「喜びも悲しみも新たな感情もあって、自分らしく」インサイド・ヘッド2 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
喜びも悲しみも新たな感情もあって、自分らしく
オリジナリティー溢れるピクサー作品の中でも、ずば抜けた題材だったのが2015年の『インサイド・ヘッド』。
ある少女の頭の中。喜(ヨロコビ)、悲(カナシミ)、怒(イカリ)、嫌(ムカムカ)、怖(ビビリ)の5つの感情を擬人化。
少女を幸せにする為に日々奮闘。思わぬトラブル。
感情の変化やふと思い出す事など、頭の中ではこうなっていたのか…! それをユニークに。
独創的なアイデア負けせず、それら5つの感情あって。全ての感情、全ての記憶が大切。少女の成長をも描いていく。
エンタメ性は勿論、誰にも通じる深いテーマも浮かび上がらせ、ピクサーの手腕に改めて唸ったもんだ。前作レビューを見返したら、滅多に採点5を付けない私が5を付けていたではないか…!
そんな名作に、9年ぶりの続編。
それが凄い事になっている…!
それまでアニメ映画世界歴代1位だった『アナと雪の女王2』(約14億5370万ドル)超え。しかも日本やまだ幾つかの国や地域での公開を前にして。
先日日本でも公開スタート。意外にも初登場1位は飾れなかったものの(前作も日本では初登場4位だった)、前作と同じく口コミでヒットしていきそう。
アニメ映画世界歴代1位の記録を今も伸ばし続けている。
格好の宣伝材料として散々報じられ、周知の事だが、やはりトピックとして挙げておきたかった。
にしても、何故これほどの世界的メガヒットを…?
前作人気、作りの巧さ、クオリティーの高さもさることながら、本作もまた誰にも通じる“私たちの物語”だからであろう。
13歳になったライリー。
引っ越してきた当初はライリー自身も脳内も一騒動あったが、生活や学校にも慣れ、新しい友達も出来た。
ヨロコビたちのチームワークも完璧。
今回初めての脳内エリアとシステム。ライリーが誰かに優しくしたり、自分らしさを見せたりして出来た“思い出ボール”を脳内司令室の地下の泉へ。光輝く琴線のようなものが作られ、それが司令室で“自分らしさの花”となる。
様々な出来事、出会い、経験が人格を形成していく…とよく言うが、それをまたまたユニーク&イマジネーション豊かに視覚的に表現。この表現の仕方やアイデアは何処から来る…? 一度ピクサークリエイターたちの頭の中を見てみたいもんだ。
友達らと活躍したアイスホッケーの試合。
その試合を見ていたアイスホッケー名門高校のコーチの目に留り、アイスホッケーキャンプに誘われる。
ライリーも高校進学控える身。上手く行けばその高校に入学出来る。
順風満帆。ライリーもヨロコビたちもハッピー。
そんなある夜…
司令室に謎の警報が鳴り響く。原因は感情パネルの“思春期”。
キャンプ参加の大事な日。張り切るヨロコビたちの前に、突然の司令室工事。
工事によって、ヨロコビらこれまでの感情がより過敏に。ライリーがちょっとした事でイライラしたり、落ち込んだり。
さらに感情パネルに新しいスイッチが。と同時に現れたのは…
不安=シンパイ。
嫉妬=イイナー。
羞恥心=ハズカシ。
倦怠感=ダリィ。
“思春期”を迎えたライリーに新しく生まれた感情たちであった…!
子供から大人へ成長する際、誰もが経験する思春期。
映画でも題材になる事度々。経験した人なら誰もが知っている。より複雑な感情。
現状や将来に対して“シンパイ”になり、最悪の事態を想定。
お洒落や目新しいものへの欲求が強くなり、あれもこれも“イイナー”。
失敗やヘマをして、これまでの落ち込みより“ハズカシ”が前に出る。
色々な感情入り交じって、何だか“ダリィ”。ぐうたらスマホでもいじってよう。
ネガティブな感情ばかり。でも確かにそんな感情あったし、いや今もある。シンパイ、ハズカシ、ダリィなんて私の感情の要。
だからと言って決して悲観的だけじゃない。シンパイの機転でキャンプを無難にスタート。憧れの選手と仲良くなる。
まあ最初は新しい感情に戸惑うもの。カナシミだってそうだった。
そのカナシミも今は大事な感情の一つ。彼らだって。
だけど、今…!? こんな大事な時に…!?
