「もちろん面白くはありました」侍タイムスリッパー komagire23さんの映画レビュー(感想・評価)
もちろん面白くはありました
(完全ネタバレなので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
話題になっていた今作の映画『侍タイムスリッパー』を観て来ました。
そして個人的にも面白く観ました。
ただ面白くはあったのですが、不満がなかったわけではないなとは思われました。
その不満の理由は、幕末の会津藩士・高坂新左衛門(山口馬木也さん)が、自身の幕末の価値観と現在(江戸時代の終焉から140年後、監督のインタビューから設定は2007年ごろ)の価値観との違いに戸惑いそれを描くというより、時代劇の衰退がテーマになっていたところでした。
個人的には、真剣で藩のために命をも捧げていた幕末の志士が現在にタイムスリップした時に、果たして現在の殺陣師の殺陣に対して疑問に思わず、殺陣師・関本(峰蘭太郎さん)を師と仰ぐのはあり得るのだろうか、との疑問は感じられました。
幕末の武士の身分が士農工商のトップであり、その特権と儒教的な上下関係の厳しさが叩き込まれているだろう主人公・高坂新左衛門が、現在の(良くも悪くも)なあなあになっている上下の関係性に、戸惑いと怒りを余り感じていないのも多少の違和感はありました。
ただ、おそらくこの映画は、幕末と現在の価値観の違いを描きたかった訳ではなく、それを材料にして時代劇の衰退の方をテーマに描きたかったのだろうな、とは一方で思われました。
しかし映画の最終盤で、高坂新左衛門と映画冒頭で対峙して同じく落雷で幕末からタイムスリップした長州藩士であった風見恭一郎(冨家ノリマサさん)と、会津藩のその後の無念を知った主人公・高坂新左衛門とが、映画撮影の最後のシーンで真剣で戦う場面は、(時代劇の衰退ではなく)幕末の志士の(現在と対比された)場面として描かれていたと思われます。
そうであるならば、初めから(時代劇の衰退でなく)幕末と現在の価値観の違いを中心に描いていた方が、映画作品としてはもっと深みある作品になっていたように、僭越ながら思われました。
もちろん、最後のスタッフロールを見て私も驚愕したように、このスタッフ人数で、おそらく制作予算も相当厳しい中で、内輪受けにならず、浮つきもせず、地に足着いた作品内容になってる時点で称賛以外にあり得ないとは、一方で思われもしました。
今回の点数は、他作品での有名トップクラスの俳優が数多く出演し、掛っている予算も数億円単位の映画と同じ水準で、僭越ながら採点しました。
そうでなければ逆に失礼にも感じたからです。
しかしながらこの制作布陣でこの質の高さは、一方で多くの観客の絶賛を受けているのも全くその通りだと思われてもいます。
小さい場所から広がりを持つことは映画界でも大変な奇跡だと思われますが、今作の映画『侍タイムスリッパー』がそのような奇跡を獲得している事に、観客の一人として一方で素晴らしく嬉しいことだと感じました。
>今回の点数は、他作品での有名トップクラスの俳優が数多く出演し、掛っている予算も数億円単位の映画と同じ水準で、僭越ながら採点しました。そうでなければ逆に失礼にも感じたからです。
高評価の雰囲気に流されて安易に高評価をつけるのではない。作品に対して本当の意味で真摯で敬意ある姿勢。この一文に深く感銘しました。
仰るような感想はほぼ同感です。
それと、主人公お二人のカメラアングルが良い(経験上そうなるのか?)のに
他の配役のシーンになると間が抜けた感じになってました。
そこが惜しいというか、バランス取れてなかったですね。
タイムスリップの時代のギャップを表現するのか、時代劇の存続を訴えるのかそこのバランスも不自然でしたね。
個人的には現代にやってきた侍が京都の街の変容の驚きとか、お寺は残ってるとかの反応をつぶさに演出する時間はあったはずなのでそこも足りないなと思いました。
最後の殺陣もかっこよかったのに、そこのかっこよさとコメディータッチとのギャップをもっと浮き彫りにすれば強弱もあって良い作品になりそうだと思ったのでやはり惜しいなぁー!と思いました。m(_ _)m