「日々頑張って働く社会人への讃歌。」ラストマイル ゆめさんの映画レビュー(感想・評価)
日々頑張って働く社会人への讃歌。
自分の仕事に誇りをもって働く社会人(わたしたち)への讃歌だった…。
そう思える作品だった。
たとえ褒められなくても、社会や周囲がそれを当たり前のように扱ったとしても、数字としては見えなくても、そんな人たちの想いや行動は社会を少し良くしたり、どこかで誰かを救ったりしている。
私たちはそう信じる。
作り手のそんな眼差しというかメッセージのようなものを感じてボロボロ泣いてしまった…。
少しでも良くしたいと仕事を頑張ってるつもりだけど、日々忙しさに追われ、でも職場の誰に労われるでもなく疲れてしまっていた私にはそこがめちゃくちゃ刺さった。
特に好きなシーンが、宇野祥平さん演じる佐野亘が最後の1個の爆弾を洗濯機に入れるシーン。
この洗濯機は彼が以前勤めていた電機会社で作ったものだ。
(品質は良かったけど同業他社に勝てずそのメーカーはもう無くなってしまっている。)
その前に佐野が作中で誇らしげに今は無くなってしまった自分のメーカーの商品を話すシーンが印象的だったんだけど、それを最後に回収してくれるのか…!と、胸がいっぱいになってしまった。
佐野がかつて自分が関わった製品に自信と信頼がなければ出来なかった判断。
会社経営はうまくいかなかったけど、誇りと自信を持って作ったものがあの瞬間、たくさんの人の命を救ったこと。
報われなかった過去の自分の仕事や、自分自身が報われた瞬間。
そこにたまらなく泣けた。
なんという希望のシーンだろう…。
あと特に良かったなと思ったのが、ドラマ「MIU404」3話、バシリカ高校の生徒だった男の子が機捜の一員として働いてたり、「アンナチュラル」7話、「殺人遊戯」の白井くんがバイク便で働いてたこと(白井くんはわたしは気づけず一緒に観に行った夫の指摘で判明)。
進む先を軌道修正してくれる大人に会わなければ道を踏み外していた可能性のある高校生だった2人。
本作を観て「ああ、戻ってこれたんだ…」という事実に胸がいっぱいになったし、アンナチュラルもMIUの世界があの後も続いているんだな、ということにたまらなく嬉しくなった。
もちろん、ミコトや中堂さん、伊吹や志摩、桔梗さん、陣馬さん、久部くん、神倉さん、東海林さん、坂本さん、毛利さん、田島さんといったレギュラーキャストにまた会えたのも嬉しかったんだけど、アンナチュラルもMIUもゲスト登場人物がみんなめちゃくちゃ良かったので、彼らのその後が見れたのがとても嬉しかったな。
脚本の野木さんが作る作品は、社会の豊かさ、便利さのしわ寄せを最初に食らうような、末端の人や弱者とされてる人に眼差しを向けて掬い上げるという部分がずっと一貫してるけど、本作もそこは同じだった。
本作で取り上げられてるのは2030年問題も危惧されてる物流の現場の話。(テーマ設定がうまい…!)
本作も印象的なのはDAYLY FAST(明らかにAmaz●nモチーフ)ももちろんなんだけど、羊急便(こっちはヤ●ト運輸)の現場や佐野親子のような下請けの運送会社の人たちだ。
わたし自身、早ければ翌日に頼んだものが届くオンラインショップや社会システムの恩恵を過分に受けている。
でも、安い製品や早くて便利なサービスは、当たり前だけど、それを支えるために身を削りながら働いている現場の人たちがいることで成り立っている。
そこに目を向けなければいけないというのを今回改めて感じさせられた。他人事ではないのだと。
(そしてそれは制作側の狙いの一つなんだろう。)
これも個人的にめちゃくちゃ刺さったアンナチュラル4話「誰がために働く」で扱ったテーマをさらに発展させた作品だったと思う。
とても良い作品だった。
みかずき様
「すべてはお客様のために」、
一見良い言葉のようで、雇用側はやりがい搾取にも使える便利な言葉ですね。私も印象的でした。
企業ももちろんですし、私たち消費者も生活を支えてくれている様々な労働者にもっと目を向けなきゃですね。自戒です。
はじめまして、みかずきです
同感です。
本作、後半に、巨大企業の理念である、”すべてはお客様のために”ということばが度々出てきます。過酷な労働条件、低賃金であっても、どんな状況になっても、懸命にその企業理念を支える自社、配送会社、下請け会社の従業員達の姿には胸が熱くなりました。
企業は人なりです。
企業側は、もっと従業員を大切にすべきだと感じました。
我々は、何でも安易に宅配に依存しています。自戒しなければですね。
ー以上ー