劇場公開日 2024年4月5日

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「プロレスリングの映画だけど、プロレス初心者でも心に刺さる一作」アイアンクロー yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5プロレスリングの映画だけど、プロレス初心者でも心に刺さる一作

2024年4月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

かつて日本でも名声を博したプロレスラー、フリッツ・フォン・エリックとその家族の物語です。

自分が成し遂げられなかったチャンピオンの夢を息子たちに託し、ひたすた勝ち上がることを強要する父親が主人公となると、『WAVES/ウェイブス』(2019)あたりを観てるとどうなるかなんとなく想像がつくし、実際のエリック家の辿った道もおおよそ映画に描いたとおりなので(ただし実際のエリック家の末弟が登場しないなど、家族構成について改変はあります)、特にプロレスファンにとって結末には特に驚きはないでしょう。

エリック家の兄弟を演じるザック・エフロンらの鍛えに鍛えた身体は、試合場面に迫力をもたらしただけではなく、その肉体的な美しさがむしろ、強権的な父親に押しつぶされる兄弟の物語としての悲劇性を一層高めています。後半の肉体の変化にも注目したいところ。

このように、プロレスラー一家を題材としているから、プロレスファンじゃないとこの作品を楽しめないのか、というと決してそのようなことはなく、試合はあくまでダイジェストを描くにとどめ、むしろ試合の後に彼らに何が起こったのかを掘り下げて描写しています。

一方で、プロレスリング自体の持つ、興行的側面と真剣勝負の要素を、選手や観客がどのように認識しているのか、初心者には判断がつかないところがあり、試合展開をどのように捉えたらいいのか、ちょっと迷ってしまいました。身近にプロレスファンがいたら、この点について聞いてみたかった…。

yui