「イッツ・ア・京都マジック」侍タイムスリッパー jfs2019さんの映画レビュー(感想・評価)
イッツ・ア・京都マジック
時代劇はほとんど見たことなかったのだけど、とにかく脚本が素晴らしい。
幕府は倒れたけれど、140年経って普通の人が白飯のおにぎりやショートケーキを食べられる、日本はそんな豊かな国になったと納得をする。頑張る助監督へほのかな恋心を持つ(それにしても優子どのはほんとにいい子だな)。かつての仇敵の長州藩士とも心が通じたと思いきや、会津藩の悲惨な最後を知り、自棄になって改めて敵討ちの決闘を企てる(こういう史実を絶妙に絡めながらの話運びもシビれた)。トドメを刺す寸前に思いとどまる。世は移ろい侍も時代劇もいずれ消えていくもの、でも、今はその時ではないと気づく。その時々の主人公の高坂さんの心中が痛いほど伝わってきたし、共感できた。そして、鑑賞後、爽やかな気持ちになった。
舞台が京都に設定されているのもよい。時代劇の撮影所があるだけでなく、撮影所の外でも140年以上前から同じ場所に同じ寺が変わらぬ姿であるのも当たり前。マジックリアリズムのメッカである京都なら、雷に撃たれてタイムスリップしてきた侍がそのへんを歩いてても「けったいなやっちゃな」と思われるだけで、受け入れられてしまう。たとえ狸や天狗が人間に紛れて跋扈していても、まぁよろしいがなと受け入れてしまえる森見登美彦の小説のように。
普段、時代劇を見慣れていないので、正直、殺陣が実際どの程度のレベルなのかはわからないが、わたしの目にはとても迫力があり、格好良く、引き込まれるものであった。廃れゆく時代劇にも真剣に取り組む人たちがいて、ちゃんと技術を継承している。
最後のシーンに、実は侍タイムスリッパーではなく、侍タイムスリッパーズじゃないか、と思ったのだけどそれを言うとタイトルでネタバレしてしまいますからね。
つい最近、時代劇がエミー賞を総舐めしたこともあったし、海外でもヒットしてほしい。その実力は十分にある。
uzさん、momokichiさん、コメントありがとうございます。そういうわたしはそもそも京都というだけでテンションが上がってしまう人間なので、この映画の設定は本当にツボでした。
そしてトークイベントに行っちゃうほどの森見登美彦さんの大ファンです。
>舞台が京都に設定されているのもよい。時代劇の撮影所があるだけでなく、撮影所の外でも140年以上前から同じ場所に同じ寺が変わらぬ姿であるのも当たり前。マジックリアリズムのメッカである京都なら、雷に撃たれてタイムスリップしてきた侍がそのへんを歩いてても「けったいなやっちゃな」と思われるだけで、受け入れられてしまう。たとえ狸や天狗が人間に紛れて跋扈していても、まぁよろしいがなと受け入れてしまえる森見登美彦の小説のように。
この京都に関するくだり、我が意を得たり!そうだ、京都には撮影所の中だけでなく各所に当時から続く寺社や史跡や景観がたくさんある!森見登美彦や万城目学の小説のように奇怪なことが起こってもおかしくない雰囲気がある。タイムスリップしてきた侍がその辺に紛れていても何らおかしくない!
膝が折れるほど叩いてうなづきました。素晴らしい表現をありがとう!