「軽快、大胆、破天荒に走り抜く」RHEINGOLD ラインゴールド 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
軽快、大胆、破天荒に走り抜く
ドイツの名匠ファティ・アキンの映画といえば、『そして私たちは愛に帰る』のように静謐な映像の中で切ない心情を謳うこともあれば、『愛より強く』のように凄まじく振り切れたパンキッシュさで魂を燃え上がらせるものもある。ならば新作『ラインゴールド』はどうかというと、これまた主人公の人生を軽快、大胆、破天荒に走り抜いたノンストップな痛快劇だ。原作はラッパーの自伝だというから、本国ドイツの観客はこの大河の流れ着く先をある程度知った上で臨んでいるのだろうが、何も知らない自分としては、国や善悪の境界線をいくつも越えていく運命のうねりにことごとく翻弄された。ラッパー映画といえば50セント、エミネム、N.W.Aを描いた米作品が思い出されるけれど、そこはアキン。中東から西欧を股にかけた国際色豊かな語り口を持ちつつ、ここぞというところでドイツならではの落とし所をしっかり用意しているあたり、なんとも心憎い限りである。
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