「匿名性、二次元性、往来性」箱男 てつさんの映画レビュー(感想・評価)
匿名性、二次元性、往来性
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初めは「箱男」とは、匿名性の象徴だと思っていたが、命を付け狙われ、逃げ回ったり、格闘する場面が多くなるにつけ、存在感が大きくなっていったように感じた。本物の存在に取って代わるということが大事なのかもしれないが、それなら、最後でたくさんの箱男が出てくるのと矛盾している。
裸の女性と体を合わせたいという欲望のために、自らも箱から出て裸の体を晒す選択を取るところは、『潮騒』的展開であるようにも感じられるものの、現代の二次元性愛傾向には必ずしも適合しないようにも感じる。撮影に当たっては、インティマシーコーディネーターが介在したようである。
結末で、観客自身が本作の世界を覗いている「箱男」そのものではないかという提起がなされていた。これまでにも、いくつかの作品で、映像の世界と観客の世界とが行き来する筋書き、さらには実際の役者が舞台に現れて演技をするという作品も観てきただけに、そこにはさほどの驚きはなかった。
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ノーキッキングさんのコメント
2024年12月26日
ホワイト~の共感ありがとうございます。
安部公房の不倫(女優.山口果林)に業を煮やし、嫉妬に狂った安部夫人。ドロドロの愛憎劇が安部の癌死まで25年も続く。その始まりに書かれた本作。ただ、夫人に隠れて箱の中から愛人を眺めたいだけの話だとしたら?原稿用紙3000枚を書きつぶし苦心して理論武装した安部の目論見をズルリとはがしてしまえばそんな結論になる。哲学的考察など全てむなしい。難解でも何でも無い。安部本人こそが箱男の実像なのだから。