劇場公開日 2025年11月1日

「じわじわ広がる面白さ」旅人の必需品 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 じわじわ広がる面白さ

2025年11月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

韓国の名匠ホン・サンス監督とフランスの至宝イザベル・ユペールが融合した作品でした。イザベル・ユペール演ずるフランス人女性が東アジアに来て、若いツバメと恋仲になるというのは、日本を舞台にした「不思議の国のシドニ」と同じ構成。ただ日本を「不思議の国」として描いた同作とは異なり、本作は普段着の韓国を描いていて、その点では大きく異なっていました。ただ、静の中の動という雰囲気は似通っていたように感じられました。

特に本作はじわじわと広がる面白さが特徴でした。深層心理をフランス語にして繰り返し音読するという独特の方法でフランス語を教えるイリス(イザベル・ユペール)が、意識高い系と思しき韓国女性2人にレッスンする様子は、お笑いで言うところの”天丼”の手法で、噛めば噛むほど面白さが滲みだしてくるようでした。また、若いツバメであるイングク(ハ・ソングク)の母親(チョ・ユニ)が、自分より年上のイリスに息子を取られたことに対して嫉妬する姿や、母親の嫉妬する姿を見て芋を引いてしまうイングクの姿なども、人情の機微を捉えた絶妙の展開であり、これをさもありなんと思わせるような表情や仕草で表現した俳優陣も印象的でした。

そんな訳で、本作の評価は★4.2とします。

鶏