侍タイムスリッパーのレビュー・感想・評価
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夢ある受賞!自主制作作品から第48回日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞の快挙!!
自称映画好きなワタシ。
2024年の映画業界を静かに時に熱い視線で見守ってきたつもりだった。今年もいい映画をたくさん観て心から満足していた。楽しみにしていた日本アカデミー賞授賞式。横浜流星くんの主演男優賞、大沢たかおさんの助演男優賞、河合優実ちゃんの主演女優賞、吉岡里帆ちゃんの助演女優賞とここまでは予想通り🧐
しかし、最後にそれはおこったのです。唯一私がノーマークで未鑑賞であった「侍タイムスリッパー」がなんと最優秀作品賞を受賞したのだ。てっきり「正体」か「夜明けのすべて」の2択だと決め込んでいた。
ええっ?!ええっ?やらかした…。
どうして見逃したんだろう???
しかも調べれば京都発の自主制作映画だという。ノーマークで未鑑賞であった自分を今更ながら猛烈に反省した。無意識ながら、時代ものはスルーするクセが祟ってしまった😭
気を取り直して本日遅ればせながら
いざ、禊の鑑賞でござる⚔️
感想は
はい、優勝🏅
いいものはいい。理屈じゃなくとりあえず一度ご鑑賞あれ🫡
映画の原点みたいなものをこの作品に観た気がしましたよ。脚本があって、演じる人がいて、それを撮る人がいて。シンプルにいえば、それだけで十分なのです。話はありがちな設定ではあったものの、笑いや涙を交えて終始飽きさせない130分でした。シリアスではなく、コメディに主体を置いたのが良かったと思う。
監督・脚本・撮影・照明・編集もろもろを担当し、自身の全てを賭けてこの作品に向き合い結果を手に入れた安田淳一監督本当におめでとうござます🎉まだまだ日本映画業界も捨てたもんじゃありませんね!こういったインディペンデント映画が最優秀作品賞を受賞できるという事実に夢が広がります。
笑いと涙とメッセージ性がしっかりとある作品
見る前は、侍が現代にタイムスリップしてきて、現代とのギャップにドタバタとなるコメディかなと思ったら、予想通りのコメディ要素はあるものの、しっかりとしたメッセージ性も高い作品だった。
時代劇が廃れていく寂しさは、朝ドラの「カムカムエブリデイ」も描かれていて、世の中栄枯盛衰だから致し方ないよなーと思ったけれど、現代の人たちの視点ではなく、あの時代を生きた侍に時代劇を演じさせることで、より一層の寂しさが募ると同時に、申し訳なさみたいな感情が芽生えた。
また、当事者の彼らの視点だからこそ、現代にあの時代の皆の想いを残したいという気持ちの強さがより伝わってきて、涙腺が刺激された。
幕末の志士たちは、新政府軍と幕府軍に分かれて各々の信念のもと戦ったけれど、どちらが正しいというわけではなく、ただその時貫いた信念が今に続いている。会津藩の高坂にとっては辛い事実でも、今日本は争いのない平和な世になっているし、良い国にしたいという彼らの願いは叶えられているんだよなと思った。
インディーズ映画あるあるで、俳優さんは皆さん初めて見る方々でしたが、主演の山口さんの演技がとてつもなく良かった!わざとらしくなく、本当に侍がタイムスリップしてきたような動作や話し方で驚いた。周りの方々の演技がわざとくさく見えてしまうほど。
また、劇伴や効果音がちょい古典的でダサいのは笑ってしまうw
カメとめの再来言われていて、ずっと気になっていた作品だったので、見れて良かった!
