侍タイムスリッパーのレビュー・感想・評価
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もちろん面白くはありました
(完全ネタバレなので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
話題になっていた今作の映画『侍タイムスリッパー』を観て来ました。
そして個人的にも面白く観ました。
ただ面白くはあったのですが、不満がなかったわけではないなとは思われました。
その不満の理由は、幕末の会津藩士・高坂新左衛門(山口馬木也さん)が、自身の幕末の価値観と現在(江戸時代の終焉から140年後、監督のインタビューから設定は2007年ごろ)の価値観との違いに戸惑いそれを描くというより、時代劇の衰退がテーマになっていたところでした。
個人的には、真剣で藩のために命をも捧げていた幕末の志士が現在にタイムスリップした時に、果たして現在の殺陣師の殺陣に対して疑問に思わず、殺陣師・関本(峰蘭太郎さん)を師と仰ぐのはあり得るのだろうか、との疑問は感じられました。
幕末の武士の身分が士農工商のトップであり、その特権と儒教的な上下関係の厳しさが叩き込まれているだろう主人公・高坂新左衛門が、現在の(良くも悪くも)なあなあになっている上下の関係性に、戸惑いと怒りを余り感じていないのも多少の違和感はありました。
ただ、おそらくこの映画は、幕末と現在の価値観の違いを描きたかった訳ではなく、それを材料にして時代劇の衰退の方をテーマに描きたかったのだろうな、とは一方で思われました。
しかし映画の最終盤で、高坂新左衛門と映画冒頭で対峙して同じく落雷で幕末からタイムスリップした長州藩士であった風見恭一郎(冨家ノリマサさん)と、会津藩のその後の無念を知った主人公・高坂新左衛門とが、映画撮影の最後のシーンで真剣で戦う場面は、(時代劇の衰退ではなく)幕末の志士の(現在と対比された)場面として描かれていたと思われます。
そうであるならば、初めから(時代劇の衰退でなく)幕末と現在の価値観の違いを中心に描いていた方が、映画作品としてはもっと深みある作品になっていたように、僭越ながら思われました。
もちろん、最後のスタッフロールを見て私も驚愕したように、このスタッフ人数で、おそらく制作予算も相当厳しい中で、内輪受けにならず、浮つきもせず、地に足着いた作品内容になってる時点で称賛以外にあり得ないとは、一方で思われもしました。
今回の点数は、他作品での有名トップクラスの俳優が数多く出演し、掛っている予算も数億円単位の映画と同じ水準で、僭越ながら採点しました。
そうでなければ逆に失礼にも感じたからです。
しかしながらこの制作布陣でこの質の高さは、一方で多くの観客の絶賛を受けているのも全くその通りだと思われてもいます。
小さい場所から広がりを持つことは映画界でも大変な奇跡だと思われますが、今作の映画『侍タイムスリッパー』がそのような奇跡を獲得している事に、観客の一人として一方で素晴らしく嬉しいことだと感じました。
笑いあり・苦悩あり・殺陣ありのエンターテインメント
前半、現代にタイムスリップしたお侍さんが、とんでもない状況にも関わらず、武士の矜持から冷静に振る舞い、かみ合ってないのに話が進んでいくのが面白い。
後半は、自分だけ勤めを果たせず生きていることに苦しみ、けじめのために真剣を用いた決闘を希望。決闘シーンは迫力と緊張感が凄かった。本当に真剣で殺し合いをしているように見えた。
最後にうまいこと話しをまとめ、最後の最後にもうひと笑いを加えて、始まりから終わりまで楽しめる映画でした。
チャンバラとか言ってごめんね
「時代劇は見ない!」
「もう、いいよ。チャンバラとか」と思ってた。
ごめんね。これからは見る とは言い切れないけど、見るかも。
初めましての山口馬木也さんかっこいい。
大人の男の刹那さ、強さ、優しさ。泣ける泣ける泣ける
演技が、役所広司さんと被ってしまった。となると
アカデミー賞主演男優賞候補です。
最後の武士。まさしく真剣勝負。
会津藩の天敵、長州藩。幕府軍に新政府軍。立場の違う2人が出会い、互いの想いをぶつけ合い、真剣勝負にまで進んでいく。観てビックリ‼︎。面白い‼︎。脚本が良い上に、2人のサムライのキャラクターが最高‼︎。最後の闘いのシーン、ど迫力満点で緊張感マックス。その上、意地悪な人や悪い人、1人も出てこない。皆んな、気持ちの良い人ばかり。観ていて居心地の良さ感じた。
エンタメの純度
まるで作り手達の熱量が
エンタメの純度を研磨していくかの始末。
・
衒いもひねりも
あざといテクも無い
素直で誠実な直球の“泣き笑い”その熱量に俺、狼狽える程で、するといつも間にか、ああコレ本物に出会えた、なんて深呼吸してみたり。。
・
終盤30分は俺の映画史に残るぐらい熱中した。
口コミ通り⤴
日曜のお昼に鑑賞。ほぼ満席でした。ところどころ笑い声も聞こえて久しぶりに昔の映画を観た感覚になりました。ほとんど全員知らない俳優さんたちでしたが表情にハッとさせられたり本当に楽しい映画でした。
拙者、感動したで候
俳優は誰も知らない!
