箱男のレビュー・感想・評価
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難解な物語を要約すれば、“ホンモノ”の箱男になろうとする、「わたし」とニセ医者、それに軍医の抗争ということになりますが、そう思って見たところでこの映画は理解できないでしょう。
「狂い咲きサンダーロード」「蜜のあわれ」などの鬼才・石井岳龍監督が30年以上前から映画化を構想、27年前の製作頓挫など疹參曲折を経て完成させたりが本作です。それだけに並々ならぬ熱量です。筋立てを追えば混乱必至、迷路のような怪作というべきでしょう。主演は永瀬正敏。原作は今年生誕100年の作家、安部公房(1924~93年)が73年に発表した同名小説です。段ボール箱をすっぽりかぶって一方的に世界をのぞく箱男という存在を通し、人間と社会を照らし出します。
27年を経ての完成品を見ると、むしろ、現代だからこそと思える意味深さにあふれています。
●ストーリー
元カメラマンの「わたし」(永瀬正敏)は、街で見かけた箱男に心を奪われ、自らもダンボールを被って箱男として生きることに。すっぽりと段ボール箱をかぶった「箱男」として存在を消し去り、箱の中から社会をのぞき、妄想をノートに書き付けていたのです。
箱の穴から一方的に世界を見つめ、欲情し、妄想するはずでしたが、殺し屋から命を狙われたあげく、古びた病院に逃げ込むと、病に侵された軍医(佐藤浩市)と、その世話をするニセ医者(浅野忠信)、それに看護師の葉子(白本彩奈)が暮らしていました。彼らから箱男の存在を乗っ取られそうになります。そして、犯罪を目論むニセモノたちとの戦いの行方は…。
●解説
箱が象徴するのは完全な無記名性であり、他者から干渉されない空間です。作中、「箱男を意識するものは、箱男になる」という言及が何度も繰り返されます。ネットの匿名性の海に生きる現代の私たちにとって、この世界こそが「箱の中」と言えるでしょう。
但しそう解釈することも可能ですが、本作の魅力は、全編ににじむ奇妙な軽みとおかしみにあります。その代表格が箱男と偽箱男との格闘シーンです。互いに「ひとつの町に箱男は一人しか要らない」と叫びながら、「真の箱男」の座を目指して箱男同士が白熱のパドルを演じるクライマックスの不可思議さ。日本を代表する俳優である永瀬正敏、浅野忠信、佐藤浩市ら3人の大物俳優が脂汗を流して箱に入りたがるところはなかなかに滑稽です。その戦いに誰もが唖然とし、余りの馬鹿馬鹿さと可笑しみに自然と笑みがこぼれてくることでしょう。
難解な物語を要約すれば、“ホンモノ”の箱男になろうとする、「わたし」とニセ医者、それに軍医の抗争ということになりますが、そう思って見たところでこの映画は理解できないでしょう。「一つの町に箱男は1人だけ」とその正統性から始まった確執は、次第に錯綜してゆくのです。
「わたし」が書きため、ニセ医者が目をつけたノートの妄想が、物語と境目なく映像化されて入り乱れます。そして箱に無頓着な葉子が、3人をかき乱すのです。箱男としての陶酔を求める軍医が葉子に倒錯的な性行為を求め、ニセ医者が軍医にされたことを再現させ、「わたし」がそれをのぞき見ます。書く者と書かれたことが浸食し合い、フィクションであることをわざと強調するメタフィクションの様相を呈してくるのです。「見る」 「見られる」の関係が幾重にも絡み合い、「ニセモノ」と「ホンモノ」が逆転と再逆転を繰り返し、判別不能となる展開は、なかなか難解です。それでも本作では原作小説に埋め込まれた形而上的な仕掛けを独自に解釈し、映像にしてなんとか詰め込んだのです。カオスはアクションとして噴出し、箱男は走り、飛び、宙返りまでやってのけます。石井監督の剛腕ぶりに、あっけにとられるしかありません。
