「もやっと」ラストマイル emmeさんの映画レビュー(感想・評価)
もやっと
ドラマ「アンナチュラル」「MIU404」を観ていたので、今回新しいストーリーでそのドラマ二作の世界線と繋がるというのは楽しみ以外のなにものでもない。
この予告で、脚本家 野田亜紀子さんがとんでもないものを生むのだろうと期待していただけに、ストーリーはまずまず。物足りなさを感じた。
既出の通り、ドラマ「MIU404」を見ていた私としては、とある回で機捜の世話になった高校生(役)の前田前田の弟くんが、今作では大人になりしっかりMIUの一員になっていたのはファン的に熱い。かなり見どころ。
ただ、星野源さんや綾野剛さんらお馴染みの面々が揃う中で、水上恒司(元・岡田健史)さんがいなかったことは残念に思った。
「アンナチュラル」チームは時の経過を感じさせない、いつまでも若い面々と、セット、空気感が見事だった。
ドラマでは死体解剖のUDIチームラボで三澄ミコト(石原さとみさん)の後輩役だった窪田正孝さんが、今回はUDIではなく病院勤めをしていたところに、「アンナチュラル」のラストってどんなだったっけ?と気になり始めた。
こういったところで、ドラマを見ていた人には再び見たくなる機会を与え、まだドラマを見ていない人にも過去作をPRすることができる。
野田劇場もなかなか上手い。
野田亜紀子さんの作品は以前から、Dの新作ドラマにAのドラマのエッセンスを感じる。とか、これはAにも出ていたキッチンカーじゃないか??とか、
なにか過去の作品と割り切らず、ひとつの世界に共存する人たちの輪ひとつずつにフォーカスして、その人間関係や仕事を取材するような作り方をされているのが興味深い。
ファンにしかわからないが、その「繋がり」にとてもリアリティを感じて、親近感すら湧く。
現実離れしていないと感じる魅力のひとつなのだと思う。
私たちの生活の中でも、登場人物とすれ違っている気がするような、そんなリアリティがある。
野田亜紀子さんの作品は好きだ。
が、話は戻して、今作は割と序盤から匂わせていた山﨑佑にもっと焦点をあててもよかったと思う。
きっと中村倫也さんほどの俳優だから、画が持っていた気すらするエピソードの無さはどうだろう。
彼は最後まで救われなかった。
働き過ぎて鬱になったのか、何なのか、彼の人物像も植物状態になってしまった理由も、オーディエンス任せ。
そこがとにかくもやっとする。
彼の彼女にも深いストーリーが間違いなくある。
きっとこれがドラマなら、もっと深掘りできたのかなと思った。
今作は英語が堪能なディーン・フジオカさんを起用したことで、海外色も無理なく感じられたことはよかったと思う。
宇野祥平さんは今作で唯一、二度爆発に遭って煙にまかれている。これは不憫すぎる役ではないか……という点も無視できない。😅
今作の公開後に発表された2025年新春スペシャルドラマ「スロウトレイン」では、ドラマの主軸となるとても良いセリフを放つ男性を演じられているので、ぜひそちらを見てほしい。
野田さんは決して宇野祥平さんを煙にまかせる為にキャスティングしたのでは無い。