「大丈夫。そばにいるよ」ブルー きみは大丈夫 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
大丈夫。そばにいるよ
『クワイエット・プレイス』で秀逸な緊迫感を漲らせたジョン・クラシンスキーが、同シリーズの新作(前日譚)を他人に任せてまで撮ったのは、ファンタジー。
題材は、イマジナリーフレンド。
最近、イマジナリーフレンドを題材にした映画が続いてる気が。アメリカでは本作の前に(日本ではこれから)ブラムハウス製作のホラー。日本でも昨冬、『屋根裏のラジャー』があった。
才人が想像した新たなイマジナリーフレンドは…
母親を亡くし、父親も入院中の少女ビー。祖母のアパートに預けられるが、孤独に苛まれる。
そんなある日アパートの上の部屋で、不思議な“生き物”を見掛ける。
勇気を出してその部屋を訪ね、そこにいたのは…
子供の空想上の友達で、子供にしか見えない“IF”=イマジナリーフレンド。
大人になってもIFが見える住人カルであった…。
本作のイマジナリーフレンド(Imaginary Friend)は略して頭文字を取って“IF”と呼ばれている。
“もしかしたら…の存在”の意味も持つ。
よって本作のタイトルは原題こそ正しい。本作には様々なIFが登場し、彼らが見える人間たちとの交流が描かれている。
邦題だとブルーがメインキャラのように思う。勿論ブルーもユニークなキャラしているが、ブロッサムやルイス(声担当ルイス・ゴセットJr.の遺作)ら他のIFも印象残す。
ふわふわもこもこの可愛らしいブルーを推してあざとい客寄せを狙ったのが見え見え。
作品自体は心温まるファンタジー。
子供の頃は見えていたIF。が、大人になるにつれ、見えなくなっていく。
忘れ去られたIFは消えゆく運命にある。
そんなIFの為に、ビーはIFの新たなパートナー探しに奔走。
父と同じ病院に入院している少年ベンジャミン。だが、なかなか彼にはIFが見つからず…と言うか、IFが見えず。(このベンジャミン、ステレオタイプなアジア人少年のような気が…)
IFとかつてのパートナーの再会にも尽力。
ブルーの今は大人になったかつてのパートナーを見つけ、会いに行くが…。ブロッサムのかつてのパートナーは意外な…すぐ傍にいる人物だった。
パートナー探しや再会にも成功。ビーは彼らとの交流に充実したものを見出だす。
そんな時、父親の容態が急変。
寂しそうなビーを励まそうと入院中であっても常に明るく振る舞っていた父。
2度も愛する人を失いたくない。
父の手を握り締め、声をかけ続け、祈るビー。
奇跡が起きた。父親が意識を取り戻し、目を覚ました。
だが不思議な事に、IFが見えなくなっていた…。
IFは子供のただの空想上の存在ってだけじゃない。
とっても悲しい時、とっても辛い時、励まし、支えになるパートナー。
ビーも父親を失うんじゃないかと不安でいっぱいだった。そんなビーを支える為に。
父親は助かった。もう大丈夫。
君はもう一人でやっていける。大人になっていける。
忘れないで。
IFとの別れは大人になるという事だが、ビーは完全に彼らの事を忘れてはいなかった。
心に残っている。パートナーがいた事を…。
ビーのIFって…? いなかったような…?
いた。ずっとビーを見守っていた。
それは意外なパートナーであった…。
クラシンスキーが監督と父親役を兼任。監督として子供たちに伝え、父親として包み込む。
ケイリー・フレミングのキュートさ。
絶好調男ライアン・レイノルズも相変わらずのいい仕事っぷり。
グルー…じゃなくて、ブルーの声担当のスティーヴ・カレル。他にもビッグネームがずらり。
吹替版も悪くなかった。
ビーのIFは、カルであった。
カルの本名はカルビン。ビーが幼い頃描いていたピエロ。
その絵もあるし、カルは前はピエロだったとの台詞もあるし、伏線はちらほら。
ルイスも初対面のビーの本名(エリザベス)を知っていた。
察しがいい人は感付いたかもしれないが、ずっとずっと傍に居て見守ってくれていた存在に、心がほっこり。
全体的に予定調和。ふわふわもこもこというより、ふわっとした感じ。
ちょっと物足りなさもあるかもしれないが、ファミリーで見るには充分。
決して子供向けなだけじゃない。
子供には楽しく、大切な事を。想像する事、信じる事。一人じゃない。
大人には忘れてしまった事を。仕事や人生に追われ、あの頃のような気持ちはもう…。思い出して。
大人だって悩んでいる。もっと深刻に。
そんな時こそ、思い出して。
傍にいるよ。
大丈夫。