劇場公開日 2024年4月5日

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「父親フリッツの人物像がまだ見えにくいところがある。」アイアンクロー あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5父親フリッツの人物像がまだ見えにくいところがある。

2024年4月11日
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鑑賞方法:映画館

父親フリッツを理解するためには戦国武将のような人物と言ったらよいのだろうか。戦国時代の話が好きな人は分かりやすいのかな。徳川家康が長男信康を切った、他にも息子はいるからってことで、みたいな話だから。
それとも経営者としての姿なのだろうか。ローカルなプロレス団体を主催し、興行し、リングや付属施設も保有している経営者として。
いずれにせよ彼は息子たちをリソースとしてしか考えていない。兄弟の問題は兄弟同士で解決しろといいながら、兄弟間の情愛は無視してコインのエピソードのようにその時調子が上がっている者を選択する冷徹な男。
そして兄弟に解決を委ねる姿勢は妻であり兄弟たちの母親ドリスも同じ。エピソードがある。ケヴィンが父親のマイクへのあたりがきついと母親に訴えたところ兄弟で解決せよと言われる。普通そんなこと言わんよね。つまりこの話は非情な父親と母親に振り回された兄弟の話である。
ほぼ長男(実は二男)のケヴィンの視点による作品で、そのあたりもかなり克明に描かれている。ケヴィンさんは存命のようなのでこの作品を許諾したということは父母との決別を意図しているということだよね。
それでも多少遠慮が入っていると思われる部分はある。ひとつはフリッツの会社での粉飾決算。そして薬物の問題。筋肉増強剤や鎮痛剤はこの家では濫用されていたと思われ、それには父親フリッツの了解や推奨があったのではと思われるのだがそのあたりはチラリとしか出てこない。
もう一つ、フォン・エリック家にはあと一人クリスという末弟がいたはず(この人も故人)映画ではケリーと合わせたかたちになっているようだがなにか出せない事情があったのだろうか。
いずれにせよ映画は兄弟の愛情というところにかなり振れているものの、実際のフォン・エリック家は異常な父親が君臨した異常な家庭だった。故人(フリッツ)のこととはいえ、息子たちの無念を思う時、もっとフリッツ夫妻への告発というトーンが映画でも前に出てもいいのじゃなかったか。

あんちゃん