「稀に見る心地良い鑑賞体験」侍タイムスリッパー komasaさんの映画レビュー(感想・評価)
稀に見る心地良い鑑賞体験
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映画を観ながら堪えきれずに吹き出してしまう。そんな笑い声がそこかしこから聞こえてくる。客席全体が温かい空気に包まれる、とても良い鑑賞体験。主人公を演じた山口馬木也さんの分厚く大きく見える手が印象に残った。
現代の街中を武士が彷徨う風景の面白さ。幕末の延長にある現在のはずなのに、その隔たりの大きさをまざまざと見せつける。
困った人を助ける精神、白いご飯食べられる有り難さ、浅漬けの浸け具合が良かったと喜べる日常。忘れていたものを色々と思い出させてくれる。
郷里会津のその後を知り、殺陣でなく真剣での立ち会いを所望する高坂と、それを受ける風見。真剣を使うのはどうかとも思ったが、彼等のけじめを付けるにはどうしても必要な事だったんだなと思う。そこに監督の狂気が相まって繰り広げられる斬り合いの恐怖を感じるほどの迫力。本当に本身を使っていると感じさせるプロの技の凄さを見せつけられる。
お約束を丁寧に積み重ねてきたストーリー。最後のオチまで見事に決めて、誰かの温かい拍手とともに幕を閉じた。
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子供の頃、祖父母と昼夜二本三本と観る事も多かった時代劇。悪代官と行ったらこの人、と言うような今でも顔を思い出す人も何人か。名前も知らぬその人達を見ながら、前の話で死んだはずの人が何故また斬られているんだろう、と子供心に思っていたことを懐かしく思い出す。撮影で真剣を使って事故が起きたというニュースを何度か聞いた記憶もある。そんな人たちの名前は何万回斬られた男、何万回死んだ男と冠されテレビや新聞で目にする訃報ばかり。何とも不義理をしてきてしまったものだと気付かされる。
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