劇場公開日 2024年8月17日

「監督の情熱が太秦を動かした!」侍タイムスリッパー pipiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0監督の情熱が太秦を動かした!

2024年10月19日
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鑑賞方法:映画館

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カメ止め的位置付けという文字を見かけて、それならばと一切の事前情報を入れずに鑑賞してきた。
低予算のインディーズ作品と考えれば異例の秀逸な作品。

まず脚本が素晴らしい。時代劇を愛する強い想いに、幕末を生きた勤王と佐幕の志士2人の魂を打つような深い想いを重ね合わせたところが見事である。
幕末も時代劇も現代の若者にとっては歴史教科書の1頁以上の意味をもたないかもしれない。
しかし、時代劇という形で「幕末の志」を後世に残す事に高坂と山形、2人の侍は命を賭ける価値を見いだす。
それはまさしく「時代劇の魂」を残したい!という想いと重なり、長年太秦を支えてきた人々の心を捉えたのだ。

監督は当初、敬愛する伝説の斬られ役福本清三氏(ラストサムライではトムクルーズとも共演。だから決め台詞がNot todayなんだろうと思います。)に主演をお願い出来ないか?と考え脚本を送っていた。福本さんは実はすでに肺癌闘病中だったが脚本が面白い!と考え、時代劇関係者、太秦関係者各方面に話をしてくれた。「なんとかならへんかな?安田(監督)さんに使わせたってええんちゃう?」と。

主演、山口馬木也もそんな縁で脚本に触れた1人。福本氏亡きあと安田監督は膨大な人数のオーディションを行っていたそうだが、そんな事はまったく知らない山口は「この役を是非演らせて欲しい」と監督に声をかける。そして見事に主演を射止めてしまったわけだ。
監督の方もまさか山口ほどの実力者が自ら立候補してくれるなど考えもしていなかったであろう。

冨家ノリマサ、ランタン(峰蘭太郎)、福田善晴、紅萬子、井上肇という実力派超ベテラン勢が脇を固めてくれる。(知らない役者さんばかり、と思われた方、もし平成時代にTVドラマをよくご覧になっていたなら絶対見かけてます。特に時代劇では。ハンバーグステーキ食べる時に付け合わせのブロッコリーを意識していなかっただけ)

殺陣は東映剣会(つるぎかい)トップクラスの清家一斗。「父(清家三彦氏)をこの作品で超える!」という情熱で参加。
カツラ、メイク、衣装、照明も時代劇を知り尽くした最高のスタッフが力を貸してくれた。

いくら撮影所の使用許可が降りても、彼らの愛情溢れる全面的なバックアップがなかったら、監督1人でこのクオリティを生み出す事は不可能だっただろう。(着物の選び方ひとつだってそう)

作風の印象は、テルマエロマエからコミカル・コメディの部分を大きく削り、じんわり涙ぐむような温かさのシーンを比較的多めに盛り込んだ感じ。(コミカルなシーンも多いんだけど、笑わせる事自体が主眼ではない)
会津藩の悲劇を知った高坂の慟哭には胸を抉られる。

設定が細かいなー、と思ったのはスマホが登場しない事。ガラケー主流だった1990年代後半くらいの設定なんですね。地上波でまだ新作時代劇放送やってるわけですから。
という事は、里見浩太朗、、、じゃなかった風見恭一郎が斬られ役の下積みからスタートした時期は1960年代ってわけですよ!ほら、時代の感覚ぴったりでしょ?納得したでしょ(笑)

田村ツトムくんの心配無用ノ介は、萬屋錦之介でも高橋英樹でも松平健でもなくて、蒲田行進曲の「銀ちゃ〜ん」かと思いましたwww

あと驚いたのが、本作でも本当に助監督との二足の草鞋を履いた沙倉ゆうのちゃんが45歳という事ですね。見えないわー。銀幕の中では30歳でもイケると思ったわー。お見事。

本作を観て改めて感じたのは、実力があっても主役の話が回ってくるのは幸運な一握りだけなのだな、という事。
そして
若い頃から主役を張る一部の役者さん達は、演技のアーティスト(表現者)なのかもしれない。
それに対して、脇を固める実力派は演技の「職人」なのかもしれない。
(冨家さんなんて、ほんと里見さんぽく見えました)

そんな「職人」さん達が熱い想いを込めた本作。
コツコツ真面目にやっていれば、見る人は見ていてくれる。
関係者全員に共通するそんな想いが、現実となったのでしょう。
応援したくなる一作でした。
良い作品を世に生み出してくれてありがとう!

