「滅びゆく会津藩、滅びゆく時代劇」侍タイムスリッパー パジャマさんの映画レビュー(感想・評価)
滅びゆく会津藩、滅びゆく時代劇
だがそれは今日じゃない!
個人的な事情として、会津で生まれ育った人間として、こういった映画の主役が会津藩士であることがとても嬉しかったです。なので☆は+0.5しちゃいます!
会津訛りに親しみが持てて(少し引っかかる部分もありましたが時代の違いということで…)誠実で実直な主人公の人柄が好ましく、現代へ順応する様子と侍として譲れない芯の部分などが伝わる素晴らしい演技でした。
会津藩の歴史を知るところは高坂さんの心情を思うと辛く泣けてしまいましたが、淡々とナレーションで語られるのみで悲劇的に描かれすぎていないところがとても良かったです。悲観的な歴史観を否定したいわけではないのですが(わたしが子どもの頃は実際に長州憎しのお年寄りも身近にいました)、風見さんの言葉がすべてだと個人的には思っています。
タイムスリップものはやはり現代の文化技術に対するリアクションに1つの醍醐味を感じているのですが、白米のおにぎりを食べて磐梯山の雪に例えるところがとても好きでニヤリとしてしまいました。会津の人間にとってやはり磐梯山は特別な山で、富士山にも劣らない名峰なのです。また、お茶菓子に出たショートケーキを食べて、日本が豊かな国になったことに涙を浮かべる姿にはこちらもほろりと泣けてきてしまいました。あの時代の人々が、一藩士に至るまで日本の行く末を案じ志を持って未来を信じ戦っていたことが伝わってきました。
また、時代劇が滅びゆく最中である事実に対して、「だが今日じゃない」と力強い言葉が聞けたのを嬉しく思います。祖父母と共に夕方の時代劇の再放送を見ていた幼い頃の記憶がよみがえり、ノスタルジックな気持ちと共に、これからも、細くとも、長く続いてほしい文化だと願わずにはいられませんでした。
いつか、高坂さんには現代の会津に来てほしいです。戊辰戦争の折、城は新政府軍の砲撃で穴だらけのボロボロになりました。復元された天守閣は当時のものとはまた違うかもしれませんが、会津の人たちの強い思いの結晶です。それはあの時代を必死で生きた高坂さんたちの魂と通じるところがあると思うのです。