「構造的な圧力に抗うには、怒り、連帯して戦うこと」ラストマイル jinminさんの映画レビュー(感想・評価)
構造的な圧力に抗うには、怒り、連帯して戦うこと
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Amazonを模した通販サイトの配達物に仕掛けられた爆弾テロ。
犯人は誰かという謎が物語を引っ張るが、犯罪の全貌は第二幕の最後で明らかになる。
物語全般で語られているのは、圧倒的な権力勾配のもとに押し付けられるハラスメントや貧困にいかに抗うかということ。
会社からのハラスメントや圧力を孤独に抱え込まざるを得ず、自殺や犯罪に陥ってしまった山崎や筧と、強迫的に押し付けられた苦難に怒りを表明し団結して戦う羊急便の面々。三年前は唐沢に連帯できず、犯罪へと追いやってしまった舟渡が、今回は羊急便に連帯して、わずかながらも前向きな勝利を勝ち取る。
この対比と主人公の成長を通して、きちんと怒ること、連帯し団結して戦うことの重要さが示されているのがよかった。
佐野父が構造的に強いられた貧困を自分の勤勉の問題として引き受けてしまっているという描写も、通俗道徳が骨の髄まで染みついた日本の労働環境を端的に表していて鋭い。
ただハラスメントや強いられる貧困の描写が記号的なせいで、説得力が薄れているのではないだろうか。
この映画が参照したであろうケン・ローチ『家族を想うとき』の構造的に強いられる貧困にズブズブとはまり込んでしまうやりきれなさや、佐野息子を演じた宇野祥平から連想される白石晃士作品のハラスメント描写の重苦しい生々しさなどの胸糞悪さが足りなかったように思う。
同ユニバースのドラマの面々のカメオ出演は、彼らの漫画的な飄々とした働きぶりが、リアリティラインをおかしくさせていてノイジーだった。
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