「結婚は判断力の欠如、離婚は忍耐力の欠如、そして再婚は記憶力の欠如によるもの(アルマン・サラクルー)」ラブリセット 30日後、離婚します レントさんの映画レビュー(感想・評価)
結婚は判断力の欠如、離婚は忍耐力の欠如、そして再婚は記憶力の欠如によるもの(アルマン・サラクルー)
ダスティン・ホフマンの「卒業」ばりに花嫁を奪い取り劇的な結ばれ方をしたにもかかわらず、ジョンヨルとナラの二人の結婚生活はピリオドを迎える。
離婚調停を経て本当に離婚をするか否か30日間の熟慮期間が与えられる。頭を冷やして頭をまっさらな状態にして冷静に考えなおせという意味で。そこで二人は交通事故に遭い、ともに記憶を失ってしまう。運命のいたずらが二人にチャンスを与える。まさにこの30日間もう一度頭をまっさらな状態に戻して結婚をやり直せるかどうか。
医師の助言によると二人の記憶を取り戻すには今まで通り同居を続けるしかないがそれはあくまでも離婚を前提にした同居。焼け木杭に火が付かないようナラの妹が監視役につく。
しかし記憶を失ったジョンヨルはあれだけ別れたがっていた妻のナラに一目惚れ。ナラの方はタイプじゃないと彼を疎ましく思う。しかし互いの記憶を取り戻すには今まで通り夫婦としての同居を続けなければならない。記憶を取り戻すためという建前とは別にジョンヨルはナラへの恋心を募らせ、ナラも次第にジョンヨルに惹かれていく。お互い出会った頃のように愛し合うようになる二人。そうして触れ合うことで記憶も甦るのではないか。しかし、二人の記憶が甦ることは二人の別れを意味する。
ナラは記憶が戻りませんようにとボールに願いを書きこむ。しかし皮肉にも転んで頭を打ったジョンヨルは記憶が甦ってしまう。それに気づいたナラは離婚を受け入れ海外留学の道へ。
ジョンヨルはナラの願いが書き込まれたボールを見つけて彼女の気持ちを知る。今度は遅れるわけにはいかない。彼女を追い空港へ走る。
自分の中の相手への悪い思いが良い思いを超えたら別れを考えてしまう。二人にとってお互い悪い面ばかり見すぎてお互いがいやになったから離婚を決意した。しかし記憶が失われた二人にとってお互いの良い面の記憶が悪い面を上回ったことで二人は再び結ばれるのだった。
よく生まれ変わってもまた同じ相手と結ばれたいという。二人は記憶がリセットされることで来世で再会するかのような出会いを果たした、というロマンティックな物語。だけど全編にわたりドタバタ満載のコメディー風の作品に。
描きたい主軸となるテーマは前述の通りなのだと思うけど笑いを取りに行こうとして小ネタを仕込ませたり話がぶれ過ぎたりしてどうにも見づらい作品に。
芯となるメインテーマをがっちり固めてところどころ笑わせるような作品に仕上げたら傑作になりえたかも。本作は少し散漫でテレビの連続ドラマを一本の映画作品にまとめたかのような仕上がりに。まさにテレビドラマの企画を映画作品に転用したのではないかな。
もう少し映画作品として盛り上げる部分がほしかった。最終的に記憶を取り戻せばそれは二人の破局につながる、でも記憶を取り戻すことで忘れていたお互いを想う気持ちも一緒に取り戻す。お互い仕事に追われて互いの良い部分を忘れていた。自分が相手のことをどうして好きになったのか。そういう記憶喪失になる前に持っていたはずの相手への想いを思い出すことで本当に二人は記憶を取り戻してもなおやり直せるようになる。そういう結末に持って行けば感動的になったと思うけど。
あと前半のキーワード「無職だから」、「金持ちの娘だから」などは記憶を失った二人がそれを聞くたびに反応して記憶を取り戻す手掛かりにしたら面白かったのにそういう伏線はうまく生かせてなかったりといまいち脚本も弱かった。
ちなみに個人的にはジョンヨルがバルタン星人みたいに笑うところは面白かった。個々の小ネタにハマれば気に入るだろうけど、ハマらない人にはつまらない作品だと思う。他のレビューの通り汚かったり、うるさかったり。