「“推し”の世界を垣間見る」【推しの子】 The Final Act 泣き虫オヤジさんの映画レビュー(感想・評価)
“推し”の世界を垣間見る
原作を全く知らないのに、観る気になったのはポスターの齋藤飛鳥に目が留まったから。乃木坂46は年1回大晦日の紅白で観ていたくらいで、白石麻衣には全く興味は無い。 唯一齋藤飛鳥だけはちょっと興味を持っていた。歌っているところは「見たことがない」に等しいが、映画“あの頃、君を追いかけた”で初めて観たときに「お、ちょっと可愛いな」と思い、“映像研には手を出すな!”で見せたとぼけたキャラではちょっと非凡なものを感じた。 以後の映画出演作には気を留めていた。 今秋のTVドラマ“ライオンの隠れ家”でもいい癒しだと思いながら毎週観ていた。
劇場版の前段のドラマとしてPRIME VIDEOで配信されていることを知り、仕方ないので急遽プライム登録して、全部観賞、準備万端で臨んだ。
【物語】
医者のゴロー(成田凌)が勤める病院に入院中のる少女さりなはアイドルグループB小町のアイの熱烈なファンだった。ゴローにアイについて様々教え、ライブに行くことを強く願っていたが、その願いは果たされないまま彼女の命は果てる。
その後ゴローはアイの熱烈なファンになっていた。ある日田舎の病院で産婦人科医となっていたゴローの目の前にアイが現れる。しかも妊娠していることを告げられ、ゴローは驚愕する。しかし、極秘入院したアイが無事に出産を乗り切ることに気持ちを切り替える。 いよいよ出産が間近に迫ったとき、病院に不審な人物の侵入が有ったと連絡を受ける。アイを着け狙う輩あと察知したゴローは彼女を守るためにその人物を追う中、山中で転落してあっけなく命を落してしまう。
ところが、ゴローとさりなはその日産まれたアイの双子の子、アクアとルビーとして、前世の記憶を持ったまま生まれ変わる。 アイドルと母親二刀流をこなすアイに2人は育てられるのだが、わずか数年後にアイは謎の男に殺害されてしまう。アクアとルビーはアイを死に追いやった男への復讐を胸に成長し、俳優とアイドルとしてそれぞれ芸能界に進む。そして、いよいよアイ殺害の真相に近づいていた。
【感想】
上述のとおり、齋藤飛鳥観賞を目的としていたので、中味に期待していたわけでは無かったが、想像していたよりもずっと良かった。アイドルタレント主演の作品でときどき腹が立つのは、多くを期待せず観ても、それでもガッカリするような、制作陣に全くやる気を感じない“やっつけ仕事”作品。「やりたくないのに上に言われて作った」感もろ出しで、気持はわからんではないが、有料作品なんだから真面目に創れよ」と言いたくなる作品だ。観る前はそういうリスクも少し覚悟していたのだけど、本作は十分なやる気を感じられる作り込みだった。
まず感心したのは、普通だったら「Prime Videoの最終回から続き」という作品構成になるわけだが、本作はそうなっていなかった。もちろん、“つづき”の要素はふんだんにあるのだけれど、時系列的にドラマ最終回の次が映画と単純に並べていない。 このあたりにも映画単体としても成り立たせるべく、構成を練った跡を感じられた。
良かったことの2つ目はライブシーン映像。ああいうアイドルのライブに足を運んだことは無いが、臨場感あふれるライブシーンは「これ楽しいかも!」と思わせられた。「なるほど、ああいう風に会場で一体となって“推し”を応援するのは熱くなれそう」と推し活の気持ちが少しだけ理解できました(笑)
さて、そのライブシーンの中で一番感じたのは「齋藤飛鳥ってやっぱり、天性のアイドルなんだな」ってこと。 登場シーンの中でも、ライブシーンのステージ上で踊り歌う姿が一番輝いて見えた。彼女より“新生B小町”の3人の方がライブシーンは多いのだけど、彼女達と比べると「やっぱりホンモノのアイドルは違う」となった。
また、製作陣のやる気を感じられたことのもう1つに二宮和也を出演させたことがある。 (言っちゃ悪いが)この作品に、しかも主要キャストでもない役に彼を出演させるのは簡単ではなかったはず。彼がどういう経緯で出演を受けたのか知らないが、主要キャストではないけれど重要な役なので、彼の登場が作品の印象に少なくない影響を与えたことは間違いない。結構難しい役どころだが、二宮も期待に応えていたと思う。
ということで、原作にもアイドルにも興味がない人でも結構楽しめると思う。