ラストマイルのレビュー・感想・評価
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この問題は今なお続いている、現在進行形の課題に切り込む
今やネットショッピングは日常生活にすっかり浸透している必要不可欠な存在となった。どんどん世の中が便利になっていくということは、消費者目線では非常にありがたいことだ。私自身もその恩恵を受けている一人である。
他方、労働者目線で考えてみるとどうだろうか。少し違った見方ができるかもしれない。便利になればなるほど、当然のように、消費者は便利なサービスを当たり前のこととして求める。企業は利潤を追求するためにその声に耳を傾けざるを得ない。果たして、その裏側で働く人々のことをどれほど考えているのだろうか。下層から中間にいる人たちは、半ば使い捨てのような働き方を強いられる。
下請けともなると、尚のことである。すでに、運送業の人手不足は世間でもよく知られた社会問題となっている。消費者はどんどん便利になっていくことを求めるが、それが必ずしも人類全体の幸福をもたらさない。なぜならば、一部の働く人々を消耗品のように扱っている側面が否定できないからである。そうした人々が、現状に不満を表明し、仕事を受けてくれなくなったら、どうなるのか。今まで何とかなってきたから、これからも大丈夫ということはない。そういう危機意識を感じざるを得なかった。
今作における巨大物流センターでの出来事は、効率化を追求する現代社会が抱える問題を象徴している。舟渡エレナ(満島ひかり)は、一見して巨大資本の代弁者かのような振る舞いをしているようにも見えたが、結局はそうでなかったということがわかり、安堵した。また、梨本孔(岡田将生)は、時折「虎に翼」星航一の姿がオーバーラップしたが、ブレないキャラであった。きっと彼ならばこの先も大丈夫だろう。現在進行形の問題を巧みに描いた野木亜紀子氏にも大拍手!
現実離れしてる
私たちが目を瞑っていること
ほしいものがあればワンクリックで買えて、当たり前のように翌日に届く。でも、その到着は夜中だったりする。初期設定が翌日だっただけで、別に無理に今日じゃなくてもよかったのに。この時間なら今日も明日も同じだよ、などと思う。なんで配達業者はこんな夜中になってまで日付を守ろうとするんだろう?とうっすら思うけれど、深く考えることはない。たまに別のサービスで到着が1週間後、と言われると遅いなぁと思ったりする。だからやっぱりアマ○ンを使おうとなる。
でもそれは、客がアマ○ンを選んで使っているようでいて、実は大きな利益の中に客が組み込まれている。注文が翌日に届くことは「customer-centric」の実現のためであるようで、実は、イニシアチブは客の側にはない。
それは、うっすらわかっているけれど、だって便利だし、と目を瞑っていること。でもその瞑った目は、いろんなものを見落としている。あるいは、見えないふりをしている。
配送業者、従業員の上司に部下に非正規雇用、そして客すらも、そのシステムを成り立たせるための歯車でしかなく、そのシステムは常に軋みながら回っている。それは果たして、なんのために?
