劇場公開日 2024年4月5日

「ホラーの本質が分かっていない」オーメン ザ・ファースト アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0ホラーの本質が分かっていない

2024年4月5日
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鑑賞方法:映画館

字幕版を鑑賞。1976 年公開の「オーメン」の前日譚で、ダミアンが誕生するまでが描かれている。「オーメン」は続編が二作作られて完結しているが、そもそも何故ダミアンが誕生したのかは謎のままだった。オーメンの第一作の恐怖は今でも語り草になっているほどで、CG もなかった時代に非常に秀逸な雰囲気を作り、心臓が飛び出すかと思わせられるほどのショックなシーンが沢山あった。

約 50 年ぶりにあの雰囲気が味わえるのかと思って期待して見に行ったのだが、残念ながら非常に肩透かしだった。この女性監督は、ホラーというものの本質が分かっていない。不快で汚いだけのものはホラーとは言えない。後で思い出してもゾッとするような恐怖がホラーの本質であり、人智を超えた悪意に満ち、見た目が怖く、説明不能で、理不尽で、見る者に当事者感を与えられなければホラーは成立しないのである。

前作が折角謎としていたダミアン出生の秘密とその計画者をこの映画は説明してしまっているのが何より頂けない。説明されてしまえば陰謀の一つに過ぎなくなってしまって怖くはなくなるのである。キリストを認めなければ反キリストは怖くないし、反キリストを生み出せば人類が皆熱心な信者になるなどという能天気な話では到底計画を進めるべきではない。それに、最終的に反キリストを倒せる者も用意していなければ、消火器も用意せずに放火をするような間抜けな話になってしまう。

ダミアンを産ませるための少女をまず誕生させるというのは手間がかかりすぎるのではないか?どうせならいきなりダミアンを産ませた方が早いに決まっている。その試行を振り返るあたりの話は「エイリアン4」の既視感が感じられて鼻白む思いがした。女性監督ならではの視点で、自分がされたら嫌だと思うことを並べたような感じだが、どうもそれがホラーの本質と勘違いしているようである。

前作では秘密に近付く者が不思議な力で悲劇的な最期を迎え、その予兆のようなものまで示されていたのに、今作では必要のない死亡や負傷ばかりで、人智を超えるものによるおぞましい死というものではなく、自殺だったり交通事故だったりと、互いの関連が薄いものが立て続けに起こっているだけという印象が拭えなかった。特に、あの修道女は何のためにあんな最期を迎えたのかは全く説明不能ではあるまいか?ミスディレクションを演出するためだけにあんな真似をしたのなら完全に命の無駄遣いであろう。

音楽もピントがはずれてばかりで、ジェリー・ゴールドスミスの書いた前作のテーマが流れるまで、全く聞くべきものがなかった。ホラー映画で音楽の効果は絶対的なものがあるはずなのに、一体何をしているのかと不満が募った。これで良しと監督が納得したというのであれば、この監督は音楽の素養も全く持ち合わせていないとしか思えない。

もっといくらでも恐怖を演出する方法はあるだろうにという満たされない思いが終始頭から離れなかった。ホラーとお笑いは紙一重で、一歩間違えると爆笑を生んでしまう。試作品を作る度に「悪魔さん、宜しくお願いします」とか頼んでいたとしたら大爆笑ものである。そもそも、頻繁に悪魔が呼び出せるなら、子供なんか作らせるより、本人に暴れて貰えば良いではないか。この映画は爆笑を生むほど酷くはなかったが、汚れた画面を見せればホラーだとでも思ってるらしいのがホントにやり切れなかった。
(映像3+脚本1+役者3+音楽1+演出1)×4= 36 点。

アラ古希