「【”ロブスター。”今作は白人優位のアメリカ社会は、低賃金の不法滞在者達の劣悪な労働条件有りて循環している事実を、有色人種もしくはプアホワイトで回すレストランの厨房を舞台に強烈に皮肉った狂騒曲である。】」ラ・コシーナ 厨房 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”ロブスター。”今作は白人優位のアメリカ社会は、低賃金の不法滞在者達の劣悪な労働条件有りて循環している事実を、有色人種もしくはプアホワイトで回すレストランの厨房を舞台に強烈に皮肉った狂騒曲である。】
ー 知らなかったが、今作の原案は故、蜷川幸雄氏の演出で上映されたアーノルド・ウェスカーの戯曲「調理場」だそうである。-
・それを、アロンソ・ルイスパラシオス監督は、主人公の料理人を労働ビザが無く、不法滞在しているメキシコ人料理人ペドロ(ラウル・プリオリネス)に置き換え、劣悪な条件下、ビザを与える事をチラつかせながら働かせる総料理長(と言っても、指示するだけで何もしない。)や白人オーナー、ラシッド(オテッド・フェール)等の、”使役者側”の視点と、“非使役者側”の視点で、厨房を描いているのである。
ナカナカ、斬新である。
・厨房は、常に鬼の様に忙しく、見習いとして入った幼きエステラ(アンナ・ディアス)も走り回っている。ウェイトレスは、次々に皿を客席に運ぶが、ハンバーガーや、カレーチキンと言った料理を見ると、そんなに格式の高いレストランではない事が分かる。
■序盤に、ペドロが水槽の中に次々に放り込まれるロブスターを見て”こんなもの、昔は猟師の食い物だったんだ。それが、今や高級食材だよ。”という台詞が、今作を観ていると何ともシニカルに思い出されるのである。
”ロブスターを有難がって食べている白人たちも、昔はこれを庶民の食べ物としていたんだろ!”ってね。
・ある日、レストランの売上金から約800ドルが紛失し、ペドロが恋仲のウェイトレス、ジュリア(ルーニー・マーラ)に中絶金として金を渡した事が噂で流れ、彼に嫌疑がかかるシーン。ペドロは忙しい中、苛立ち乍ら料理を作り続け、ジュリアは堕胎直後にも関わらず、ウェイトレスの仕事を続けるが、倒れてしまう。
そんな時、白人スタッフが血相を変えて”お金が見つかりました。”と、ペドロを追求していた男に言うシーン。その男は狼狽えるが、その事実を厨房に伝えないのである。
<で、厨房は更に混乱して行き、ジュリアに息子がいる事を知ったペドロは更に苛立ち、多くの皿が割れグチャグチャになった厨房で、客のオーダーを知らせる機具を拳で叩き潰すのである。
今作は、白人優位のアメリカ社会は、低賃金の不法滞在者達の劣悪な労働条件有りて循環している事実を、有色人種もしくはプアホワイトで回すレストランの厨房を舞台に強烈に皮肉った狂騒曲なのである。
アロンソ・ルイスパラシオス監督の、厨房の狂乱をドキュメンタリー風に映すセンスが良くって、”第二の、アルフォンソ・キュアロンになってくれい!”と思った作品でもある。>
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