「自分をつくるのは自分」インサイド・ヘッド2 SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
自分をつくるのは自分
1もすごく面白かったが、2もそれと同等かそれ以上に面白かった。
脳の機能を擬人化したものがここまでドラマチックに感動的にできるなんて、発明だと思う。
ありふれた一般人だからこそ共感性が高いという、何という逆転のアイデアか。
なぜ「思春期」になるとめんどくさい性格になるのか、無邪気なままではいられなくて、生き辛くなっていくのか、理由がよく分かる。
「シンパイ」は「未来に対する備えをさせる」動機になる感情で、大人になるために必要だけど、過剰になると暴走してライリーの行動をのっとってしまう。「シンパイ」の感情だけが取捨選択した記憶で形成された「セルフイメージ」は、「私はダメな人」というもので、特に日本人にはこういう人が多いと思う。
幼少期の発達過程においては、「私は良い人」というセルフイメージをもつことが何より大事で、これがなければ自分自身に対する尊厳を持つことができない。それは自分を大事にする源の感情でもあるし、自分自身への誇りにもなる。また、それがあるからこそ、他人ももっているであろう尊厳を大事にできる。
「ヨロコビ」たちは、この健全なセルフイメージを成長させるために存在する、と言っても良い。そのため、無数の体験の中から、そのセルフイメージの成長に必要な記憶を取捨選択している。
しかし成長して社会生活を送る中で、さまざまな人生の困難にぶつかり、無力感を味わい、客観的・相対的に自分自分を見つめられるようになってくると、単純に「私は良い人」と信じられなくなってくる。そしてセルフイメージを再構築せざるを得なくなってくる。この、一度自分を壊して再構築するという不安定な時期が思春期にあたる。
幼少期においては、「自分」というものは、「感情」たちによって受動的に作られていくものだったが、思春期以降においては、「自分」はどんな人間なのかは、「自分」がつくっていく。それは、単純に「良い人」「悪い人」では割り切れない複雑な自分像。でもそういう「いろいろな自分」はぜんぶ本当の自分で、その全部をまるごと自分自身だと肯定できること、それが本当の意味での人間の成長なのだと深く実感できるストーリーだった。
この映画はちゃんと脳科学や心理学に基づいて作られていると思うが、そういうことを全く知らなくても楽しく観れるのが良い。とくに印象に残っているシーンは、「シンパイ」が未来に起こる最悪な想像をたくさん書かせているところ。それが無数に頭に浮かんでしまい、ライリーは眠れなくなってしまう。
不安で仕方なくて眠れない夜には、自分の頭の中の「シンパイ」が暴走してるんだな、なんて思うと、少しは楽になるかも。
この世界観はほんとうによくできていて、いくらでも続編が作れそう。ライリーが恋愛とかしても面白そうだし、ライリーとはべつの人のインサイドヘッドでも面白そう。
「はたらく細胞」の漫画やアニメもヒットしてるし、これからのSFは擬人化系がくるかも…。