「預貯金使い、車を売って作った安田監督魂の一作」侍タイムスリッパー somebukiさんの映画レビュー(感想・評価)
預貯金使い、車を売って作った安田監督魂の一作
自主映画で単館上映から全国へ、そして日本アカデミー賞の作品賞を受賞した歴史を変えたインディーズ映画。
監督は農業しながら自主映画を制作し、本作長編3作目となる安田淳一監督。
安田監督は本作を取るために預貯金を注ぎ、持っていた車を売るという身を削り削って制作したらしい。
物語は・・・
侍があるきっかけから現代にタイムスリップしてしまい、偶然紛れ込んだ時代劇の斬られ役へ
成り上がっていく話。
まず見終わって感じたこと
「この映画を劇場で見たかった!!」
ラストの命をかけた殺陣のシーンの冒頭、
2人の睨み合いの「間」、これは劇場の没入できる場所でぜひ味わいたかった。
配信で見ていたけど、「え?これ止まってる?」って思わずリモコンを探そうとした瞬間に始まった。
物語はよくある時代を超えたタイムスリップ系かと思いきや、そうぞう異常にアイデアが面白い。全て想像を裏切られた。
現世にタイムスリップしながらも、頑張って馴染もうとする姿勢や、剣術を鍛えていたからこそ斬られ役に突き進むストーリーが笑えて、そして気がついたら引き込まれて、気がついたら感動させられていた。
ストーリーが面白いのはもちろんやけど、さまざまな熱いメッセージに溢れた作品でもあった。
まず、なんといっても衰退していく時代劇に対する鼓舞、
昔は「暴れん坊将軍」「水戸黄門」「必殺仕事人」など時代劇がさかんだったが、今は地上波でも放送されることは無くなったことをセリフを通して観客に伝えている。それほど苦しい状況の中で、この作品は時代劇の素晴らしさを表していたと思う。
次に努力する人を背中を押してくれる内容。
努力し続ければ誰かが見てくれている、努力は決して無駄ではないという言葉。
特集番組の「アナザーストーリーズ」に描かれていた斬られ役のレジェンドである福本清三さん自身がずっと斬られ役に魂込めて演じた結果60歳になって注目されたという話が、この映画を通して伝えてられていた気がする。
そして、何より映画を作ることの素晴らしさを映画の内容だけでなく、作りきった結果、1つの映画館からアカデミー賞までたどり着く歴史に残る偉業は、何があっても面白いものを作りたいという安田監督およびキャストやスタッフ全員の熱い想いがあったからこその作品だと思う。
熱量は常識を破る。
ものづくりの原点を感じる映画です。