「時空を超えての侍スピリット人情劇」侍タイムスリッパー bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
時空を超えての侍スピリット人情劇
この夏に1館だけで上映され、口コミで広まっていった話題の作品が、ようやく近所のシネコンでも公開され、早速、鑑賞してきた。近くにいた、普段はあまり映画を見慣れないだろうと思われる叔母ちゃんや爺ちゃんが、声を出して笑ったり、涙ぐんだりしていてのだから、それだけでこの作品に入り込めるエンタメ性の高さが覗われる。
物語は、幕末の武士が、決闘中に雷に打たれ、現代にタイムスリップするところから始まる。そこで、ある寺の住職に救われ、時代劇の撮影所の切られ役として、日々、奮闘していく展開。基本はタイムスリップというSFなのだが、サイエンティックな要素は全くなく、現代と幕末の世の違いに戸惑う主人公のコミカルさや、幕末に生きた者同士だからこそ通じ合う侍としての誇り、そして、人と人との心温まる絆を組み合わせて、感動と人情味あふれるエンター・テイメントな作品として仕上げている。
幕末から140年の時を経てタイムスリップし、現代に舞い降りた主人公の海津藩の侍・高坂新左衛門が、右往左往する立ち居振る舞いの滑稽さが、前半の面白さと言える。現代人からしたらそんな風変りの高坂を、住職夫妻と映画助監督のマドンナが、心優しく包んでいく中盤。そして、後半にかけては、宿敵との出会いによって、侍スピリットに再び火が付き、感動のクライマックスの決闘へと導かれていき、起承転結がよくできた内容となっている。
特に、ラストの高坂新左衛門と風見恭一郎との真剣を使っての一騎打ちの立ち回りは、本当に手を汗を握り、胸を熱くするものを感じた。会場からはすすり泣く声が聴かれ、時代劇の決闘シーンで、これほどに食い入るように入り込んだシーンは、これまで無かったように思う。
また、その風見恭一郎の正体が明かされた時や、ラストのラストでタイムスリップしてくる侍が現れるシーン等は、冒頭のシーンの布石をしっかり回収し、よく練られた脚本に意外性のある満足感で満たしてくれた。
最近の日本映画は、ちょっとドラマで人気が出ると、直ぐに映画化するし、有名俳優陣ありきの作品が多い傾向にある。本作の様に、自分が知っている俳優は、誰一人として出演していないが、『カメラを止めるな』と同様に、低予算ながらも、これだけ心打ち、楽しめる作品を作り上げる日本映画は、まだまだ捨てたものじゃない。
チャキオさん(^^)コメントありがとうございます😊
ホントにその通りですよね。最近は、ドラマが直ぐに中途半端な映画化される事が多い日本映画。こんな作品が、認められて多くの人の目に留まるのは嬉しいですよね。
共感ありがとうございます。お金をかけずとも、しっかりした脚本とちゃんと演技をこなせる俳優さん達がいれば、こんなに見事な映画ができるだなぁ、とつくづく感じています。今作の雰囲気を上手に引き継ぐ形で続編を観てみたいです。