小さな箱の中で王国を作り、守られた状態で世界を一方的に覗く箱男の姿は、不確実性の中で揺らぎながら、小さな端末スマホを手に持ち、匿名の存在としてSNSで一方的に他者を眼差し、時に攻撃さえもする現代の私たちと「無関係」と言えるのでしょうか。驚くべきことに、原作が発表された50年前に著者の安部公房はすでに現代社会を予見していたということなのです。
ただ決定的に異なるのは、映画の箱男たちが肉体でぶつかり合うことです。存在を消し去るために全存在をかけるという逆説に、めまいがしそうです。鬼才の挑発というべきでしょうか。
●感想
遊び心に満ちた味付けに乗せられそうでいて、やっぱり不条理な展開に轟沈してしまいました(^^ゞ
公房の原作小説も難解に思えて、つい噴き出してしまうユーモアがあるようなのです。不条理とはそもそも楽しいのなのでしょうか。ただ、安全な客席から鑑賞しているうち、登場する箱男の箱に開けられたのぞき穴のタテヨコ比がスクリーンとー緒だということに気づき、いつの間にか箱男の目線でスクリーンを鑑賞している自分がいました。
いや応なしに「私もあなたも箱男である」と気づせる、そんな毒気もたっぷりの作品なのです。
何もかもがとち狂ったシュールな描写の連続ですが、ラストシーンの象徴的なイメージが、箱男とは何なのか、人間とは何者なのかを問いかけてきます。女性の神聖さと魔性を体現した葉子役白本の助演も鮮烈でセクシーでした。
もう一つ、映画の最後に流れるエンドタイトルにも観客参加型のたくらみがあって、海外と違い、日本のまじめな観客ならきっと引っ掛かって(^^ゞいや気づいて、「やられた!」と苦笑いされるはずでしょう(^^)。
一度観たら離れない「箱男」!!
安部公房は『砂の女』『方舟さくら丸』が好きで、『箱男』は昔一度読ん...
安部公房は『砂の女』『方舟さくら丸』が好きで、『箱男』は昔一度読んだきりで詳細までは覚えていないが、う〜ん見ておこうかなと最寄りでも40km離れた劇場(シネコン)まで出掛けた
滑り出しこそモノクロだったが、流石に原作の時代設定のままではなかった
登場人物も結構割愛された(一部では追加されていたようだ)
贋医者が病院を出てからの最終30分程が、どうもしっくり来ない
葉子と“わたし“と贋医者の残像などが、安部公房のイメージからもかけ離れた、入り組み合いが続いて、新鮮味のないクロージングに至る
5度程強調された「意識すると箱男になる」のディテールを、説得力豊かに、上手に掘っていって欲しかった
外部を観察し、丹念にノートを綴り、更なる克明な箱の内部描写が有効だったのでは?
段ボールの仕様も何故画一化されてしまったのか----“天地無用”のエフの貼り方まで合わせ込んでいたようだが、なぜ?
劇伴というか安直な効果音的音響が耳障りで安物ホラー風にありきたりな感じで、これなら無音の方が余程良かったのに
葉子役の白本彩奈さんは、なかなか堂に入った演技で、またお目に掛かれそう
不発のアートシネマ。
美術(箱の中)と照明は秀逸だったと思うけど、カメラがいちいち隔靴掻痒感あり。演技も日本のテレビドラマみたいなリアリティを欠いたセリフ読みが大半で、この監督たいして俳優に踏み込んでないよね?
