「異文化理解」侍タイムスリッパー ミカエルさんの映画レビュー(感想・評価)
異文化理解
時代劇が衰退した理由は、時代劇は高齢者向けという固定観念ができあがってしまったからだという。今、時代劇はテレビから配信サービスへ視聴の場が移行しているが、その契約者は60歳以上が8割を占めているらしい。
そんな中、この映画は、従来の時代劇の概念を覆し、SFと融合させ、コメディタッチに軽快に描くことによって、若い世代を含む幅広い観客層に、時代劇の魅力を再認識させている。
幕末の世から平成の世にタイムスリップした侍である高坂新左衛門は、時代劇の斬られ役として生きていく過程で、「侍としての誇り」を失わずに、現代の価値観を理解し、適応していく。忠誠心、誠実さ、勇気といった価値観は時代が変わっても重要なものなのか、それとも時代とともに変化すべきものなのか、自分のアイデンティティを保ちつつ、異なる価値観を受け入れていく。「侍としての誇り」は、現代社会では時に滑稽に映る一方、彼の揺るぎない信念や誠実さは、現代人の心に新鮮な感動を呼び起こす。そして、伝統と革新、過去と現在の違いから生まれる異文化を理解することは、グローバル化が進む現代社会を生きる私たちへの重要なメッセージとなっているともいえるだろう。
タイムスリップは異なる時代の価値観を直接対比させる。これにより、私たちは自分たちの社会や文化を客観的に見つめ直す機会を得ることができる。
また、この映画は、その予算規模から考えると驚くほど高い質を実現している。大規模なオープンセットを用意することなく、現代の撮影所を舞台にすることで、時代劇の撮影現場という設定を自然に組み込んでいる、タイムスリップの表現は、大掛かりなCG効果に頼ることなく、照明や音響効果、そして俳優の演技力を駆使している、アクションシーンは、大人数での派手な戦闘シーンではなく、少人数での緊迫した立ち回りになっている。
単なるタイムスリップコメディを超えた深い洞察と普遍的なテーマを持つ作品である。