「おもしれ〜!笑いの先にあった“真剣”勝負 失笑からの息を呑む展開、その振り幅にやられた!」侍タイムスリッパー 菊千代さんの映画レビュー(感想・評価)
おもしれ〜!笑いの先にあった“真剣”勝負 失笑からの息を呑む展開、その振り幅にやられた!
劇場が笑いに包まれ、自分も思わず吹き出してしまった。
侍が現代にタイムスリップして、撮影所で斬られ役になり・・・そんな笑えるチャンバラ作品かと思ったてたが、ワイヤー無しの生時代劇アクションに息を呑むとは・・・この作品を観るまでは想像もして無かった。
邦画・洋画問わずアクションは映画の華の一つ。
それこそ、かつての日本映画はチャンバラと特撮に支えられていた気がする、アクションと言えばやはり侍が出てくる時代劇だし、仮想現実と言えば特撮ってな感じ。
それって、邦画だけに限った事じゃ無く洋画やそれこそ香港映画にしても、仮想現実とアクションというのは映画とは切っても切れないものだ。
時代劇と言えば、いわゆる決まった型の“殺陣”があるのが王道、こう切ったらこうかわしてこう動くっていう時代劇の枠にはまった、“ 相手には刀が当たらないような「嘘」の“殺陣”アクションがずっと主流だった。かつての若山富三郎や勝新太郎、松平健・高橋英樹などそれこそ真似できないような個性があって、それはそれで勿論面白かったのだが、やはりどうしても“昔ながらの時代劇”という枠の中だった。
そんな、“時代劇”の概念を変えた作品がある、それは山田洋次監督の「たそがれ清兵衛」だ。真田広之と田中泯の斬り合い、相手の居所に斬り付ける“殺陣”は正直衝撃だった。まるで真剣で戦っているかの様な緊迫感に溢れた映像は当時も評判になり、時代劇としては異例の人気と当時の日本アカデミー賞を総なめすると共に本家アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされたほどだ。
この作品には、そのどちらのチャンバラも入っている。昔ながらのお決まりな型のチャンバラ、そしてまるで真剣で戦っているかの様な“殺陣”、その振り幅があまりにも広く、それでいて一つの作品の中に同居できているから面白いのだ。それは、虚実・緩急が入り混じり、まさにチャンバラのツンデレとでも言おうか。
インディーズ作品なので粗が無いわけでは無いが、本もよくできているし、何よりも迫真の“殺陣”を支えた高坂新左衛門役/山口馬木也・風見恭一郎役/冨家ノリマサ、そして殺陣師関本役として役を超えた立ち居振る舞いを見せていた峰 蘭太郎の存在が大きい。
殺陣師・関本の役には当初ラストサムライでもただならぬ存在感を放ちながらも“ 寡黙なサムライ”という役で斬られ役を演じていた福本清三を予定していたそうだが、ご存命の間にこの作品が撮られ、出演される事が叶わなかったのは残念でならない。
この作品を見てから、往年の時代劇の殺陣を改めて観たくなった。
色々な役者・時代の特徴の違いが見えてきて今更ながら面白かったし、カッコいい〜!
やはり時代劇そして“殺陣”は日本の伝統芸でもあるので後世にも絶対引き継いでいかねばならないと再確認させられた作品だ。
(そして、この作品が拡大上映された翌日米エミー賞「SHOGUN」の快挙報道と共に、主演プロデュースの真田広之の受賞コメントに涙ちょちょギレ(//∇//)、そして2024年はゴジラ-1.0もアカデミー賞視覚効果賞を受賞しゴジラ生誕&7人の侍公開70周年という日本の映像エンタメ界にとって歴史的な一年となったのも感慨深い)