「騙されたと思って映画館へ行って欲しい」侍タイムスリッパー LEEさんの映画レビュー(感想・評価)
騙されたと思って映画館へ行って欲しい
歴史モノや時代劇好きなら、よほど趣味が偏っていない限り笑えて泣けて感動できる作品だと思います。
幕末の会津藩の侍がタイムスリップして現代にやって来て、結果どう生きていくか…と言う話です。
なので、幕末の会津武士が置かれた歴史的背景を知ってると、主人公に感情移入出来てマジて泣けます。
おにぎりを食べるだけで泣けるし、戊辰戦争の会津戦の顛末を知るシチュエーションでも泣けます。
そういうシーンがコミカルに描かれているからなおさら笑えるのに泣ける。そんな演出の絶妙なバランスが秀逸です。
「切り捨て御免の武士が、あんな風な対応になるのか?」と違和感を覚える方もいらっしゃるようですが、260年間続いた平和な江戸時代では多くの武士たちは刀を差していても実際に人を斬った経験のある人はほとんどいませんでした。
幕末の京都は治安が悪化していて、日常的に刃傷沙汰が繰り返されていましたが、それでも良識ある武士は鍛錬していても無闇に人を斬ったりはしなかったので、山口馬木矢さんの演じた朴訥で生真面目な主人公にはとても共感を覚えます。
ラスト30分の真剣での果し合いを観て「そんな事でリアリティーが出るとは思えない」とのレビューも散見されますが、あれは映画撮影に便乗した長州藩士と会津藩士の果たせなかった決着を付けたい2人の意志が結実したシーンだったと幕末史を知っていれば素直に理解できる内容だったと感じました。
おそらく、主人公の高坂も敵役の風見も双方が決死の覚悟で斬り合っていて、相手を本当に殺す気で戦っていたのだと思います。
映画撮影のためではない、2人の真剣勝負だった事を理解して観ていると風見が斬り殺された劇中映画のラストシーンで「えっ!マジで斬ったの!!」と驚くことになるし、その後のシーンで現代人の良識が身に染みてしまっていた主人公が実際には斬ることが出来なかった事に対して、自らを「不甲斐ない」と涙するシーンも本当に良いシーンに纏まっていたと感じます。
なんにしても、多くの方がしっかり楽しめる映画だと思うので、未見の方は是非映画館へ足を運んで欲しいと思える作品です。
>あれは映画撮影に便乗した長州藩士と会津藩士の果たせなかった決着を付けたい2人の意志が結実したシーンだったと幕末史を知っていれば素直に理解できる内容だったと感じました。
全くおっしゃる通りと思います。
あのシーンは彼らにとってもう「撮影」ではなく、幕末の命を賭けた「真剣勝負」の続きを現代でやってるという話であり、時代を超えた本物の決闘なんですよね。その流れが何とも自然で絶妙で無理がない。無茶苦茶な話でも展開のさせ方が実に素晴らしいなと思いました。