顔を捨てた男のレビュー・感想・評価
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人を見た目でなく、経済力と内面で判断しましょう
フリークと呼ばれる容貌から、イケメンに変われば人生も変わる。そこで、めでたしめでたしとならない寓話。
「見た目よりも内面だよね」なんて、綺麗事を信じるほど自分はウブではない。結婚ともなれば、見た目・性格・経済力の総合点で勝負は決まる。
経済力が突出していて、ユーモアに溢れるオズワルドが高い総合点になるという理屈は成り立つが、自分の感覚では、見た目のマイナス点が大きすぎて無理がある。
新たな人生で調子に乗って転落するストーリーだと、既視感がありありの物語になってしまう。そこで、過去の自分と同じ容貌をしていながら、人生を謳歌しているオズワルドを登場させることを考えついたと思う。
若さを取り戻した『サブスタンス』とは異なり、見栄えの良さを獲得したエドワード。こちらの話は、どうも説教されているようで、居心地が悪い。
汝、己を愛せよ
「アプレンティス ドナルド・トランプの創り方」でトランプ役をやったセバスチャン・スタン主演の作品でした。主人公エドワード(セバスチャン・スタン)は、顔面に腫瘍を患ったことで特異な容貌となりながらも、役者を目指して生きていました。しかしその見た目ゆえに周囲からは差別や侮蔑の視線を受け、本人も自信を持てず、生きることに嫌気が差していたのですが、ある日、新薬の治験に参加したことで奇跡的な回復を遂げます。
容姿が一変したエドワードは過去を捨て、名前を変えて新たな人生を歩み始めます。不動産会社ではトップセールスマンとして成功を収め、かつて住んでいたマンションの隣人であり、密かに想いを寄せていた劇作家イングリッド(レナーテ・レインスベ)が手がける舞台の主演にも抜擢。彼女との関係も深まり、公私ともに充実した日々を送るようになります。
しかし、そこにかつてのエドワードと同じような容貌を持つ男・オズワルド(アダム・ピアソン)が現れ、事態は一変します。エドワードは舞台の主役の座をオズワルドに奪われ、さらには恋人イングリッドまで彼に奪われてしまいます。
物語は、夢にまで見た”普通の顔”を手に入れたはずのエドワードが、結局は幸福にはなれず、むしろオズワルドに嫉妬し、自ら捨てたはずの“旧い顔”の仮面を被るという、皮肉で倒錯的な展開へと進みます。鑑賞後には重たい気分が残るものの、「汝、己を愛せよ」というメッセージが込められていることに気付かされました。
外見がどうであろうと、オズワルドのように自分を受け入れ、前向きに生きていれば、幸福は自然と訪れる——それは多くの人が感じたことのある人生の真理かもしれません。ただ、それを実践するのがいかに難しいかを、作品は痛烈に描いていたように感じました。
ストーリー自体は暗く重苦しいものでしたが、主人公エドワードを演じたセバスチャン・スタンは、その内面の揺らぎや痛みを見事に表現していました。一方で、オズワルド役のアダム・ピアソンも、エドワードの“裏の存在”として強い印象を残しました。彼の登場によって、エドワードの抱える闇がより鮮明になって行ったように思います。
また本作では、小道具や演出も特筆すべき点でした。エドワードの指の怪我、天井の穴、イングリッドに贈った”拾った”タイプライター、そして例の仮面などが、物語の中で象徴的に機能しており、これらが物語の終盤で巧みに回収されていく展開は非常に見応えがありました。
そんな訳で、本作の評価は★3.8とします。
消化不良って感じ
成田悠輔
リンチの「エレファント・マン」は外見醜悪な主人公が誇りを取り戻す話で、本作監督も多少は意識してるのかもしれないが、内容は正反対で、ハンディ解消で人生大逆転の筈が同じハンディ背負った奴に出し抜かれるという苦々しい展開。
「美人(イケメン)は飽きるがブス(醜男)は慣れる」のだそうで、劇中その通りになるのだが、劣等感を克服するためにその元を消すかそれを踏み台にするかの選択を迫られるような人物は、それをモノともしない才人に勝てない、という身も蓋も無い話にも見える。
醜さに対する恐怖は自己保存本能に根ざしたいわば反射みたいなものだと作中語られるが、醜顔ゆえの劣等感を持ち、天井の穴(←醜悪だ)に腹を立てるエドワードがイケメン変身後もマグカップの虫に対する嫌悪感から自由になれない様は、底無しの負のスパイラルに落ちていくようで恐ろしい。
作品内容とは関係ないが、本編始まったら扇子パタパタやめれ。
私もなかなか注文決められないんです、ダメかな?