80年代くらいまでの日本映画の黄金期を、なつかしく年寄りが反復してるような映画。それを頑張って今風にアップデートしてやるぜという心意気は買うけどさ、ただ空回りしている。
なんか朝日新聞の映画レビューで北小路なんとかさんがしょっちゅう書いてるような浅い感想文をそのまま映像にしたようにしか見えないんだよね。とくにエンディング。あのレビュアーならこういう映画をこう言うだろうなあと思いながら見ていたら、それがそのままセリフに出てきて思わず失笑。要するに原作に対する監督の理解が、その程度だったってことですな。
たぶん、何も考えないで観た方が楽しい
箱男
あまりに酷い評論?などが見られるので、観てきた私の印象を書きます。
基本的に安部公房が好きではない人には
わかりにくいのは仕方がないと思います。私はよくぞ映像にしたものよ!と感心いたしました。自身の内面を見つめ思考する作品を映画にしたものなので、常に外を向いている人にはわかりにくいだけの作品なのかもしれません。女優さんの「本心がどこにあるのか知ってます?」というセリフをきっかけに考えながら鑑賞していくと少しはわかりやすくなるかもしれません。曝け出して見られることに慣れている人、一方的に見ているつもりの人の対比をしつつ考えるのも良いと思います。監督の才能に感服いたしました。
箱男になりたいという気持ちが、今一つ理解できない
支離滅裂な物語だが、これは、箱男がノートに書き留めた「妄想」という解釈でいいのだろうか?
ただ、写真家が箱男になった経緯や、謎の女性の経歴や、ニセ医者と軍医の関係性などは分かりやすく描かれているし、箱男のモノローグや画面に映し出される文字などで、その心象等も逐一説明されるので、それほど「難解」という印象は受けなかった。
箱男の動きは予想外に機敏だし、箱男同士のバトルアクションも、わざわざ箱を被って戦うところがバカバカしくて、人を食ったような面白さがある。
その一方で、肝心要の箱男が、それほど魅力的には感じられず、箱男に執着し、本物の箱男になろうとする男たちの話に、今一つ入り込むことができなかったのも事実である。
確かに、存在を消し、完全に匿名で、外の世界を覗き見るだけの存在というのは、一つの理想なのかもしれないが、箱を被って動き回っていたら、かえって目立ってしまうだろうし、何よりも狭いし、暗いし、暑苦しいし、そうした環境が苦手な者にとっては、苦行でしかないだろう。
それよりも、どうせ令和の時代に制作したのであれば、時代設定も現代に移し替えて、映画を見ている観客ではなく、匿名のSNS利用者の無責任さを糾弾するようなエンディングにしてもよかったのではないかと思えるのである。
観終わった後からジワジワ来る▪▪
私は好きですが、レビューはちょっと逃げ腰です。
サービスデイのTOHOシネマズシャンテ、不安定な天気ですが平日午前中のわりには客入りも多めです。ただ、詳しくは見ていませんが評価は割れているようですね。解る気はしますが、私は結構楽しめました。ちなみに私、石井監督の作品は『逆噴射家族』『蜜のあわれ』しか観られていなかったので、直前に『高校大パニック』他、観られるもの6作品を配信で観てからの鑑賞です。なお、安部公房作品は未読。原作映画も本作が初めてになります。
さて、いきなり関係ないところから入りますが、私、映画『インターステラー』に登場するロボット「TARS(ターズ)」と「CASE(ケイス)」が大好きなのですが、本作のトレーラーで「箱男」観たときの印象はまず「可愛いw」。フォルムがこれ以上なく武骨で、ただ動いているだけでも微笑ましいのに、案外機敏で果敢に格闘する様子で本編で観るのを楽しみにしておりました。そして、本日実際観て気づいたのは、走ったり戦ったりしている最中の「オジサンの息遣い」や「悪態つく」様子。(私好みの)見た目とのギャップで更に萌えますw
本作、何といっても豪華な俳優たちが皆さん素晴らしい。メインキャストの男性3名は端的に言って三人三様に狂っています。ただ、それは究極までいった最終形だからこそ特殊に見えますが、本を正せば(主に男性の)誰しもが内包する狂気とも感じ、話が進むにつれてそれぞれのキャラクターに一層の興味が湧きます。原作も是非読んでみたい。
