デビルズ・バスのレビュー・感想・評価
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史実の暗黒
本作は“ホラー風”の外装を纏った、中世メンタルヘルス史の暗黒ドキュメントと言っていい。
魔女狩り映画のようでいて、魔女は出てこない。悪魔も出てこない。
出てくるのは、ただ“社会の無理解”と“時代の残酷”だけである。
観客を驚かせる工夫も、泣かせる演出もない。
だが、その“何もしないこと”こそが最大の演出だ。
中世の鬱は、現代と違って相談窓口がない。
カウンセラーではなく牧師、医師ではなく迷信、そして薬ではなく“祈りと沈黙”が処方される。
この映画は、それがどれほど危うく、破滅的だったかを可視化してしまう。
ちなみに私は視聴後の帰路、コンビニに寄ってアイスを買った。
アイスは偉大だ。
凍らせた冷たく甘いお菓子を、私はいつでも気の赴くままに貪ることができる。
マジでなんなのこれ😱
物語として魅入るポイントと飽きずに観る為の工夫が無さ過ぎて辛さをカバーする為に2倍速で観てギリ最後まで無理矢理完走しましたがこれは無いわ流石に😟
旦那と〇〇〇して無いから子供産まれる訳無いし旦那からのメンタルケアも無いし相談相手も居なくで徐々に病んでいくのはわかるんだけど引き込み力が弱いから単純に飽きるんですよ、あと自殺が殺人よりも罪が深いから死ぬ為には殺人やって処刑されるのが最善て訳ね🤓
結局不快度が圧倒的に足りてないんですよね🥶こっちは最強に嫌な気分になりたくてこれを観たのに胸くそでも無ければ怖くも無いしエグくも無いしストーリーも薄っぺらだしマーターズやダンサーインザダークやミヒャエルハネケの作品とか高品質な胸くそで流石だってのを再確認できましたよ🤓
唯一良いのはポスターデザインかな☹️
まあこれを面白いって言う人もいるだろうし感想は結局個人差なので色々な意見になるのはどうしようもないですからね🤨
史実に基づいていればつまらなくて良いって事はありません(感心領域もテーマは凄いし映画祭で賞を取るのは納得だけど圧倒的につまらなくて寒気しましたよ🥶)
代理自殺
「わたしはこの人生にすっかり嫌気がさしたので殺人を思い至った」というテロップではじまるこの映画の内容をまとめてしまうと、この時代の教区において自殺は殺人よりも悪い行為だった。殺人を犯して神父にそれを告解すると、罪を赦された上で処刑(断頭)された。すなわち天国行きが約束された。だから、17世紀から18世紀にかけてのヨーロッパでは、自殺したい者は死刑になるために殺人を犯した。そんな事案(Suicide by Proxy)がドイツ語圏では400例以上記録されており、その大多数が女性だったそうだ。──という史実にもとづくホラー。ミッドサマー系のトラウマ話である上、実話でもあった。
ナオミワッツ版ではなくその元ネタのグッドナイトマミー(Ich seh, Ich seh、2014)を手がけたデュオ監督が演出しており、あちこちのAwardで賞もとっている。
imdb6.6、RottenTomatoes91%と62%。
このホラーを構成しているのは殺人行為に合理性が与えられてしまったという時代背景である。ここで言う合理とは、道理にかなったとか分別のあるという意味ではなく、費用に対して便益がもたらされるバランスが整合しているという意味の合理である。費用は殺人であり、便益は処刑である。この仕組みを与えたのは宗教である。
信心深い教徒で、自殺したい者や鬱病を患っている者らは、劫罰を避けた上で死刑になることができる殺人を、最良の自殺方法だと悟ってしまった。結果、自分の子どもや年端もいかない少年少女が犠牲になった。なぜならこの新手の自殺方法を選択したのは女性だったから。子どもであれば、かよわい女性でも殺すことができたことに加え、まだ罪を犯していない無実の子どもを殺せば、その子どもも天国に行くと教義されていた。彼女らは堂々と子殺しをやって告解によって赦し(天国行きの約諾)をうけ、神の祝福を感じながら断頭されていった。──という恐ろしい話だった。
殺人を犯した者の死体が縁起物であるかのような描写もあった。生首がさらされ、身体の一部が御利益(ごりやく)があるかのように切り取られ、持ち去られた。主人公のアグネスは死体から切り取られた指をお守りのように持っていた。公開処刑でアグネスの首がちょん切られると民衆はアグネスの血を欲しがって断頭台に群がった。それは神に祝福された霊験あらたかなる血と見なされた。