これは面白い。結構好みな作品です。
「サブスタンス」とは兄弟姉妹な作品。
中盤から私自身が、渋面で鬱屈としているガイ(エドワード)よりは、おおらかでカリスマ性のあるオズワルドを見ていたいと感じるようになっていて、いつのまにか監督の狙いにはまってしまっていました。
マスクを付け、やけっぱちで不動産屋の仕事をするガイの姿は、滑稽なだけでなく哀れに映ります。
天井からの落下物が当たって変身したエドワードが、舞台装置の天井の落下でまた元に戻るのかと思いましたが、さすがに違いました。
リハビリの療養士は、(一般人の代表みたいに)ポロッと本音を漏らしただけなのにあんなことになって、気の毒な気がします。あのシュールな描写は「サイコ」の探偵が襲われるシーンを想起しました。
エピローグは蛇足に感じましたが、「エドワード、君を見捨ててはいないよ」という制作者たちの思いなのかも知れません
ケネス・ブラナーは?
腫瘍が顔を多い肥大していく病気を持つ男が、新薬により腫瘍が無くなり新たな人生を歩む話。
教材映像の俳優をしていた主人公の隣室に、作家志望の女性が引っ越してきて、顔のことを気にせず接してくる隣人に好意を抱く中、主治医から新薬の話しを持ちかけられて…という流れだけれど、そんなに効いちゃうの!?
訪ねてきた主治医へのリアクションとか、なんで?と思ったけれど、その後のストーキングからのオーディションと、昔の自分と同じ顔の男とのやりとりをみるに、これは不条理じゃなくて、なるべくしてという感じ。
ヤケになってからの展開は最早クソ野郎だし、大ケガからの展開はやり過ぎで最早コメディだし、ラストはちょっとボヤけてた感じだしで、つまらなくはなかったけれど物足りなかった。
心の在り方ひとつで。
美醜や劣等感を扱った良作ブラックコメディだがすごく嫌い!
「顔を捨てた男」HTC有楽町で鑑賞。セバスチャン・スタンの主演による不条理スリラーというより寧ろ、美醜や劣等感を扱った現代の寓話であり胸糞ブラックコメディだった。
原題の“A Different Man”はDavid Lynch監督の名作「エレファント・マン」に寄せたと思われる。
全編16mmフィルムでの撮影、4:3比の狭い画角はどことなく窮屈な印象もある。
主人公が新薬を使い、手術を経て劇的にルックスが良くなり、波乱の人生を送る姿、憐れさは「サブスタンス」のようでもあるが、本作の後味は非常に苦い…。
ドストエフスキーの「分身」を彷彿させるストーリーや「美女と野獣」「オペラ座の怪人」等々、美醜&ルッキズムに対する作品を次々と連想させられる。言ってしまえば傑作「サブスタンス」の一歩先を行った胸糞作品であり、映画としてよく出来てるがもう二度と観たくない(←褒めてます)
セバスチャン・スタン演じる、顔に特異な特徴を持つエドワードの醜さ故に世間から差別され、劣等感に苛まれ悩む姿には同情してしまう。
一方で、アパートの隣の部屋に引っ越してくる劇作家を目指すイングリッド(レテーナ・レインスベ)の分け隔てなく接してくる優しさは好感だが、
小劇場のプロデューサーとして出世してから、エドワードを利用・搾取する姿は嫌悪感しかない。
加えて、オーディションに突然現れる、顔に特異な特徴を持つ男オズワルドの振舞い、言動には苛つくが、あの醜い容貌で他人を魅了する不思議な魅力がある。劣等感一杯のエドワードと比べ、前向きで饒舌で、演技が上手くてヒトタラシなキャラクター描写は巧みだが故の憎たらしさがある。簡単に言えばこの2人が嫌い😠でも、日常生活の中こんなズルい人、知ってる知ってる🤢
ラスト、日本レストランでの再会&食事シーンは短くも印象に残るシーケンスだった。年老いたセバスチャン・スタンのあの愛想笑いのカットは、力の無い弱き者が、狡賢い人間たちに搾取・利用された果ての姿。哀しくて哀しくてやりきれない気持ちになった。
★見た目が変化すれば周囲の視線も環境も一変して物事が上手く進んで行く一方で、自分と同じように醜い容姿なのに自分とは真逆のように生きるオズワルド。エドワードも彼のように生きれなかったのだろうか?人間の生き方は外見だけでなく元々の性格が大きく影響するもの。人生は難しい…
(備忘録)
・そう言えば、セバスチャン・スタンは「アプレンティス ドナルド・トランプの創り方」でも不動産屋だし、おまけに改造手術するのも同じ(笑)
・レテーナ・レインスベさんは「わたしは最悪。」での演技とは異なり、分け隔てなく優しくて、顔面フェチで、オーディションでイケメンのセバスタを発見したら直ぐにモノにしたり、自分のやりたい放題。嫌悪感しかない(←褒めてます)
・オズワルド役のアダム・ピアソンは、神経線維腫症1型(NF1)という遺伝性の病気を患っている英国俳優で、実生活でもあの御顔との事。凄い!