純真無垢な昔堅気の映画野郎
タイトルと主題だけでなく、この映画丸ごと、タイムスリップしてきたかのような気がしました。弟子入りを志願して「落ちる滑るって言っちゃいけない」などというベタベタのシーンがそれを表していたかのような。水戸黄門、銭形平次など昔の人の如何にもというやり取り、困っている人を放っておけない優子さんのような古風な頑張り屋が活躍する、庶民的な舞台劇を観たかのような、そんな印象。
タイムスリップといってもSF要素は余りなく、古き良き時代劇や映画バカの撮影風景、そういうのがテーマだったのではないでしょうか。撮影所の楽屋?でポスターは時代劇なのに、テレビの横に並んでいたDVDは、何故か伊丹十三監督作品。これも、この映画の主張の一つだったのかな。話の流れも無理などんでん返しもないトントン拍子。最後に武士の身の上に立ち返っての一騎打ちも、まあ、予測通りではあるけれど。
でも、最後の殺陣(たて)は痺れました。いつ動き出すんだという凄まじいタメ。刃が打ち合う鋼の音は、これまでのチャンバラシーンで録に擬音を付けなかったのが効果を上げているのでしょう。本当に真剣でやっているんじゃないかという緊迫感。劇中劇の顛末も踏まえて、歯を食いしばってしまうほど凄まじかった。
そして出来上がった劇中劇の映画は、なんというか、本当に無骨な作品のようですね。この映画とまったく同じ、最後の一騎打ちが売りでしかないような骨太い時代劇のようですけど、果たして、売れるんでしょうか。恐らく、例え売れなくとも「これぞ本物の映画だ」という評価さえあれば、劇中の監督も満足したのではないでしょうか。この映画そのもののように。
この前に観た「ルックバック」という漫画家のアニメ映画を思い出した。自分達の仕事をもモデルにしているからこそ、カタルシスが凄まじい。ましてや、私たちも武士の国。美味しいおにぎり、美味しいケーキがいつでも食べられる時代になって本当に良かった。先人達に感謝、感謝。
昔の人が生きた時代の延長線上に私たちの現在はあるのだ
どこにでもあるショートケーキをはじめて口にし「これが普通の人でも食べれるとは。。本当に良い世の中になった。」とボロボロ泣く。会津藩の悲惨な最後を知り、むせび泣く。感極まるこの2つのシーン。昔の人たちの努力や犠牲の上に、私たちの平和で豊かな世界があることを改めて実感し、感謝した。
竹光で本身を振っているようにみせるため、振り方を試行錯誤した結果、本当に重さが加わったように見えてきた演技に驚き。 いやいや待て待て。この映画の中にいくつかある真剣のシーンも、実際は竹光使って演じているはず。(クライマックスの風見との対決シーンなど)凄い演技力だ。
クライマックスの戦いのシーン。最初のながーい無音の時間の演出が真剣による緊張感を最大限高めることに成功している。
時代劇を辞めて東京に行っていた大物俳優の風見恭一郎が、時代劇&京都に凱旋。このシーン、風見が真田広之とオーバーラップした。真田広之は別に時代劇やめてないけど。(笑
2021年に上映された『サマーフィルムにのって』を思い出した。共通項多し。
・タイムスリップもの
・時代劇
・映画を撮る映画
・低予算ムービー
・拡大上映!
そしてなんといっても「空気感」が同じなのよ!
朴訥なこの侍のように、背筋を伸ばし、周りに感謝して生きようと、気持ち新たに映画館を出た。
※失礼ながら知らない役者さんばかり。
※高坂と風見と女将さんがいい!
※風見は誰かに似てるなあ~と思ってあとで調べたらそうそう「別所哲也」「 西岡德馬」「嶋大輔」だ。冨家ノリマサさんという方なんですね。これからチェックさせていただきます!
※真面目で無骨で、少し汚い高坂が侍っぽくてとてもいい!
※ロケ地は随心院、亀岡の大正池まではわかった。京都がほとんどだと思う。聖地巡りしたい。
→ 10.15追記 このレビューで教えていただいた「油日神社」に行ってきました。最後の真剣でのシーンの舞台です。京都でなく滋賀県(三重県との県境)でした。飾り気のないとても良い気が流れる神社でした!ぜひ。
※風見が怒って池に石を投げ込むシーン(笑 見逃さないよ。
※どうしても受けてしまったり、師匠を斬ってしまったりするシーンも笑けた!
