「巨大ショッピングサイトの運営はエッセンシャルワーク」ラストマイル 落ち穂さんの映画レビュー(感想・評価)
巨大ショッピングサイトの運営はエッセンシャルワーク
話の筋としては、Amaz○nの日本法人がヤ○ト運輸を虐め、Am○zonの日本法人は米国本社に虐められていたという話です。
市川の道路が封鎖されるあたりも、塩浜の倉庫で間違いないと思いますし、上映中もずっと頭の中はその2社に置き換わってしか観れませんでした。
さて、本筋。
最初の爆発の被害者の指に指輪が見えた気がして既婚者なのかなと思いましたが、ここが後々ポイントになるとは思いませんでした。
とは言え、新センター長が犯人みたいな流れになった時には、それまでの彼女の立ち居振る舞いがテロ行為と全く噛み合わないので、即違うとも思いました。
結局、犯人らしき人物はたった1人。
で、その犯人はじゃあ今どこなのか?
ここがサスペンス的には肝なのかもしれませんが、そんなの警察が捜せばいいんじゃん?あまり興味ないなぁ…と、既にそのあたりまで話が進んだ時には、そんな気分になっていました。
というのも、最初は確かにサスペンス気分で観ていましたが、早い段階で流通業・運送業の大変さに目が移ってしまい、この事態をどう収拾させるのか?だけに気持ちが入ってしまっていましたので、テロ前に犯人が自殺していたのは、トリックとしては面白いけどまぁあるだろうなぁ程度の関心度。
それよりも…
すべてはお客様のために。
サラリーマンなら嫌ほど体験する建て前と本音。
「会社の利益のため」と言う副センター長に対し「違う、お客様のため」と社是を言うセンター長。
全くもって苦い、苦々しいです。
本人は、米国本社からの示唆で犯人と繋がる情報を削除したり、本国の株式市場が開く時間を考慮してマイナス情報の発表のタイミングを決めたりと、全面的に会社の利益のためにしか動いていなかった上でのセリフ。
とは言え、使える物は何でも使えとばかりに警察官を検査用員としてでも、とにかく出荷を止めない姿勢は、鬼気迫るぐらいの凄みを感じました。あのくらいの押しの強さがないと外資で生き残れないのかなと、ちょっと引いたくらいです。
それと運送業者も、安い請負料金のため、常に人手不足と高齢化で厳しいところに、危険物混入の責任まで擦り付けられそうになるところも、一般的な会社でもよくありそうな力関係の話だなと心を痛めて観てしまいました。
ただ、この業界自身も、早く人海戦術に頼る仕組みから切り替えていく技術やインフラを整備しないと、この問題の根本的な解決には至らないわけなのですが。
それもこれも利益優先の行動というより、ここまでの巨大なショッピングサイトになると、他の様々なエッセンシャルワークとも密接に関わってしまっていて、最早止めることは許されない状況であるという事実。
自分としては、その部分がこの映画で一番身に染みたところでした。