「恋する力は死なず、最期に楽しい夢を見させてくれるのかもしれません」不死身ラヴァーズ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
恋する力は死なず、最期に楽しい夢を見させてくれるのかもしれません
2024.5.14 アップリンク京都
2024年の日本映画(103分、G)
原作は高木ユーナの漫画『不死身ラヴァーズ』
運命の人と両思いになると相手が消えてしまう現象に巻き込まれる女性を描いたラブロマンス映画
監督は松居大悟
脚本は大野敏哉&松居大悟
物語の舞台は、日本のある地方都市
病床に伏す長谷部りの(吉田帆乃華、成人期:見上愛)は、その病に屈する直前に、甲野じゅんと名乗る少年(泉二伊織)に手を取られた
りのは彼を運命の人だと確信し、彼を追いかけることになった
病気から回復したりのは、甲野じゅんを探す日々を送り、そんな様子を幼馴染の田中(青木柚、幼少期:岩川晴)はずっと見守って来た
中学生になるまで甲野じゅんを見つけられなかったりのだったが、2年生になった時、とうとう彼(佐藤寛太)を見つけてしまう
彼が陸上部に入っていることを知ったりのは突撃して、勢いでマネージャーとなってしまう
そして、ようやく両思いになれたと思った途端、じゅんはりのの前から姿を消してしまうのである
その後も、高校に入ったりのは音楽室でギターを弾くじゅんに出会い、同じように彼も消えてしまう
車椅子に乗っているじゅんも、クリーニング店の店長をしているじゅんも消えてしまい、さらにはクリーニング店の先輩・花森(前田敦子)までも消えてしまった
その度に田中に愚痴るりのは、とうとう大学生になってしまい、もう甲野じゅんを見つけても恋愛しないと決め込んだ
そんな折、大学のカフェテラスにて、甲野じゅんを見つけることになるのだが、彼は眠ると記憶が消えてしまう後遺症を抱えていたのである
映画はの後半は、大学生のじゅんは消えずに「彼の中から自分が消えること」に苦しむ様子が描かれていく
相手が消えるよりも、自分が相手の中から消えることの方が辛く、彼の送り迎えを申し出て、毎日告白できると肯定しても、その状況に耐えられなくなってしまう
そうした先で、りののことを忘れてしまうじゅんも心を痛めていき、彼女が残した愛の言葉を手に、彼の前から消えたりのを探し始めるのである
物語は、ワンアイデアを基に作られていて、その着地点としては無難なもののように思えた
実際に消えていたのは相手ではなく、辛い失恋などがあった先に「自分から姿を消していたこと」がわかるのだが、彼女のまっすぐな「好き」という感情によって、りのと関わった人の多くは前に進めるようになっていた
クリーニング店のじゅんは元妻キョウコとの愛を確かめることになったし、同僚の花森も彼氏と復縁している
だが、陸上部のじゅんは重すぎて逃げられ、軽音部のじゅんは元カノと比べられてフラれていたりするので、色んな関わり方の中で、彼女の存在が強く残っていた、ということになっていた
これらをずっと側で見てきたのが田中で、彼は事の真相を知っている側だった
だが、りのが記憶に蓋をしていることを知っているので、その時が来るまで伝えずにいた
おそらく彼はりののことが好きなのだが、それ以上の関係は望んでいないように見える
だが、それら全てが「りのが見た夢」のようにも受け取れるので、冒頭の少年じゅんから、ラストの赤い家に住んでいるシーンの全てが、死の間際に見た幻なのかもしれない
いずれにせよ、不思議な設定と純粋な好きという気持ちに溢れた映画で、面白い試みであると思う
彼女のまっすぐな気持ちがたくさんの人を幸せにしたし、事故で記憶が保たないじゅんを助けることにもなっている
病気の影響を考えると、じゅんはりのよりも先に他界している可能性が高いので、あの赤い屋根の家で、彼との日々を思い出していた、と解釈する方がタイトルにも沿うのではないだろうか