※パンフレットはまだ届いていなかった。あらためて買いにいかねば。
※殺陣の指導シーンで「当たるから切っ先は上へ」と。なるほど。
山口馬木也に主演男優賞をあげたい
インディペンデント監督が書いた脚本のために京都の撮影所が協力して実現した娯楽活劇コメディ、という作品の成り立ちは美しいし、主演の山口馬木也があまりにもみごとで、立ち姿や所作、殺陣の決まり具合に惚れ惚れする。
しかも演技がべらぼうに上手い。上手いを超えている。正直、和尚が檀家の前で電話をするシーンとかは観終わってあれ必要だっけ?と思ってしまったし、ベタすぎて鼻白む部分も多いのだけれど、どんな場面でも、どんなセリフでも、山口馬木也という人が驚くほど誠実に、自然に演じてしまうので、山口馬木也を見ているだけで十分お釣りがくる!という気がしてくる。
ただ、別の時代からやってきた異分子という設定に即していて成立してないわけではないのだが、山口馬木也の佇まいがあまりにもナチュラルなせいで、他の出演者の芝居がクサく誇張されたものに見えてしまうのも事実。それくらいの圧倒的な本物感が山口馬木也にあったということでもある。
しかし、最後の真剣のくだりは、正直ザザッと音を立てるように気持ちが離れた。理由はいくつかあり、あの二人の対決自体は当人たちの決断としてお好きになさってくださいなんだが、撮影現場が容認してしまう流れは、全員が完全に狂気に取り込まれた!くらいの描写でない限り絶対にナシだろうと思ってしまう。ビンタで許されることじゃないよ、マジで。気がつけばあの二人が真剣でやりあっていて、誰も止められなかったとかならまだわかるんだけど。
あと、あの真剣勝負に、どこから撮ったの?という寄りの短いカットがモンタージュされるのも気になった。さらにいえば、これは単に自分の好みですけど、最後の対決だけは、撮影用に刀を上に掲げるように修正された上段の構えを、もともとの構えに戻して戦っていいんじゃないかなと思ったりしました。
廃れゆく時代劇と日本人スピリッツへの思いが溢れる
8月に都内1館のみの公開から全国100館以上での公開が決まったタイミングで、大急ぎで鑑賞。口コミで広がった映画にハズレはないとは思っていたが、出来栄えは想像以上だった。
幕末の京都から雷と共にタイムスリップする会津藩士の着地した場所が、一瞬、江戸時代の京都かと思わせて、実は時代劇を撮影中のセットだったと言う幕開けから、すでに捻りが効いている。そこからの展開は、映画スタッフや関わる人々が主人公を役者だと勘違いし続ける様子を上手に描いて、なんら不自然さを感じさせない。それは、タイムスリップの先輩がいたことが分かる後半でも同じだ。
ベースには廃れゆく時代劇とそれを支える人々、そして、日本人のスピリッツに対する熱い思いがある。こちらは自主映画で、越えるべき壁の高さに違いがあるだろうが、監督と脚本を兼任する安田淳一と『SHOGUN 将軍』で遂に天下を獲った真田広之とは根っこで繋がっているのだと思う。
泣いて笑って
やっと観られました!
徐々に人気が出てきたころ、遠方の映画館で公開されていて、行きたかったのですが
結局観られずにいました。
でも、日本アカデミー賞を受賞したおかげで(?)アマプラで観ることが出来ました!
結論、とっても面白かったです!
笑いあり、涙あり、ハラハラドキドキもあり、
本当に良かったです。
最後のクレジットで安田淳一監督の名前が、いたるところで出てくるのを見て、
監督の大変さが少しわかったような気がしました。
私は映画界のことは詳しくありませんが、
この映画はインディーズ映画としては「カメ止め」以来の大ヒットと言われているとのこと…では逆に、埋もれていく作品はいくつあるのだろうかと、思いました。
映画の中でも、優子ちゃんが忙しい中、シナリオを書いて監督を目指していました。
若き(若くなくても)才能が、開花し夢が叶うってことは本当に素晴しいことですよね。
作品そのもが面白いはもちろんですが、
このような映画がヒットし、日本アカデミー賞を受賞することは、
夢は叶うんだって、証明になります。
映画界の発展を心から祈ります。
著名俳優がいなくても、人物描写抜群の面白作品は作れる見本!
いや~評判通りの面白さ♪ 楽しさ♪
顔が歪むぐらい笑ったシーンも、もちろん目が潤むシーンも♪
現在170館で上映中作品がまさかのアマプラ無料配信にビックリだが、自主制作作品と知り、尚驚く!
