「時代劇への熱烈なラブレター」侍タイムスリッパー しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
時代劇への熱烈なラブレター
通常スクリーンで鑑賞。
笑いあり涙ありな王道エンターテインメントの心地良さを、これでもかと味わわせてくれる脚本が素晴らしい。時代劇のメッカ、東映京都撮影所が協力を快諾したのも頷ける。
まさに時代劇と云うジャンルへのラブレターだ。惜しみなく捧げられる「時代劇」へのオマージュと、全編に漲る時代劇を衰退させてなるものかと云う熱意に心を持っていかれた。
幕末からタイムスリップして来た朴訥な会津侍・高坂新左衛門が体験するカルチャー・ショックが面白いし、交流する人たちとのベタベタでコテコテな笑いがとても楽しかった。
中盤辺りに意外な展開が待ち受けていて、そこから物語は徐徐にシリアスになっていく。斬られ役の矜持と幕末志士としての生き様が重なり合い、昇華されていく筋が見事だった。
クライマックスの殺陣が忘れられない。あまりの迫力に息を呑み、食い入るようにしてスクリーンに見入ってしまった。
「椿三十郎」を想起させる対峙から始まり、死力を尽くした剣が混じり合う立ち回りは自主製作映画のレベルではない。
時空を超えたふたりの侍の想いと気迫のぶつかり合いに手に汗握り、心が震えた。時代劇史に残る名シーンだと思う。
撮影所の喫茶室で、新左衛門が助監督・優子に切られ役になりたいと相談するシーン。「心配無用ノ介 天下御免」を観た感想を話す新左衛門の言葉に思わず涙してしまった。
私が抱く時代劇の魅力を、新左衛門が代弁してくれたように感じたからだ。今も昔も変わらぬ人の世の温かみを、時には冷たさをも映し出す時代劇は日本が世界に誇る文化だろう。
決して無くなって欲しくない。本作のブームと時を同じくするように、ハリウッドでつくられた時代劇ドラマが快挙を成し遂げ、時代劇復権の下地が整えられて来たように感じる。
時代が再び、「時代劇」を求めているのかもしれない。
[余談1]
特撮好きの時代劇好きとしては、幼い頃に、「ゴジラ×メガギラス<G消滅作戦>」でグリフォンのパイロットとして出会い、その後「剣客商売」の二代目秋山大治郎として親しんだ山口馬木也氏と、こんなにも面白い映画の主役としてまた会えるだなんて人生何が起こるか分からないなと思った。
[余談2]
心配無用ノ介、劇中で撮影していた回の完全版が観たい。昔ながらの勧善懲悪時代劇で、懐かしさが込み上げる。円盤の特典映像でもいいから是非つくっていただきたい。
[余談3]
峰蘭太郎氏の演じていた役は元元福本清三氏にオファーされていたが、福本氏が逝去され峰氏が代役を務めたとのこと。
劇中にも福本先生の言葉が引用されていたしエンドロールに「In Memory of Seizo Fukumoto」と出た瞬間落涙した。
観終わった後、無性に「太秦ライムライト」と「時代劇は死なず ちゃんばら美学考」を見返したくなってしまった。
共感ありがとうございます。
武士の生き様を通じて、どんなに時代が変わっても大切なものは何も変わらないのだ、という事をこの映画から改めて教わった気がします。
本当に心揺さぶられる素晴らしい作品でした。
>時空を超えたふたりの侍の想いと気迫のぶつかり合いに手に汗握り、心が震えた。時代劇史に残る名シーンだと思う。
同意です!美しい剣さばきではない、鬼気迫る本物の名シーンでした。
>撮影所の喫茶室で、新左衛門が助監督・優子に切られ役になりたいと相談するシーン。「心配無用ノ介 天下御免」を観た感想を話す新左衛門の言葉に思わず涙してしまった。
ここ確かによかったです!新左衛門が言語化してくれたおかげで、時代劇の良さをあらためて再確認できました。
共感ありがとうございます。
何故他国の時代劇は受け入れられるのに、自国のものは衰退してしまうのか? ただ日本の時代劇にはアクションとしての大きな可能性が有る、殺陣についての作品だったのも熱さを感じました。