劇場公開日 2024年8月17日

「真剣の重み」侍タイムスリッパー sannemusaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5真剣の重み

2024年9月29日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

興奮

萌える

一時代劇好きとして胸熱に胸熱がすぎる映画だった…

脚本の素晴らしさはさることながら、その無茶なストーリーに抜群の説得力を持たせる殺陣シーンがあっぱれ…!
冒頭の討ち入りシーンで引き込まれ、坂本龍馬相手の立ち回りで引き込まれ、、

エンドクレジットに時代劇の影の立役者、福本清三氏の名を見て納得。本作のテーマ同様、こうやって熱い志や技が受け継がれているんだなとますます胸熱。

奇しくも最近朝ドラの再放送でオードリーをやっていたり、SHOGUNの真田広之のエミー賞スピーチがエモすぎたり、ここからまた時代劇の波が来るんじゃないかと期待してしまう。
日本に育った人たちは多かれ少なかれテレビや映画で時代劇に触れてきて、たとえファンでなくともそのコンテキストがあるからこその本作のエモさやヒットがあるのかなとも思う。ドリフ感あるお決まりのギャグもまたしかり。

何故時代劇が好きかって、侍たちの生きざまが好きなんだよね。
いつの時代も家族のため、世のため、未来のため、信ずべきと決めたもののため、懸命に愚直に真面目に生きている人がいる。かつては、命を賭すほどの真剣さで。
侍の文化や様式美も魅力だと思う。

「真剣勝負」って今もなお日常的に使われる言葉で、自身もごくごく普通に使っているけど、その言葉の本来の重みをこんなにも感じたことはいまだかつてなかった。
素晴らしいラストシーンだった。

ハードボイルドな時代劇は過去からもたくさん良作があるけど、コメディ要素も強くて、舞台も現代メインで、それでもなお、侍の生きざまのかっこよさや、かつての侍たちの想いや、時代や国を創ってきたものたちへのリスペクトや、そして時代劇文化への愛しさとリスペクトまでもが、この短い映画の尺で表現されてることに感動。今だからこそなしえる、時代劇への愛と新しい表現を堪能させてもらいました。ブラボー!!

高坂がショートケーキを食べて涙するシーン、滑稽なシーンなのだが、私は幕末を生きた高坂の人生や、自身の祖父母の時代までもを想起させられ笑えなかった。あなたたちが懸命に生きて命を繋いでくれたからの今なのだな、とぐっときた。あのシーン、高坂らしさが目一杯表現されていてとてもよかった。

けして有名な役者さんではないけれど主役のお二人には渡辺謙vs北大路欣也 を思わせるような瞬間もあり。高坂役の山口馬木也さん、めちゃくちゃハマり役でした。格好いい役者さんで雰囲気もあって。ハードボイルドな作品だとハマりすぎて難しいかもしれないけど、本作の高坂の生真面目さが滑稽にみえたり、真面目さゆえの朴訥さや不器用さもとってもチャーミングだった。
本作内での2人の立場と、リアルでの2人の立場がオーバラップしていて。名もなきカッコいい人たちにスポットライトが当たるのもまた胸熱ポイント。

侍姿の高坂が現代の街を彷徨うシーンも個人的な激萌えポイント。侍百景的な。
私も監督だったならいろんなシーンに配置して侍を愛でたい。

sannemusa