手作り感満載のインディーズ映画
設定に多少の無理あれど、
しかし、作り手の信念あり
時代劇への愛情、映画への愛情あり
時代は移ろうが、信念を持って生きろ
胸が熱くなりまする
抜群に面白い映画だった。
抜群に面白い映画だった。
出演している俳優さん、監督さんらスタッフとも知らない方ばかり。
いわゆる大手の映画でもない、インディーズ映画だ。
幕末の侍が現代にタイムスリップするというコメディだ。
ある意味、おこりそうなことがおこっていく。
すごいシナリオと誰も考えもつかなかったことを切り開いていく
そんなストーリーではなく
ある意味、「あ、そうつなげていくのね、で次は」みたいな感じで話は展開していく。
言ってしまえば「想定内」なのかもしれないが、惹きつけていくのは、その演技なのだと思う。
いい表情をする。
いい表情でいいセリフを言う。
上手にずっこける。
その演技の力が物語に力を与え、漫画のようなコメディに引き込んでいく。
圧巻はラストの本身(真剣)を使っての撮影である。
そのシーンの迫力は圧巻だった。みなぎる殺気。緊張感。命を奪う、命を落とすという紙一重の差。まさに手に汗を握るシーンだった。
しかし、この「本身を使っての決闘シーン」自体がこの映画「侍タイムスリッパー」のシーンなのである。
つまり、高坂役の山口さん、風見役の冨塚さんが本身を使って撮影したわけではない。
山口さんと冨塚さんが使っているのはいつもと変わらない「竹光」である。
にもかかわらず、いつもの殺陣とは違う、本身を使っていると思わせる殺陣を演じているのだ。
そのことを思わず忘れさせて引き込む、その凄さ、演出、カメラワークなどは、「時代劇すごいわ」と思わせるのに十分な美しさだった。
それをコメディーベースで見せてしまう。
いや〜やられました。
とても素敵な映画でした。
時代劇はまだまだ死なない。
自主制作でありながら口コミで全国展開まで広がった話題の本作。まず、コメディとしてめちゃめちゃ面白かった。そして時代劇に対するただならぬ愛とリスペクトが込められていてめちゃめちゃ感動もした。
幕末の侍が雷に打たれ現代の時代劇撮影所にタイムスリップ。何が面白いって、そのことをそこそこで受け入れて現代で生きて行くしかないと悟るところ。ここまでのテンポがものすごく良い。そして斬られ役として新たな人生を歩む中で、幕末の終わりやかつて共に生きた会津藩の凄惨な最期に触れ、この平和な時代に来た存在意義を考えるようになる。ただただ面白いだけで終わらせず、日本の侍、武士としての生き様まで感じられる胸熱展開が良い意味で裏切られた。
本物の侍同士の命を賭けた闘い。まるで歴史そのもののような長い沈黙の先。タイムスリップ物としても、時代劇としても本当に全部が上手くいっていた。高評価も納得!