シンパイのように悪い事は考えたくないけど、思春期と新しい感情の登場で、またまた脳内ピンチ…!
自分らしさこそライリーのヨロコビたち。
ホッケーで認められる事がライリーのこれからの幸せになるとシンパイたち。
意見が対立。よく自分の中で別感情がぶつかり合うのもこういう事が起きているからなのだろう。
シンパイが強行手段。ヨロコビらを司令室外へ放り出す。これからのライリーにあなたたちの感情は要らない。
シンパイは新しい“自分らしさの花”を作る。何よりキャンプでの成功やホッケーで認められる事を。
前の花は捨てられ、それによってライリーは一緒にキャンプに参加した友達と不仲に。友達が別の高校に行く事も要因に。
喜・悲・怒・嫌・怖の感情を失って。思いやりのある自分らしさも失って。
ライリーがライリーじゃなくなっていく。
ヨロコビたちは花を探し出して、司令室へ戻る為、脳内世界を大冒険…!
前作はヨロコビとカナシミの二人冒険だったが、今回は5人で。途中カナシミがある方法で先んじて司令室に戻るが。
道中のやり取りはより愉快になったが、楽しい冒険ではない。早く戻らないと…。
前回はイカリ・ムカムカ・ビビリが司令室に残り、悪戦苦闘するもライリーが塞ぎ込み、遂には家出を計画。
今回はシンパイ・イイナー・ハズカシ・ダリィが司令室でライリーをコントロールし、別人格のように。
皮肉を言う。見栄を張る。嘘を付く。コーチの部屋に忍び込んでファイルを盗み見しようとする。思いやりが無くなる…。
そんなの、ライリーじゃない。
それでもホッケーで認められれば。
チームプレーより単独プレイ。
目立とう、結果を出そうとして、裏目に出てしまう。
激しく落ち込む。激しく不安になる。司令室では、シンパイがパニック。
あらゆる感情が付かず、自分を見失い…。パニックや発作を起こした事がある人なら、この時のライリーの姿は心痛だろう。
落ち着いて。思い出して。本来の自分を。
司令室にヨロコビらが辿り着いた。
パニックのシンパイ。ヨロコビでも今のライリーの感情を抑制出来ない。
こんな時、どうすれば…?
落ち着いて。思い出して。本来の自分を。
一つ一つの自分の大切な感情を。新たな感情を。
また新しい自分らしさの花が作られる。
複雑な思春期を経験し、新たな自分を成長させていく…。
展開的には前作と似ているが、根本的には似て非なり。
成長するにつれ、いい事も悪い事も経験する。
自分らしさや成長とは、自分を見つめ直し、自分を見出だし、自分に帰する事なのだ。
ヨロコビもカナシミもイカリもムカムカもビビリも、新たなシンパイもイイナーもハズカシもダリィも、自分自身。愛おしく自分の中に。
新感情(キャラ)も個性的。
イマジネーション豊かな脳内世界はますます楽しい。
前作のビンボンのような秀でたサブキャラは今回不在だが、笑える新サブキャラはいたね。
保管庫の面々。皆にもあるよね、ああいう隠し事。(笑)
吹替で鑑賞。大竹しのぶは続投。竹内結子はご存知の通りだが(改めて合掌…)、違和感を感じさせない本職の小清水亜美はさすが。
圧巻だったのは多部未華子。本職レベルの声優っぷり。さすが多部ちゃん!
また一つ、素敵な“思い出ボール”の作品が。
少女期、思春期と来て、欲を言うならこれから先も見てみたい。
高校、大学。今度は“青春”というまた新たなスイッチ。
恋をして。“ドキドキ”なんて感情生まれたり。
社会人になって。“ツカレ”なんて感情生まれたり。
結婚して。“ボセイ”なんて感情生まれたり。
そして行く行くは、“ナツカシ”の出番もやってくる。
そう、これは私たちの物語。
本日、共感数100以上のレビュー数が10件に到達しました。
近大さん始め皆さんからの多くの共感を頂いた結果だと感謝します。
ありがとうございます。
今後とも宜しくお願いします。
ー以上ー
ナツカシの出番がやたら多くなってきた今日この頃…ライリーに重ねてフレッシュな感情達をたくさん思い出しながら鑑賞し、過去のさまざまな時間をあらためて大切に感じました。
感情達の織りなす世界、なんてすてきな表現なんだろう。
次作も楽しみですね。