よって映画内には整合性=合理があり、生活の中心に宗教があり、自殺は大罪で、むしろ殺人には恩赦があり、罪を犯していない無実の子どもを殺せばその子どもも現世の苦しみから救うことができるとなれば、狂信者がそれを実践することは有り得るだろう。それは間違っているし、鬱病を発症したアグネスが受ける治療、後頸部に糸を潜らせ気分が塞いだらそれを動かしてその痛みと違和感で憂さを忘れさせる、も非科学的で間違っている。しかし世界が間違いだらけでも、それらは天動説のように時代と宗教の下では間違っていない、わけである。恐ろしいが納得のいく世界だった。
現代でも、生きているのが嫌になったなどの理由で誰かを殺すという事件が定期的におこるがそれとは根本的に違う。この映画はまるでミッドサマーのように禍々しいが、顧みれば現代の殺人のほうがよっぽどホラーである。
フライパンは引っかけた方が絶対に良いですよ
映画の冒頭で語られる、「実際の裁判記録に基づく物語」。「エミリー・ローズ」?「死霊館」?そんな作品がちらついたが、本作は邦題からは想像できない衝撃的な物語である。美しい自然と、決して多くない台詞、不気味な風習、追い詰められていく焦燥感…どことなくA24が製作をし、ノオミ・ラパス主演の「LAMB/ラム」に近い感覚に陥る作品だった。B級ホラー映画だと思って何の気なしにU-NEXTで鑑賞した自分が愚かに思える。
―ちくしょう、映画館に観に行けば良かった…
そんな言葉が頭をよぎる。
隣村に嫁いだ主人公は、「子どもが欲しい」という思いがあり、熱心なキリスト教信者でもある。聖母マリアへの祈りは忘れず、他の人間が簡単な祈りで終わらせる所を彼女は心からの祈りを忘れない。だが、夜に寝床を共にする旦那を誘っても相手にされず、後ろを向かせて自慰をして満足という何ともな仕打ちである。姑は口うるさく、フライパンは傷つくから重ねずにフックにかけろとか(お義母さん僕もそう思います)調理中はお祈りを続けなさいだとか、料理をしなければ神にしばかれるぞとか、いちいちうるさい。
―そして、自殺をした人間などは天には昇れないという理由で、その辺にポイッと遺体を捨てる。子殺しの女は首をはねられ、処刑場にまだ腐敗して残っている…こんな状況下で、少しずつ主人公は狂っていくのである。
恐らく現代ならば違法薬物のOD(過剰摂取)や、幾多の犯罪を犯す人間になってしまうのだろう。それが映画の話ではなく、時代は違えど人が味わう境遇や差別、理不尽さには違いは無い。史実に基づく物語ではあるものの、現代社会にも当てはまる内容である。最初から、最後の最後まで重くのしかかる考えさせられる作品だ。裁判記録から製作された作品という事で、恐らく映画作品として面白くするならば「ミッドサマー」の様な狂い散らかした村人として描けば良いのだろうが、基本的には至って普通であり、その代わり主人公は幻覚の様な物をしょっちゅう見るため、こちらもどれが現実でどれが幻想なのか分からない状態のまま進んでいくシーンもやや多い。人間には精神疾患という病も存在する為、全てが主人公の妄想だったとも考えられなくもない。村人がイカれているのか、主人公がイカれているのか、どちらにせよ、このズーンとのしかかる重い映画は映画館で味わうべきだった。
環境、時代が違うと常識も変わるという普遍性を冷酷に描いた傑作
リアルなキモグロファンタジー
靄とか雲とか、霞がかった英三は非常に美しいし、生々しい自然物なんかの描写が素晴らしかったです。抑揚利いた音楽や音響なんかも秀逸で、作品にハマっていきます。ただ、内容は強烈過ぎるし、気持ち悪さを追求したかのような表現には、チープなホラーなんてぶっ飛んじゃいます。このグロくてキモい感じをどう処理できるか─それがこの作品を鑑賞する上でかなり重要なところ。一応、説明を見ればどんなにキモくても、納得はできる作品だと思いますが、あまりにもねぇ・・・これじゃあ嫌気が勝ったり途中退席されてもやむを得なしと─。
なかなか優れた作品だとは思うのですが、これは単なる皮肉なのか啓発なのかいまいち判断しかねるし、単にオモしろ半分で映像を追求したものだとしたら最悪。まぁ色々と解説があるので、単に─とは思いませんが、それも後付けで問題回避的なところも感じるんですよねー。
小難しくはありません。いたってシンプルで非常に分かりやすいと思います。質も高くて見応えはあります。それを素直に受け入れることがどうかだけだと思います。
子供のために─という趣旨のメッセージも込められていましたが、個人的には子供には見せない方がいいかもと─
オロロロロロロロ これが普通のエグいホラーだったらどれだけ良かった...