シン・ラストサムライ
この作品には名の通った役者さんは一人もいない。というか、少なくとも私が知っている役者さんは一人もいなかった。
しかし本作は超一級の作品に違いない。いや、ここ数十年見た中で一番の邦画実写映画だと言っても過言ではない。有名俳優を贅沢に使い、中身が空虚な作品ばかりが世に目立つ中で、これほどの完成度の高いエンタメ作品は個人的には「ダイ・ハード」以来だ。
見事な脚本、魅力的なキャラクター、役者さんたちの演技力、どれをとっても非の打ち所がない。まさに文句のつけようがない。よくぞこんな素晴らしい作品を作ってくれました。これはインド映画の「RRR」をも凌駕するほどのエンタメ作品だ。
これこそが真のエンタメだ。聞いてるか、三谷幸喜よ、これが真のエンターテインメント映画だ。名前におぼれた劇作家の目に本作はいったいどう映るんだろうか。
本当にいい映画を見たときには思わず落涙することがある。別に泣かせるシーンとか感動させるシーンでなく、本当によく作られてるなあと感心して感動して泣いてしまうのだ。作り手の観客を楽しませたいという熱い思いがひしひしと伝わるからなんだと思う。本作にはそういうシーンがいくつもある。
たとえばタイムスリップした高坂が独り現代の街の中をさまよい歩くシーン。もうこれだけで異世界に迷い込んでしまった彼の孤独な心情が映像を通して見事に映し出されいて感動してしまう。なんてうまいんだと。そして後半、同じ時代の風見がベテラン俳優として姿を現したときにもやはりその見事な脚本に感動してしまった。
終盤の真剣を使った真剣勝負のシーンでは劇場の観客は私を含め静まり返っていた。みんな息をするのも忘れるくらい張りつめた緊張感に包まれ、まさに本物の侍が目の前で真剣勝負をする姿に映画の中と同様私のいる劇場も固唾をのんで見守っていた。そして決着がついたシーンでは思わずあ、と心の中で声が漏れてしまうほど。
ここまで映画を固唾をのんで見たのはやはり若かりし頃「ダイ・ハード」を劇場で鑑賞した以来だった。まさにマクレーンがハンスと最終決着をつけるシーンに匹敵するほどのシーンであった。
まさか若いころの感受性豊かな頃に感じた感動を再び感じれるとは夢にも思わなかった。本当に本作は奇跡のような作品。
侍が現代にタイムスリップしたらなんていう手垢のついたプロットでここまでの傑作を創り上げた監督にはただただ脱帽である。
知らない役者さんばかりだと書いたが、俳優のみなさんとても魅力的で逆に知らなかった自分を恥ずかしく思うくらい。もっと出演作品が多くてもいいと思うのだけれど。ただ主演の方も時代劇を中心に活躍されていて私自身も時代劇を最近あまり見ていないので致し方ないのかも。私の子供の頃は確かに「遠山の金さん」とか「仮面の忍者赤影」とか夢中で見てたっけ。赤影はちょっと違うか。
本作ではまさに下火になりつつある時代劇への思いが熱く語られる。本作の成功や真田さんの「将軍」をきっかけに再び時代劇人気が盛り返すんではないだろうか。安田監督と真田さんが力を合わせればそれは十分可能だと思われる。二人のタッグを見てみたい。
鑑賞したのがイオンシネマ大日で、まさに寺の和尚夫婦が映画鑑賞したシーンのロケで使われた場所、それだけでもなんだかうれしくなる。
ファンタジア国際映画祭で観客賞を受賞したとのこと。いやいやこんなもんじゃないでしょう。アカデミー賞も狙えるよ。日本のじゃないよ、本場ハリウッドのだよ。何ならカンヌもベルリンもついでにどないだ。ロッテントマトの評価なら間違いなく100%いくだろう。
ちなみに二回目鑑賞する時までにパンフレットの制作よろしくお願いします。
なんだぁ!!?この映画!?定額料金払っても損はなし!
通達が集うシネマ・ロサで評判になってと聞き、題名からして半信半疑・期待しないで観たが大当たり!?役者・脚本パーフェクト!これは大和人はハマる!?老若男女ハマる! 後半は蒲田行進曲を思い出したがこれはこれで御愛嬌。何か現状に不満あっても一生懸命生きていこうと思わせる映画でした。日本映画の夜明けは近い!
