振付も演技指導もしないで、狂乱するイザベルアジャーニの姿を見せた──とのこと。
Nellは「この映画を見ればArkashaに頼まれたら文字通りなんでもやっていることがわかるだろう」と言い、なりふりかまわず振り切った撮影を語っている。監督との信頼関係や熱演の裏側がわかるインタビューだった。
よくある想像と現実のギャップだが、映画女優というものは作品の中に住んでいる。Nell Tiger Freeならばサーヴァントや本作の中で見た、神秘的な雰囲気をまとった物静かな女性だ。
しかし(当然のことだが)役柄上そう振る舞っているに過ぎない。インタビューでは、明るく饒舌で庶民的な人だった。
顧みればそれは女優全般に言えることで、神秘的というのはなく、誰だってサタデーナイトライブのロールを演じることができる。わけである。
imdb6.5、Rotten tomatoes82%と70%。
ところでじぶんはズラウスキーのポゼッションがどうのこうの──と言うことがあるのだが、じつはポゼッションを見ていない。都市圏に住んでいたら度々リバイバルするようなカルトだと思うがあいにく地方住まいだし、思い出すたびストリーミングサービスで探すが配信されているところはない。
予告編やYoutube等で断片を見ていて、さも演技に「ポゼッションのイザベルアジャーニ基準」があるかのように言うことがあるが、じつは未見です──という話。w