「時代劇好きに捧げる愛と願望」侍タイムスリッパー だむさんの映画レビュー(感想・評価)
時代劇好きに捧げる愛と願望
話題になっているのと、歴史物映画が好きなので観に行きました。
映画内で「時代劇が廃れている」と繰り返し嘆かれており、それは現実世界の事を指しているのだと思うのですが、個人的に隆盛を極めていた時期を知らないためピンと来ず。
大河ドラマなどは好きなので理解しやすいだろう、と思っていたのですが。この映画でいう時代劇って大河ドラマと全然違うものか、と気付いてから色々とわかりやすくなりました。確かにあんまり見た事ないなあ、と。
登場人物達は時代劇を愛し、真剣に向き合っている人たちばかりです。茶化したり悪口を言う人間はいません。侍は感動し自分もそうなりたいと愚直にコミカルに邁進し、認められる。侍が時代劇を偽物と断じて憤る、みたいな展開は無し。人間関係もシンプルです。
前半はコメディ多めですが、後半は侍が現代に生きて己の居場所とアイデンティティを確立するために藻掻いたり苦しんだりと割と重めです。
観終わってしばらく考えていたのは、「どうして主人公が侍なんだろう」と。最初から時代劇が好きな現代人を主人公にした方が展開は速そうですし、映画内でも主人公の侍は現代に適応して普通の生活を送れています(戸籍とか納税はどうしてんだ、って話は野暮)。
思ったのは、「本物の侍」が「時代劇を認めた」と言うのが大切なのかな、と。誰だって本物に認められたら嬉しい。その時代を生きた人間が「時代劇には本物がある」と認めてほしい、という願望があると感じた。
>「本物の侍」が「時代劇を認めた」と言うのが大切なのかな
なるほど!そういわれてみればそうですね。
本物の侍が本気で入れ込む時代劇。時代劇に携わる人からすれば最高の勲章です。視点をありがとうございます。
こんなのリアルじゃない! と抗弁するどころか何故時代劇を捨てた! と食ってかかる程でしたしね。大きな可能性を感じていたんでしょう、だから本身を持ち出したのは複雑な気持ちでした。