最高にエネルギッシュ! 時代劇愛に満ち満ちたハートウォーミングな名作!!
東京・池袋の単館上映から全国ネットにまで拡大され高評価を得ている素晴らしい作品、近くに来てくれてやっと観れました
声をあげて笑ったり、心にグッときてホロッとさせられる、観て良かったとしみじみ思うとても良い作品でした
主人公の田舎侍 高坂を真摯でピュアに演じる山口馬木也さんがメチャクチャ味があっていい
そして風見恭一郎を演じる冨家ノリマサさんのずっしりとして厚みのある演技も見応えがあります
本作はキャスティングもさることながら、大化けしただけあって話が面白い、アイデア勝負の低予算作品に脱帽です
ビッグバジェットだろうが自主制作のインディーズ作品だろうが脚本が作品の良し悪しを決定づけるというお手本的な作品だと思いました
劇中劇という入れ子構造はよくあるが、これまで観てきたのは演者を生業にする人々が舞台や映画で演じるもの、本作は武士が時空を超えて現代の時代劇に出るというもので次元が全く違う、そこが最高に面白い
泣いて笑っての名シーン数あれど、クライマックスの真剣による切り合いが圧巻で一番印象的
特に体感10秒ぐらい続く睨み合いは正に“息を呑む”緊張感、自分の中では邦画史に残る素晴らしい名シーンと記憶に刻みました
「(風見)時代劇はこのまま廃れていき、悲しいかな いずれ無くなってしまうだろう」
「(高坂)でもそれは今日じゃない」
という熱いやりとりにグッときました
マイ生涯ベストの内の1本『トップガン/マーヴェリック(2022)』でもトム・クルーズが高坂と同じ様な名セリフを放つシーンがありました、その熱量に匹敵するほどの熱く燃えたぎる深い時代劇愛に満ちあふれた素晴らしい作品、ここに来てまだこういう名作が生まれてくる映画という世界、やっぱりやめられません
侍の生き様に魂が震える
作り手の時代劇を愛する熱意を感じて目頭が熱くなる。
設定はSFなのだが、役者の鬼気迫る演技により物語の世界にグッと引き込まれていく。
主演の山口馬木也さん演じる会津訛りの真面目でお茶目な侍・高坂をいつのまにか応援し、共感して一緒に涙している。
佇まいが武士らしく、背筋の伸びた美しい所作に役作りへのこだわりを感じる。
冨家ノリマサさん演じる風見は物語の展開を加速させ、どちらに転ぶか予想できない結末に緊張感を保ちながら終盤の殺陣へと物語を盛り上げていく。
舞台挨拶のインタビューを読んだのだが、俳優陣やスタッフが忙しいスケジュールの中で合宿を組んで少しずつ撮影して完成させた作品だそうだ。
時代劇を愛する人が時代劇の良さを歴史に刻もうと挑んだ作品だからこそ観客の胸を熱くさせることができたのだと思う。
劇中で使われる「だが、今日じゃない」と言う台詞は映画「トップガンマーヴェリック」からの引用だと受け取った。
こちらの作品もトムクルーズがCGに頼らず今までの映画作りの原点に立ち返り、実際の戦闘機に乗る訓練を俳優陣が体験してリアルな表情を見事にフィルムに納めた映画史に残る作品だった。
両作品とも作り手の生き様を体感することができる。
ポリコレ配慮で時代背景にそぐわない俳優を起用し、史実をねじ曲げて映画に残すハリウッド作品に今作を見て学んでほしい。
時代を生きたキャラクターの所作や時代背景を尊重することで本当に描きたい世界を観客に伝えることができることを知ってほしい。
時代劇が地上波放送から消え、デジタルコンテンツでの映画配信に戸惑う年配の方も多いとお察しする。
劇場ではご年配の方も鑑賞されており、時代劇を映画として残したいのだと言うセリフに涙を拭っていらっしゃった。京都や松竹のスタジオで撮られた時代劇が懐かしい。
日本の時代劇=アメコミヒーロー的な立ち位置だと思う。
国民的に愛された勧善懲悪の物語はみんなが平等で悪者なんていないとする現代の価値観では描かれにくくなったが、今作では時代をタイムスリップさせることによって主人公を含めたキャラクターの心情の変化として描かれたことで物語に深みが増すと言う効果が生まれていたのは見事な脚本だった。