…という、今の世の中のほとんどの人が無関係とは言えない、でも目を瞑っていることが、大きなテーマとして映画の背景にある。そしてその表に、配送業者の買い叩きや過重労働とか、母子家庭の母の苦悩とか、大手企業勤めの追い詰められたメンタルだとか、巨大な組織に立ち向かう個人の弱さとか…その立場にいないと理解しにくい問題が、すごくリアルに描かれている。
脚本家の野木さんの凄さを感じたのは、こういう話って、わかりやすく描くのであればたぶん、配送業者の問題の方が描きやすいと思う。でも、エレナやコウのような人達もまた、一見華やかで楽しく生きていそうに見えるけれど、実際はものすごいストレスをとんでもないバイタリティで抑え込んでいて、でも抑えきれずに心身を壊す人がたくさんいる。
エレナが追い詰められたシーンで、エレナが「私がどんな思いで…」と泣きそうになり、それを一瞬で笑顔に切り替えた演技が本当にリアルで、満島ひかりという女優の凄さを感じた。
逃げていいんだよ、本当に。仕事で人は死なない。死なせるのは、追い詰められた感情の連鎖だと思う。その連鎖を断ち切るのは勇気がいる、3階から飛び降りるのと同じくらい勇気がいる。でも、飛び降りるよりも絶対にいい。
MIUやアンナチュラルとのコラボの豪華さが目を引くけれど、それ自体はおまけでしかない、とすら思える。緻密で繊細な脚本と、それを表現しきった俳優陣が、本当に素晴らしいと思う映画だった。
評判通りの面白さ
ちゃんとラストマイルの2人が主役だった
脚本より面白くなっていない。
テレビ局の制作というトラウマを踊るシリーズに植え付けられて以降期待しなくなって何年も立ちましたが、『ちゃんと楽しいじゃないか!』と嬉しくなる本作。
ドラマ全話観て、バキバキにパンプアップした状態で見に行きましたが、ドラマのキャラが出てくるっていうファンサービスよりも、ドラマのテーマとの共通項を感じさせる部分に脚本の上手さを覚えた。
特に、満島ひかりがスカした若者も羨む『バイタリティ』で労働環境改善に乗り出す一方で、自殺した人が誰か判明した石原さとみの『そんな根性いらない』からの、再び満島が負け確ディーンへ『何もしなかったからだよ』っと捨て台詞の流れ。
復讐を通して描く、1歩勇気をもって踏み出すこと、そのベクトルの重要性はアンナチュラルにも通づる所ですごい上手い。
君塚脚本と違い、メッセージや、社会問題意識についても外してなくて不快感もなかった。
絵的にもずっと豪華で観てられるし、ショウヘイ親子のシーンは全部良かった。
ただ、実際に撮影されたものが脚本を超えてるシーンがほとんどなかったように思うのはすごく残念。
数多ある凡作の『説明台詞』ではないけども台詞で説明していることが続きすぎて、映画的な魅力やエモーションがほしかった。
あと、ギャグパートは全部うまくいってなかった。(ロジスティックス、きゅるん、例え下手ですね、それまだ動きますか?等、、、)笑いの取り方はどうしてもテレビ的なものがスクリーンに入ると気になってしまう。
気になる点もあるが、気になる点どころか気に入る点を見つけるのが大変で、映画終わるころにはぶちギレてたこれまでのテレビ制作と比したら大成功。大拍手。
この成功を薄いレベルで理解したおじさんが『うちもユニバースだ』と安易な企画を乱立しないことを祈る。
大倉孝二演じる毛利刑事を見続けてきて良かった!
『アンナチュラル』『MIU404』だけでなく近年の野木亜紀子作品はほぼ鑑賞済みなだけに期待大だった。
実際に観てみれば、製作陣がアベンジャーズと呼ぶ豪華出演陣にはたしかに興奮したし終盤の二転三転する展開には唸った。
ドラマ履修済みでなくても面白い、且つ身近なショッピングサイトのサービス周辺情報が痛いほど伝わってくる社会派作品だった。
ドラマファンとしては毛利刑事(大倉孝二)と刈谷刑事(酒匂芳)の高身長バディがメインの捜査チームだったことが安心して観られて良かった(いや、どのチーム・シーンも安心して観ていたけど(笑))
そういえばご両人とも『検察側の罪人』でヒドイ奴&ヒドイ目に遭うお2人だったな(笑)
火野正平と宇野祥平の親子コンビで幕を開けるのが渋くて良かった。
主演2人も含めいくつもの魅力的なコンビ・バディが物語を推進する映画だった。大満足。
ちなみに個人的な「シェアードユニバース的・大倉孝二演じる毛利刑事のハイライト」は……
・アンナチュラル第6話『友達じゃない』でミコトと東海林を見逃してあげる毛利。
・MIU404第3話『分岐点』で前田旺志郎演じる勝俣に刑事の矜持をみせる毛利。
・MIU404第9話『或る一人の死』で相棒の向島刑事とともに4機捜に「武蔵野うどん」をふるまう毛利。
……などがあるのでぜひ注目して観てほしい(笑)
近年稀に見る名作
楽に観られる娯楽作品
満島ひかりがジャンヌダルクに見えました
フィクションと実在どちらにも寄り過ぎない魅力的なキャラクターたち
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