レビュー前に是非この↓動画をyoutubeで検索して見て下さい
(動画 6:00 位~)
「侍タイムスリッパーを語ります^o^ ゲストは山口馬木也さん」
カナダファンタジア国際映画祭での上映シーン
(作品内容は分からない様になってます)
海外の観客が、日本語上映(英字幕)作品でこれほど笑って、拍手(上映中も)する事は奇跡!
160作近くのエントリーがある中で★観客賞金賞を受賞している。
出演者=冨家さん自身のyoutubeチャンネルで、山口馬木也らと公式インタビュー等では見せないフランクな姿勢でのトークが見れる。
冨家さんは、変な賞よりこの賞(観客に一番ウケた証)が一番嬉しいとのコメントも♪
物語は是非ご覧を。
私が特筆したいのは、出演している全ての役者が個性派揃いで、影の薄い方は「0」。 しかも私が普段一番厳しく見ている人物描写も抜群。
俳優ありきのキャスティングではなく、役柄優先主義でのキャスティングという事。
例えば、住職の妻役= 紅萬子さんは何役でも出来る万能タイプではないが、"大阪のおばちゃん"をやらせたらピカイチで、日本の映画界で五指に入るのではと感じる位巧!
(舞台挨拶などのトークもあのまんまの人だった♪)
女助監督役= 沙倉ゆうの 優しさ溢れる癒やし系だが、素の時(ツベ動画等)もあのまんまなしゃべり方で一緒の演者も本当に癒やされてる。 要するにドンズバキャスティング。
殺陣師範役=峰蘭太郎さんは現在76歳の現役殺陣師で、
高橋英樹さんから指名が入る位の腕前。 今作一番のいぶし銀的存在だが、ユーモアを醸す演技も巧く、主人公との練習シーンでは、笑い涙が出る位ここ数年で一番笑った♪
主演=山口馬木也は名前も初めて知ったが、腰が低く何にでも懇切丁寧な今役にピッタリ(普段トークを見る限り本人の人柄に近そう)
が、私には演技的にまだ一流ではないなと感じる点が。
冒頭の待ち伏せシーンでは視点が動き過ぎ、現在へのワープ後街を歩く時の困惑表情もややぎこちない。
ブルーリボンでは主演男優を獲れたが、日本アカデミーでは最優秀男優を逃したのはこの辺りの演技が見抜かれてるのかも・・。
今作で一番!と来たのが、最優秀助演男優を獲った
仇敵 風見恭一郎 役= 冨家(フケ)ノリマサさん。 相手を包み込む様な寛大さも有し、殺陣時に頬を膨らませフーと息を吐くシーンには心身共に途轍もない気迫を感じた。 こんなに "侍役" が巧い人がいたとは♪
だが、彼の経歴を見て驚く。 大河ドラマ等の時代劇には多数出演しているが、「劇場公開映画」では今作が初めての "侍役" のようなのだ。
日本の映画界はアホか!
人気だけで実力が伴わない役者を使うより熟年映画ファンが唸るような、こういう人をなぜ使わない!
客寄せ的に人気者を使うより、無名とまでは言わないが本当に巧い人を適材適所で使って、イイ作品を作ればその何十倍もお客を呼べる事を今作が証明している!
さらには大通りのエキストラさんでさえ、東映撮影所が全面協力した為、台詞のない方まで存在感がある♪
東映の重役さんが本作の脚本に惚れ込み、撮影所の使用はもちろん、技術スタッフ派遣・小道具使用料まで通常の半値以下のギャラで協力したらしい。
そして協力するなら「東映」の名に恥じぬよう匠仕事を皆こなしたそうだ。
主人公のチョンマゲも、本当に剃っているかの如く見事な床山さんの仕事ぶり!
作品の本編以外でも浪花節的物語が♪
米アカデミー賞が評価真っ二つの様な作品にここ数年「作品賞」を授与しているのに対し、日本アカデミーは多くの点で本当に面白い今作に最優秀を授与したのは英断に感じる。
制作中に資金が底付き、監督はなんと自分の車を売ってまで工面したらしい。 なのに演者には気分良く仕事をしてほしいとグリーン車を手配する事も・・
く~~泣けるね♪
3000万未満の制作費で、もう10億近い興行収益を上げているそうなので、一人12役ぐらいの働きをした安田監督も次作では資金に余裕が出来るだろう♪
(超のつく低制作費を考慮して★はオマケ気味に♪)
将来、嫌な事を忘れたい時に見返すのもいいかと。
オススメ♪
かなりつまらない
こういう俳優さんにもっとフォーカス当てて〜
喜怒哀楽(訛り付き)+殺陣、アツイ!!