自分の好きな邦画第一位になった。
単館1館から全国上映にまで広がった侍の生き様をぜひスクリーンでご覧下さい。
非の打ち所がない面白さ
これまで観てきた邦画の中で一番面白かったと言っても
過言ではない。
観に行って本当に良かった。
これがインディーズとは思えない完成度で、
ストーリーが無理なく緩急もあって見ていて気持ち良いし、
面白いものがきちんと面白いと評価されて全国で拡大上映されている
この事実自体も気持ち良い。
ちょっと検索するだけでもいろんなエピソードに事欠かない異色作だが
作品には真心や情熱など色々なものがぎっしり詰まっていて
時代劇としても本当に面白いものだった。
個人的に最近、映画 邪魚隊を見て監督のコメントも聞いて
時代劇を継承していって欲しい、
本格映画や大河ドラマだけでなく、毎週お茶の間で見るような
ライトな番組を続けていって欲しいと思っていたところだったので
その気持ちともリンクする内容だった。
武士が現代へタイムスリップするというネタ自体は目新しいものではない。
その分わかりやすいのは良いことでもあって、
いつタイムスリップするのかな、雨が降ってきたからこの雷で
タイムスリップしてしまうのかなと観客に予想がつき
いざその通りになる予定調和な展開がもう時代劇の良さとニアリーイコールで良い。
開始数分で高坂さんが好きになってしまう。
個人的に会津藩士というだけでもう肩入れしたくなるのだが
所作がずっと大変美しく、実直な武士感がある。
襷掛けをし股立ちを取って凛々しく、立ち合いのシーンでははらはらし、
いざ現代に来てしまった時に一瞬ぼうとした後はっとして敵の姿を探す
人間みがあるところも良い。
どうやら敵がいないと分かると襷掛けをはずして居住まいを正し、
撮影現場がわからず混乱しつつも一度目で既に娘を助けようと
柄に手をかけている。
二度目はなんと「助太刀いたす」。
良い人過ぎて、だからこその空回りが気の毒だけれど笑いを誘う。
真剣なのではらはらしたが事件にはならなくて良かった。
撮影所にタイムスリップしてしまったことで
本来ならすぐ浮き彫りになりそうな違和感が見事に見逃され
なんとなくちょっと変程度で済んでいくのも絶妙。
先に書いた映画邪魚隊の主演俳優の方が、先輩たちが気にせず
衣装のまま近くのコンビニへ出かけていって驚いたというのを読んでいたので
余計になるほどそういうことなのか、と思った。
未来に来てしまったと察する時
活字の現代の平仮名をそんなに流暢に読めるものかと思わなくもないが
逆に言えばここまで無理があるとちょっとでも思う設定が全くなかったということだ。
撮影で江戸といいつつ実際の場所は京都という時代劇あるあるに加え
京都だからこそさっきまでいたはずの寺を見つける展開がなるほどと思わされる。
もうすっかり高坂さんが好きになっているから、切腹しようとしたり
雷が落ちて欲しいと抜刀したりする姿にはもう感情移入して泣けてしまう。
屡々誤解されがちな剣術と殺陣の違いにも言及されていて良い。
本当なら高坂さんがやっていた流派が残っていたらそこの道場の方が
腕を活かせるとは思うがそれもそれだけで食っていけるものでもなかろうし
何より優子の作ったドラマに感動したという前フリがあるから
高坂が殺陣をやりたいと言い出すところも説得力があった。
展開的にも高坂がタイムスリップしたと理解するところから
斬られ役で生きていこうと決意するまでは非常に早いのだが
小説ならいざ知らず短い映画でだらだらやる部分でもない訳で
見切りをつける監督のバランス感覚が良い。
監督が京都の方なせいか、全体的に京都人の解像度が高いところも好きだ。
関西弁がちゃんと京都弁だし、大阪とは違う絶妙なボケやツッコミが素晴らしい。
「東京に下りはった」の台詞なんて最高である。
風見の正体は実は30年先に飛ばされていた山形というのもわかりやすいし
ここまで高坂が苦労してきた姿を観客は見てきたわけだから