お、重い⋯
最初から最後までとにかく重くて息苦しい作品でした。しかし深くもありました。
あんな閉鎖的で暗鬱で自分とは違った価値観を持った人々(旦那も含めて)の中で生活していたら、そりゃあ頭もおかしくなるよな、とはじめは思いました。主人公の女の人が精神に異常をきたしてしまうのもわかるような気もしました。
しかし、この女の人も、虫の死骸を後生大事に持ち歩いていたりとか、それが自分が信じる何らかの宗教観に基づくものとはいえ、私自身からすると決して普通ではない感覚だとは思うのですが、そのような世界で生きてきたら、それが当たり前になり、その当たり前が通じない世界もまた彼女にとっては普通ではなくなるので、結局何が普通で何がそうじゃないのか、というのがもうわからなくなってしまいます。
しかし、これは現代にも通じるものがあるかもしれません。と言いますか、これと似たようことは(普通かそうでないか)、全世界全時代の底流にあるものなのかもしれません。
そういう、単に宗教観や時代観の違いにとらわれない、人間の根本的な部分での価値観の違い、あるいは多様さについて改めて考えさせられるような作品でした。
隣村に嫁いだ女性の悪夢
宗教観の教えだった。
無意識の加害者
数百年前、狭い共同体内で生きている人間には、
精神的に追い詰められた状態から逃げる場所は現実になく、
また宗教にも(現代からみて)歪んだ異常な形での解決策しかない。
とくに生き物の姿を愛でることに心の安らぎを見出していた主人公の女性の
単に生活の糧として動物を飼い、狩猟する村での上手くいかない結婚生活の辛さは、
屠られた動物の死骸とシンクロされて表現されているかのようだ。
という感想に至ったのは見終わってしばらく経った後で、
見ている最中は主人公にほとんど共感できない状態でイライラし、
ラストの注釈でやっと気づくことができた。
つまり、主人公の身体、精神の状態を正しく理解していないとき、
私自身は周囲の村人に近しい気持ちを持っていたことになり、
図らずも無知のもたらす偏見による加害者の立場を疑似的に体験したことになる。
冒頭とラストの村の祭祀の対象の対称な状態も含めて、なんともホラーでありつつ、皮肉。
人間とは?
ヨーロッパのこの頃の風習とかを絡めた作品は好きです というか民俗学...
ヨーロッパのこの頃の風習とかを絡めた作品は好きです
というか民俗学的なスタンスで興味があります
しかも事実に基づいてるなんてすごい
そして本当に切なかった
あと、スクリーンでタイトルが出てくるまで、
デビルズパス(passとか pathとか)だと思ってた
だから何だとかないけど
でもフライパンは引っ掛けたほうが楽だぞ
邦題に思い込みで勘違いしてはいけない。
25-066
ただただ暗い…
この映画はとにかく暗い。
終始気分を不快にさせるBGMが流れてるし。
正確に言えば結婚式とラストのシーンは明るい。
まぁ、ラストの明るさは逆に怖いんだけど。
気分がイマイチの人は観ない方が良いかと。
今、自分は色々とあり精神的にへこんでるるんだけど、その気分でこの映画を観終わった時はホントにキツイ。
じゃあ、面白く無いかと言われればそんなことは無い。
まぁ、『スゴく面白い!』とも言いづらいけど。
映画としては良く出来てると思います。
ジャンルがホラーと言って良いのかは分からない。
グロいのはラストくらいだったし。
ただ、胸糞悪い映画です。
個人的には去年観た『胸騒ぎ』の方が胸糞は悪い。
でもこちらの映画はメンタルをガッツリ削られた。
体調はもちろん、精神的にも絶好調な時に観る事をオススメします。
最後に・・・主人公の旦那、見た目のイメージと違って声が高いな。
神の赦し
信仰の恐ろしさ
ものすごく好みの作品でした。
舞台は18世紀半ば、オーストリア北部の小さな村。
「デビルズ・バス」=「悪魔の風呂」
当時の鬱病は悪魔憑きという扱い。
女性が赤子を滝から投げ落とした後、告解。
首をはねられ指が切断後、タイトルに入る。
この冒頭からものすごく引き込まれました。
宗教の支配と村人たちの異常な信仰心…。
「代理自殺」という闇深さを描いています。
ガール・ウィズ・ニードルの事件と同様に
こちらの事件も深掘りしたくなりました。
また、女性の生きづらさに深く共感。
因みに、ニワトリ、山羊、 魚は全滅。
動物を愛護する方は発狂するかもしれません。
主人公アグネスの精神崩壊を丁寧に描いていて
陰鬱な世界観と重みに浸りました。
捌いた山羊をキリストの十字架刑として
見立てた描写が素晴らしかったです。
アグネスに同調できると…
予告編でも使われていた滝の上での母子のシーンや動物を愛護する方々が発狂してもおかしくない鶏や山羊のシーンから命を断つ事に容赦ないグロ映画かと思っていたのですが、見当違いも甚だしい結果となりました。
この映画、1人の女性に焦点を当てており、彼女に同調できないと作品そのものが冗長に感じてしまうクセモノ作品でした。
セックスレス、
姑との確執、
重労働、
そうしたひとつひとつが彼女にのしかかり、不安や恐怖、そして絶望へと繋がっていくのですが、映画自体は淡々とした描写が続くだけで中々彼女の内面が描写されません。
説明的な台詞がないのは好感が持てますが、首を切られ放置された遺体や近隣の人の首吊りだけでは伝わるものも伝わらない気がします。
もう少し、彼女の内面の変化を描けていたら評価も変わっていたのではないでしょうか。
ラストではとんでもない展開が待ってます。
人によっては頭に疑問符しかわいてこなくなりそうですが、天国へ行ったとされる死者の指でさえ魔除けやまじないに使っている点を考慮すれば氷解するのではないでしょうか。
ただ、大袈裟でしたよね。
ハーシェル・ゴードン・ルイス監督の「くるくるばー」が一杯出てくる映画が頭をよぎりました。
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