時代劇の魅力はこういう所!と押し出してくる。
作品作りの情熱や現実にも触れ、しんみりとしました。
劇場内では笑いが起こる頻度が高い気がします。家族がテレビ見ながら笑う雰囲気。他作品には無い空間でした。
新喜劇の見せ方に感じられる画角もあり、なんか楽しい。
観ようかなどうしようかなでもレビュー高いし観ようかな…観て良かったです。
主人公と助監督の関係性が可愛い。いつくっつくのか…今日じゃない。もどかしい可愛い。
だんだんと主人公の顔面偏差値高ぇな?と思えてきます。
これぞ本物の"映画"。
素晴らしすぎた。
完璧な映画でした。
見たら最後、愛さずにはいられない。
そんな万人向けの作品でした。
笑ってる途中で泣かされ。
泣いてる笑わされ。
こんなに無我夢中で楽しめる作品、年に1本あるかないかだと思います
ジャンルは「時代劇コメディ」との事ですが
いやいやいやいや、そんな枠に収まりきらないくらい、多層的な作品でした。
日本の歴史、侍の栄枯盛衰、時代劇ブームの終焉と復権。
射程が長く、それでいて深い。
人が人を斬っていた時代。
そんな時代が終わりを告げ、大衆娯楽として時代劇が生まれ。
その時代劇すら、もはや忘れ去られそうな現代。
だからこそ、本作のような映画が人々の心に刺さったのだと思います。
過去の人々の営み
悲しみ
苦しみ
喜び
憎しみ
そんな悲喜交々を後世に伝えるメディアとしての映画。
そしてその映画という仕事に携わる人間ひとりひとりへのリスペクト。
それらが頂点に達してのラスト。
涙なくして見ることはできませんでした。
この作品に生きる人々のその後を想像させる幕引きも素晴らしかった。
尽力したスタッフ陣に感謝。
主人公が泣きながらケーキをおほばるシーンには泣きました。
社会の闇
ほっこりとした"真剣"
存在は知っていたがなんだかアンテナに引っかかってこず、
アカデミー受賞→配信解禁後の鑑賞という後乗りっぷりですみません。
悪く言ってしまうと、目の粗い異世界転生ものの様な話。
ギャグも古いし前半の展開もベタだし。指摘されているように、高坂が現代社会に溶け込むまでの色んなことを端折っていてご都合主義的にも見えるし…後半は少し意外性があったけど、不自然なシーンもたくさんあるし…
いや、でもしかし。
良かったんですよね。
コメディシーンは見ていて和んだし、後半の展開にはちゃんとドキッとしたし、ラストはしっかり白熱した。各論で挙げるとそんなにいい映画に見えないんだけど、少なくとも見終わった後、いい気分になれた映画だったんです。
一つは、やっぱり高坂の人柄でしょうか。幕末からタイムスリップしてきたわけですから、当然今の世の中とは適応しない。
ショートケーキひとつに感動して、世の中に争いごとがなくなり豊かになったことを喜ぶ(後から加筆ですが、これがただ「ケーキうまいっすね」という感想だけなら印象変わってたかも。こういう「ジャブ」みたいなセリフの積み重ねもまた、この映画の魅力を作っていると思いました)。
もう誰も好き好んでやる役ではない「斬られ役」に対する真摯な姿勢。高坂のやる事はすべて真剣。こういう人って往々にして、周囲からはしんどがられ、まさしく「あいつ武士だもん、息苦しいよ」(スラム⚪︎ンク)と言われる。
でも、高坂の所作や受け答えからは、他者を尊重する姿勢や物事の正しい捉え方みたいなのが漏れ伝わってきて、重さやいやらしさがない。だからこの人がどんな感情であっても、周りはなんだか「ほっこり」している。
そして、そんな高坂の周りにある人もまた優しく、人柄のいい人ばかりで、悪人が登場しない。「ちょうどよさ」を描くことに対する丁寧さ、が自分がこの映画に感じた気持ちよさなのかも知れません。