短い回想でも山形がここまでの役者になるのにどれだけ大変だったか
理解できて感情移入もできるし、
タイムスリップしてしまった仲間として割り切れない
高坂の会津武士の実直さと頑固さの表現も納得だった。
山形が元の時代で人を殺したことがあるからこそ
殺陣でうまく死んでいく人を見てトラウマになってしまうのも
人間だなという感じ。
台本が追加された時会津の描写に手を合わせる高坂のシーンもたまらない。
真剣を使うという案には肝が冷えたが
本物の武士で実際真剣勝負中に現代に飛ばされてきた二人、
その提案自体に無理を感じない。
日本の映画史を考えると真剣使用自体はあった訳で、
観客の脳裏にも色々なことが過ったのでは。
真剣での撮影シーンでは
長時間の無音などの間で緩急をつけて刀が重く感じ、
何度も叫びそうになった。
最後の決着まで含めて非常に良いシーンだった。
幕末の動乱期のことも、時代劇というシーンについても
いつか忘れ去られる日がくる。
でも、それは今ではない。
泣けた。
優子がビンタを食らわせてくる緩急の付け方も笑えた。
いけよ、という感じの山形に
「今ではない」という高坂の返しという脚本のセンスが良い。
全体的に完全な善人ではないが悪い人がヤンキーくらいしか出てこなくて
そこもストレスなく見られる理由のひとつ。
高坂と優子の恋愛もうっすらとした要素でしかなかったのも良かった。
あれだけ話題の映画に出て、まだ斬られ役を続けることになるのか
というのは謎ではあるが
高坂の実直さが表れていて良いし
風見も言及していた同僚までもまた撮影所に飛ばされてくるという
オチまで含めて素晴らしい終わり方だった。
曲の使い方も良かった。
この曲がかかるということは高坂の活躍が見られるか、
という感じでこれもまたわかりやすい。
公式サイトを見るだけでも
如何に脚本が面白く、それに惚れたからこそこれだけの人が集まり
協力してくれたかということがよく分かる。
時代劇の自主制作なんで本来反対するんやけど、と東映京都撮影所から
なんとかしてやりたいと声をかけてくれたのも凄すぎるし、
作品中でも描かれていた時代劇の現代日本での”コスパの悪さ”も実感する台詞だ。
助監督役の女性が実際でも助監督というところもすごい。
監督もビデオ撮影業スタートでなんでもできてしまう人な上
ご実家の農家を継いでおられるという異色な経歴。
これだけヒットしたら米作りも映画作りも続けられそうだろうか。
ロングランは勿論、次回作も期待したい。
そこで斬っちゃうんじゃないかとドキドキ
ひょんなことから現代にタイムスリップしたお侍さん。根は温厚なようで、現代日本人にあれこれ言われてキレて斬っちゃうんじゃないかと常にハラハラしてしまいました。
途中から出てくる方、存在をすっかり忘れたところで「実は…」となってはっとしました。
更にもう一人いて「そういえばそうだった…」
鑑賞した映画館の音響設備のせいなのか、音は良いのですが大きすぎて耳に負担なのが唯一残念な所。
時代劇への愛が溢れています!!
古今東西、山の数ほど作られて来たタイムスリップ物の中で、侍がタイムスリップする話は新鮮味は無い。(コンプラ教育のビデオでも同じ設定があるくらい…)
しかしこの映画は緩急とテンポが良く、あっと言う間に映画の世界に連れて行かれます。 (役者も良いよね!)
今年、今まで観た映画で一番良いかも!
『カメラを止めるな』様なヒットとTVで紹介されていたけど、ワンアイディアの『カメ止め』とは違い、丁寧にきちんと作られた王道の映画です!
今、一番皆に見て欲しい映画です!
滅びゆく侍、時代劇…
But not today !!
笑って泣いて。
深まっていく男の友情にジーンと来ました。
脚本の素晴らしさもありますが、主演のベテラン俳優2人の演技力が作品の魅力を大きなものにしていると感じました。
観客の年齢層が高かったのも印象的です。
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