★劣等感に苛まれた男性と近寄ってくる優しき女ともう1人の魅力的な男性という3人の座組は、98年、X JAPAN ToshIの洗脳騒動の構図に偶然にも似ている事に気がついた。破滅に追い込まれた男性は全てを失い、愛する女性まで奪われてしまう哀しさを思い出した。
「 何てこったい 」 by 主人公
この顔が変われば、もっと良い人生になるはずだと思ったエドワード。 念願のイケメンになり人生が好転し始め、上手く行くかなと思われた矢先に、以前の自分と同じ極端に変形した顔の男オズワルドが現れる。
オズワルドには、離婚してしまったけど家族が有り、歌手としてはステージで聴衆を魅了し、憧れの隣人だったイングリッドの芝居では主演をつとめ、更には彼女の愛さえ手に入れてしまう。
つまり、以前エドワードが、顔が変われば手に出来ると思っていたものを、オズワルドは以前のエドワードの顔のままで成し遂げてしまったのだ。
まー、エドワードにしたらビックラこいた、というか困惑したよねー。
いわく、 「 何てコッタイ 」 by エドワード ( ̄▽ ̄;)
顔が変われば、なりたい自分になれるのか? 外見至上主義をブラックユーモワで風刺した作品 (公式サイト)
色々と惜しい
またA24がニヤニヤ笑いかけてくる
反ルッキズム映画
スリラーとの話ではあったが怖くは無い。不条理であるような無いような何とも言えない後味の悪さはあった。
外面より内面、と言うよりも自分らしく生きる事の大切さと言う感じの映画だと思った。
自分が鑑賞した映画館では、ゴリゴリのルッキズム映画であるサブスタンスがこの時期に封切りされていたのが面白い背景だった。
好演を引き出すような演出なのでしょう
粗く何となく視野が狭い印象の映像がめっちゃ気になりましたが、それが見事なパフォーマンスを引き出していたような印象の作品でした。
とはいえ、決して楽しい内容ではないし、展開も唐突感や違和感は物凄いです。しかし、その突如とした出来事も何となく納得できる作りでしたし、言わんとしていることがかなり明確だったような気がしたので、かなり引き込まれた気がします。
個人的に、この作品の予告を見て、かなり安部公房の「他人の顔」を連想して多分引きずりながら見るんだろうなぁと思ったのですけど、あの難解な話と比べるとかなり分かりやすかったためか、外部の雑音とか気にならないくらい見入りました。
最後の最後まで落とし込むような徹底した内容でしたが、分かりやすかったぶん、それがかえって表面的な要素と内容が見事なくらいとけ合ったような作品だったなぁという印象です。なんか言っててよく分かんないんですけど、そんな感じの作品です。
良いか悪いか
変わった素材を変わった味付けで。
自分を愛してこそ輝く自分!
自分の中での一番の外見コンプレックスを魔法のように変えられたら、人は幸せになるのか。
死ぬほど辛い思いをして外見も中身も変わったはずだった。なのに昔の自分と見た目はそっくりなのに、キラキラに輝いて皆の人気者なオズワルドに嫉妬が止まらないエドワード。
なんかね。私にはいかに自分を愛して自信を持つか、という話にみえたわ。
自分が愛せない自分を誰が愛してくれるのか、ってこと!
整形は努力と言う人がいるけど、これを観たらそうかもしれん。。とちょっと思ったわ。痛くて苦しいと引き換えに自分にとっての美しいを手に入れるのね。
自分に極端に自信がないと、他人に対してノーが言い辛くとにかく他人に対してナイスな対応をすることで自分を守ろうとしてしまう。
その自信のなさが他人からヘルプももらうけど、同時に蔑まれる原因も生む。
難しいねぇ。
人間は、、というか、生き物である以上どうしても相手を上にも下にも見てしまうものね。
彼としては、自信のなさと問題は顔の病気からくる造形の問題だと思っていたので、そこに逆に内面の輝きが外見のそれとはまるで違って光り輝いてる対極にある人が現れたら、そりゃ自分の中での価値観がぐらぐらしておかしくなるよな。
色々自分の中の価値観もぐらぐらしながら、いやでも本当、自分のことをどれだけ愛せるかで人生の幸せ度はまるっきり違うよなぁ、うんうん、と思いながら観ました。
面白かった!!
外見かアイデンティティか
《試写会にて鑑賞》
16㎜フィルムが映し出す映像と
A24×セバスチャン・スタンが最高。
外見と内面を掘り下げている作品で
共感と感情移入の連続でした。
新しい顔を手にし、これから明るい未来が!
…からの転落人生。
理想と現実が反転していく不条理劇に
思わず声が出そうになりました。
自信と自己愛は、なによりも最強の武器
だということに気付かされます。
終盤、エドワードの感情が爆発するシーンと
陰と陽の差に痛く刺さりました。
まるで自分の内部を見ている感覚に…。
個人的に主人公のエドワードに共感しまくりでしたが
これは内向的な人と外交的な人で意見が分かれそう。
オズワルドの前向きな考え方は
素晴らしいし、尊敬の域。
ですが!
ズカズカとパーソナルスペースに
入り込んでくるところはちょっと拒絶反応がでました。
陽気なキャラだけどブラックなところも見え隠れ。
ルッキズムをテーマに
『サブスタンス』とはまた違った観点があり
心に残る作品となりました。
こんなにも刺さる映画は久しぶり。
本日はありがとうございました。
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