「これはいい。」侍タイムスリッパー callさんの映画レビュー(感想・評価)
これはいい。
「インディーズの監督作った映画で、単館上映のはずが評判が評判を呼んで全国ロードショーに」映画ファンなら誰しも「カメラを止めるな」を思い出す前向上です。
カメ止め並みにハードルがあがりますが、それでも見に行きました。これはすごい。
カメ止めが「脚本の勝利」ならば、侍タイムスリッパ―は「演者」の勝利です。
いちいち演技の仕方が良い。その演技をしっかりと作品に落とし込んだ製作陣の大勝利でしょう。
序盤から中盤まではちょっとしつこいくらい「朴訥な田舎侍でござるよ」アピールをされているなと思っていたのですが、それが丁寧に丁寧に新さんのキャラクターを作りこんだ結果へとつながります。
その作りこまれたキャラクター性があってこそのあの斬りあいと雰囲気につながるのでしょう。
ものすごい長尺の「間」が苦行にも飽きにもならず、この先が見たいけどケガをしてほしくはない。「来ます。来てほしくなけど」の思いを視聴者に共有させるのはそこまでの新さんのキャラクターが成立していてこそでした。
一方で脚本・ストーリーそのものに大どんでん返しを、そこまでの伏線が一気に回収されるカタルシスを期待するとずっこけます。王道です。
これについては良い悪いではないと思います。素材の味を生かすために変な変わり種をぶちこまないで「この演者、すごいでしょ!」と押し出す形。
劇中の風見さんも新さんも、きっとこういう演技と演者のスゴみで評判をあげていったのでしょう。
映画館で見てよかった。
サブスクサービスで見ていたら、おそらくスマホ片手に見てしまって最後のシーンにたどり着けるかどうかわからなかった。
これはじっくり向き合ってみるべき映画、真摯に画面を見つめる映画館でこそ、クライマックスを最大限に楽しむための土台を作っていける映画でした。
何より、主演の熱演が最強の映画です。この人を超える演技をしている主演級の俳優がいったい何人いるというのでしょうか、、、
どんぐりさんよろしく、今後、別の映画やテレビで見たいものです。
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ところで山本優子さんの関西弁がちょっと気になりました。
明確に違うわけでもなくエセではないです、でもな~んかちょっとイントネーションがズレているのではと……。
「関西弁なら関西人使えや」と思っていたのですが、どうやら演者さんは兵庫県出身のご様子。うーん、何が違うんでしょうね。
兵庫の人が京都に寄せようとしたらこうなるのでしょうか???
他の演者さんの関西弁がそのまま関西弁なので、すーっと入ってきたのでその一点がやけに気になったのでした。
べっぴんな姉ちゃん。……が、ヒロイン役というにはトシ食ってないかな。20代後半くらいかなぁ、と思っていたら……。俳優のWiki見てびっくりしました。
【小ネタ】
・「東京にくだりはってん」わかるわかるwww
・師匠と弟子という関係になっている時の稽古中にも「なんでやねん!!」のノリつっこみ、わかる。超わかる。関西人だもの。
・安藤彰則さんの印象に残りまくる顔と表情。良い。
・「オチ」はそうだろうなと思っていたので、もうちょっとびっくりさせてほしかった。
・「上段の構え」はもうひとひねりできたんじゃないかな。「殺し合いを前提とした上段の構え」→「演技を前提とした周囲に配慮する上段の構え」という仕込みができていたので、あのシーンを「殺し合い」と印象付ける要素にできた気がする。いや、あれは「俳優」としてそこにいたのだから成長した新さんを出すからあの上段でもいいのだ。いや、それでも…。……と堂々巡り。もしそこまで考えさせることを狙っての演出だとしたら白旗ものです。