ホントにちょっとしたシーンで印象に残った(ちょっとしたシーンすぎて何回か巻き戻してしまった笑)んですが、監督に「お前の殺陣、なんか違うな」と問われ「自分は本身を持つことが多いので、竹光でどうやって重さを出そうか考えていた」と答えるシーン。この辺りの繊細さは、なんだか刺さりました。時代劇なんて全く知りませんが、ほえ〜そういうもんなんだ、とやけに納得感を持てるシーン。この映画のこだわりはこういう所に使われているんだろうなと推察します。
特に変わった話じゃないし、背景知識なんか全然知らないのに、なぜか見終わった後に気分が良くなっている。もしかすると、この話のこうした構造そのものが「時代劇」なのかも知れない。そんな感覚で作り手の方はこの映画を作ったのかなぁ。
時代劇に対する愛情みたいなのは、正直自分が疎すぎて全く判別つかなかったのですが笑、素朴な感覚としてはそんな感じ方をしました。
色んな背景があるようなので、他の方のレビューを読むのもとても楽しみ。純粋にとても楽しめる映画で、老若男女におすすめではないでしょうか。
From Kyoto with love
監督、スタッフ、役者の時代劇への愛がこれでもか、というくらいに詰め込まれた宝箱みたいな映画でした。
山田洋次作品へのオマージュも所々に感じられ、正直そのやりとりいる?と思ったシーンもあったけど、星は5しかつけられないです。
ヒロインの沙倉さんが本当に魅力的だったし、剣客商売の大治郎が本当に頑張っていて、楽しすぎる映画でした。
「カメラを止めるな!」のブーム再来!?
今を生きる侍
時代背景
作中登場するガラケー
時代背景が2007年ごろになっていることで、当時の作品かと思っていたがごく最近の作品だった。
しかしなぜ現代を2007年ごろにしたのだろう?
携帯電話がガラケーの時代
いまでこそ時代劇というものが再認識されている背景があるが、当時は廃れる一方だったのだろう。
その復活の理由としてこの物語を置いたのかもしれない。
特に「SHOUGUN」によって今世界中が時代劇を注目している。
その背景こそ、本物の侍の力によるという設定はなかなか興味深い。
そのためのSF
そこに利用したのは、2001年にティム・バートン監督によって制作された「PLANET OF THE APES/猿の惑星」の型
チンパンジーが初めて宇宙へ行く話
そして起きた時間差でのタイムスリップ
これをこの作品の設定にした効果は非常によかった。
幕末の侍が現代へやってきた場所が京都撮影所というのも素晴らしい。
主人公新右衛門は徐々に自分の現在地を理解していく。
現代人であれば必ずあるはずの狼狽
しかし侍は狼狽えながらも自分自身にできることを探し始める。
自分自身に起きたことを他人にも話さない。
そしてこれが自分自身に起きたことであることで、他人に余計な心配をさせないまま自分で身の振り方を考える。
何もかもが驚きの連続でありながらも、自分自身を見失わない。
そして見つけた仕事が斬られ役
殺陣の稽古でどうしても師匠に勝ってしまうシーンは面白かった。
やがて巡ってきたチャンス
そしてまさかまさかの時間差 30年
果たせなかった藩命と変わってしまった世の中
敵同士の静かな会話
しかしどうしても折り合いがつけられない主人公
殺陣に使用する真剣
そこにあったのは殺陣ではなく試合
試合に勝った新右衛門は、最後に自分の中の葛藤を斬ったのだろう。
この二人のことは誰も知らないという設定もまたよかった。
そしてオチには、さらに時間差でタイムスリップしてきたもう一人の侍
おそらくこの三人の侍が日本の新しい時代劇を作り上げていくのだろう。
本物故に演技にスキがない。
見るものを驚かせる。
「拙者には何も失うものなどない」
この意気込みこそ新しい道を開拓する力になる。なったのだろう。
侍とは常に「いまここ」を生きている人物
そして、
「今日がその日ではない」という葛藤と適応しようとする人間味あふれる言葉
中々素晴らしい作品だった。
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