pipi
シネマディクトさんのコメント
2024年10月25日

ゆうのさん、実年齢をしっても可愛い。一発でファンになりました。

シネマディクト
seiyoさんのコメント
2024年10月25日

おはようございます。
コメントありがとうございます☺️

今月の14日まで下関で開催していましたよね

2月から東京開催みたいなので、楽しみです。

seiyo
シネマディクトさんのコメント
2024年10月25日

pipiさん、お久しぶりです!いろんな情報ありがとうございました。沙倉ゆうのさん、とてもチャーミングな女優さんでした。福本清三さんのエピソード,素晴らしいです。これだけでドラマになりそう。だから、エンドロールに福本さんを偲ぶメッセージが真っ先に入ってたんですね。納得しました。

シネマディクト
ゆり。さんのコメント
2024年10月24日

pipiさんの情報収集力と的確な分析力でとても面白いレビューでした。時代劇だけでなく、映画全体の鑑賞人口も減っていますが、それをなんとかしたいという熱い想いも感じます。

ゆり。
seiyoさんのコメント
2024年10月21日

こんにちは~
昨日池袋に行き、最後の乗客を観てきました。
先月も、池袋に行きましたが、萩尾望都先生のトークショーに行って来ました。

無料の200人定員でした。
もちろん満員で生萩尾望都大先生を見られて大感激でした。

seiyo
sow_miyaさんのコメント
2024年10月20日

コメントありがとうございました。
情熱溢れるレビューに感動しました。
時代考証など、とてもスッキリしましたし、ラストサムライとのつながりも納得です。

sow_miya
みかずきさんのコメント
2024年10月20日

みかずきです
お久し振りです

熱いレビューですね。

本作、時代劇ファンには堪らない作品でした。
クライマックスの決闘シーンは圧倒的な迫力で、
時代劇の醍醐味を堪能できました。
衰退する時代劇を支える人達の熱い想いに溢れていて、
嬉しくて涙が止まりませんでした。
時代劇は死なず!これからも時代劇ファンとして時代劇を観続けていきたいです。

ー以上ー

みかずき
CBさんのコメント
2024年10月20日

pipiさんがコメントしてくれた「みんなが監督を支えている(からできた映画)」って、いい言葉ですね〜

CB
CBさんのコメント
2024年10月20日

そうなんですね。山口さん、大物俳優だったんですね。知らなくてごめんなさい。
(女優しか知らないから、山口さんだけを知らないわけではなくて、ほぼ誰も知らないです。とほほ…)

CB
NOBUさんのコメント
2024年10月20日

おはようございます。コメント有難うございます。
 仰る通り、今作の俳優さん達はいぶし銀の様な名優さんが多いですよね。
 この作品は会社近くのミニシアターで観ましたが、今やイオンシネマ岡崎、ユナイテッドシネマ岡崎でも上映され、フライヤーもパンフも売ってます。良作がたった一館からここまで上映館が増えるのは、作品の熱量が凄いからだと思っていますよ。では。
 (昨晩、息子が帰省し久しぶりに酒を飲んだら今朝から調子が悪いNOBUでした。酒は魔物です・・。(涙))

NOBU
seiyoさんのコメント
2024年10月19日

こちらこそコメントありがとうございます☺️

seiyo
talismanさんのコメント
2024年10月19日

銀ちゃん、忘れられません~!

talisman
talismanさんのコメント
2024年10月19日

太秦ですよね!

talisman
グレシャムの法則さんのコメント
2024年10月19日

こんばんは。
コメントありがとうございます。
個人的なことで恐縮ですが、今年の4月から、子どもたちの成長を支援する仕事に関わることになり、大人たちのいい加減さがいかに子どもたちに影響するのか、身につまされる日々を送ってます。
そういう環境にいるせいか、小さくても大事なことはちゃんと伝えなくてはいけないと思うことが多いんですよね。
だから、映画を見る時もなんだか細部まで気になってしまい…一種の職業病です🤣

グレシャムの法則
seiyoさんのコメント
2024年10月19日

こんばんは~。共感ありがとうございます。
素晴らしいレビューです。

明日、冨家ノリマサさんの
最後の乗客観てきます

seiyo
Mr.C.B.2さんのコメント
2024年10月19日

共感・コメントどうもです。
カメ止めがギャラ配分でもめたらしいので、本作はパーセンテージ契約らしいです。でも、基本プラス歩合にしてなかったらしく、興業終了しないと(確定しないから)パーセンテージが貰えないらしいですよ。きっと日本の映画界って、こういう所がずっと丼勘定だったのでしょうね。
あ、あと「蒲田行進曲」ですね。(スイマセン、NOBUさんにもこんなツッコミしてばかりで)

Mr.C.B.2