まずは“わたし”(永瀬)。自分なりの理論をあたかも哲学のようにして捏ねくり回して拗らせるキャラであり、その存在感はまさに「ミスター箱男」。物語を難解にする根源でありつつも、常にバランスを取ろうとするところなどは案外一番「まとも」かもしれません。そしてまた、疑問や迷いを「書く」ことで昇華させるところなどは作家的で、原作者・安部公房に通じるものがあるのかもと思えます。更に、役名が“わたし”である意味についても観終わって感慨深く感じます。永瀬さんの一見ミステリアスと思わせ、実はピュアな感じが“わたし”というキャラクターに違和感どころか共感?と思わせてくれる説得力を感じます。
次に“軍医”(佐藤)。シーンはけして多くないのに、常に印象に残って気にならざるを得ないキャラクター。勿論、登場からすでに怪しいのですが、観ていて判る「小出しに狂っている感じを出す」ことでより一層ヤバい奴に見えて、言わずもがな流石の浩市さん。歳を取られて癖のある役が増えてきましたが、連太郎さんにも引けを取らず欠かせない役者さんです。素晴らしい。
そして“ニセ医者”(浅野)、私が一番お気に入りのキャラクター。特に中盤はほぼ独壇場で、ずっと笑わせてくれます。「似非」にも拘らず本人は至って真面目且つゆるぎない正義感で、箱男に立ち向い物語を展開させます。浅野さんは北野監督の『首』でも黒田官兵衛を可笑しく演じていたのが記憶に新しいですが、ハリウッドでも活躍する知名度で、海外でも評価される邦画の普及に欠かせない役者さん。本作も是非、ベルリンだけでなく他の映画祭や映画賞でもフックアップされてほしい。
さらに、この3名の男に絡んでキーとなる役“葉子(aka葉ちゃんw)”(白本)が秀逸。私、白本彩奈さんを本作で初めて存じ上げたのですが、何といっても表情が良いですね。低温な雰囲気で男を翻弄しつつ、情けなかったり奇怪だったりする彼らを、憐れんでも決して蔑まない。まさに「親父殺しの鏡」として大きく機能しています。早速、映画.comでCheck-inし、今後の活躍に期待したいと思います。
と言うことで、作品の内容について触れず役者評価に終始しました。荒れ気味の評価もあって正直ちょっと逃げてますが、作品に好き嫌いは避けられないことですし、特に本作は結構特殊な映画です。その点を踏まえ、鑑賞するかは自己責任でどうぞ。とは言え、やはり観るなら映画館ですかね。全般、暗いシーンが多いためTVでは所々見にくいのではないかと思います。参考まで。
ずっと何言ってるのかわからない
デキの悪い戦隊ものを見たような…
たぶん、そうだろう。期待値はハナから低かった。見終わって、「やっぱり」の感である。
安部公房の小説は、代表作であり、世界文学と目される「砂の女」をはじめ何冊か読んでいる。40年以上前、高校~大学生のころだ。
本作の原作も…たぶん読んだはず。だが、内容は覚えていない。
したがって、この映画が原作小説とどこが同じでどこが違うのか、まったくわからない。
僕の中では、「箱男」がおり、…それが徘徊する、街の中を―というイメージだけだ。
それについて、理解する必要はなく、箱男を除いた世間の人間は、無視しておけばよい話なのだ。
この映画も、わざわざ見に行くほどのものではない。無視しておけ。
箱男VS箱男のバトルが何シーンかある。
それが、本レビューのタイトルに書いたとおりなのである。
「スーパー戦隊シリーズ」の東映のスタッフが入っているのか?
原作そのものが、物語的なものを拒否している(らしい)のだし、映画もそうであったほうがよかったんじゃないか。
箱男である段ボール箱にも工夫がない。
どれも一緒じゃないか。
多様性の時代だ。男が女が、老人が子供が、LGBTが一律に同じ形、大きさの段ボール「箱」に入っていなくてよいのだ。
「箱」をすべて同じ外見(最終盤に出てくる)にした段階で、この監督の限界がはっきりしているのだ。
東京都心のミニシアター風シネコンで日曜午後に鑑賞。7-8割の入りだったろうか。観客の空気からは共感も感動もなかった印象。
安部公房の作品を映画に…
意外にかわいい箱男
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